2023-01-01から1年間の記事一覧

20231231

しかしここで詩的言語は、言語以前に戻るわけではない。意味の麻痺によって構成される詩的言語はまぎれもなく一つの言語である。文化的構築物であり、ミルクではない。「君の瞳は星」というとき、瞳と星は本当に混同されているわけではない。瞳と星は別のも…

20231230

人間は言語の世界に入る前には、言語の指し示すような部分的世界には生きていない。ミルクを飲めばお腹がいっぱいになって幸福になるし、排泄すると気持ちがよくなる。フロイトが指摘しているように、そのとき同時にミルクの入ってくる唇の刺激が快感の記憶…

20231229

文化は、「本能が壊れている」人間にとって、人間と世界を橋渡しする社会的生産物である。文化の中で最も大きな位置を占めているのは「言語」である。 人間は、他の動物と比べて他者に絶対に依存しており、その他者が現実的に不在になるとき、その不在(は同…

20231228

例えば、庭にきれいな桜が咲いていて、母親が「きれいな桜だね」「桜」とくり返し、子どもが指さされる目の前の映像に「桜」という音声を記憶において結合させていくとしよう。 次に子どもは、目の前をひらひら飛んでいく蝶を見て、花びらとの類似性から「桜…

20231227

フロイトにとって、恒常性とは、まず自我において考察された。すなわちフロイトは自我を、リビドーという心的エネルギーが恒常的に備給されている場所として考えた。 アメリカ自我心理学では、自我は理性の審級として捉えられがちである。フロイトの最初の議…

20231226

ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理」がこの「移行対象」であったことを、米マルクス主義批評家ジェイムソン、スロヴェニアのラカン派哲学者ジジェク、社会学者の上野俊哉が「消滅する媒介装置 vanishing mediator」という議論により指摘している。 …

20231225

ギデンズはさらに、基本的信頼から、人がアイデンティティや言語や世界を受容していく過程を、ウィニコットの「移行空間」論から記述している。 フロイトの議論は、糸巻き遊びの中から「いない」と「いた」が結合されていることはわかっても、それがいつどの…

20231224

ギデンズの再帰性の議論は、どこまでも再帰性の論理だけで社会と主体を組み立てようというものではなく、その核に「存在論的安心」という精神分析的概念を用いている。 ギデンズは、英精神分析家ウィニコットの概念を流用した、米精神分析家エリクソンの議論…

20231223

自我は、それ自身、離散的様相しかもたない現実に対し、フィクショナルな統合を行い、他者を通じて未来への投射を可能にする審級である。自我はこのように未来に対する期待をはらんだ想像的なものである。ナルシシズムの存在に見られるように、自己について…

20231222

人間の心的プロセスは、生物学的本能を大きく超えて、自我という自分を支える恒常的な心的装置を生み出した。それは、自殺も可能な生物学的現実を超える力や、現実にはないものを生み出す力をもつ。それが可能となったのは、現実から自律した言語を生み出し…

20231221

「マクドナルド化」の理論を提唱したリッツアは、最近では、脱領域化の完成としての「非実体化/無化」について論じている(邦訳『無のグローバル化——拡大する消費社会と「存在」の喪失』〈明石書店〉)。 「脱領域化」とは、先にギデンズの議論で示した「脱…

20231220

象徴的なものは、芸術に代表されるように、人の生の固有性を維持するものである。スティグレールは、象徴的なものの生産に参加できなくなると「個体化」の衰退が広まると述べる。そうなれば、象徴的なものは瓦解し、それは欲望の瓦解を引き起こす。欲望とは…

20231219

スティグレールは、マクドナルド的主体の問題を「象徴の貧困」の概念で記述する。 スティグレールによれば、「象徴の貧困」は、「シンボル(象徴)」の生産に参加できなくなったことに由来する「個体化の衰退」を意味する。スティグレールによれば、「シンボ…

20231218

再帰性が、コントロールを意識し、操作性を高めることであるならば、計算可能性、予測性、制御を高めることが目指される。生産性のための効率性も望まれるだろう。しかし、計算や予測、制御には、不確実な点が存在する。その不確実性に対し、計算可能性を超…

20231217

このように「再帰性」は、現代社会を考えていく上でのキーワードであるが、一方、「再帰性」だけで社会を設計し、考えようとすると、困難が生じる。 なぜなら、人は、生まれたときから再帰的主体なわけではなく(もちろん生物としてのフィードバック回路や学…

20231216

ギデンズは、再帰性について「活動条件についての情報を、その活動が何の活動であるかを常に検討し直し、評価し直すための手段として活用すること」と述べている。 仏ロベール社の『社会学辞典』では、仏社会学者アンサールが、再帰性を「主体が、自分自身の…

20231215

他者が他者固有の経験の中で拾いとってきたシニフィアン(音声、映像、言葉などの記号)を、自己の経験と照らし合わせて受容しうる情況で、自らが変わり、自らや世界を創造しうる喜びを感じられるコミニケーションの可能性を、人間のもつ特殊な条件(他者や…

20231214

ドゥルーズが批判するように、制度や中間集団、文化が消失し、さまざまな事態を瞬時のコミュニケーションによって処理する「コミュニケーション社会」では、人々の交通を妨げている物理的・社会的障壁が消失して人々がダイレクトにつながるのではなく、人と…

20231213

人間は、何のために生きるのかという意味や目的を生得的にもつわけではない。他の動物のように種を増やすなどの本能だけに閉じているわけでもない。ゆえに、その存在が規範や倫理、制度などで社会的に規定されなくなれば、それは一人一人の哲学的問題(存在…

20231212

仏哲学者ドゥルーズは、社会が「規律社会(均一な労働者や主体を、国家が責任をもって育成する社会)」から「管理社会(主体の育成を放棄し、少数のエリートのみを必要とする。その上で『多数となるコンマ以下の主体』を、テクノロジーを駆使した警察権力に…

20231211

The fire had gone red. Now it fell in with a sharp sound and the room was colder. Cold crept up his arms. The room was huge, immense, glittering. It filled his whole world. There was the great blind bed, with his coat flung across it like …

20231210

It was dark in the hall. It had been a rule for years never to disturb father in the morning, whatever happened. And now they were going to open the door without knocking even.... Constantia’s eyes were enormous at the idea; Josephine felt…

20231209

And suddenly, for one awful moment, she nearly giggled. Not, of course, that she felt in the least like giggling. It must have been habit. (Katherine Mansfield, The Daughters of the Late Colonel) 11時前起床。ずいぶんぐっすり寝た。きのう…

20231208

He stepped out of the shadow. “Is that you, Laura?” “Yes.” “Mother was getting anxious. Was it all right?” “Yes, quite. Oh, Laurie!” She took his arm, she pressed up against him. “I say, you’re not crying, are you?” asked her brother. Laur…

20231207

作者忙殺につき、本日掲載予定でした「ピエール(…)のおどりゃクソ森」はお休みさせていただきます。ご了承ください。 8時から二年生の日語会話(三)。「(…)」第三回目。(…)くん、(…)さん、(…)さん、(…)さん、(…)さん、(…)さん、(…)さんの…

20231206

“Take it yourself, darling,” said she. “Run down just as you are. No, wait, take the arum lilies too. People of that class are so impressed by arum lilies.” (Katherine Mansfield, The Garden Party) 9時ごろ起床。(…)くんから先生がきのう言…

20231205

“Hans, move these tables into the smoking-room, and bring a sweeper to take these marks off the carpet and—one moment, Hans—” Jose loved giving orders to the servants, and they loved obeying her. She always made them feel they were taking …

20231204

Why does one feel so different at night? Why is it so exciting to be awake when everybody else is asleep? Late–it is very late! And yet every moment you feel more and more wakeful, as though you were slowly, almost with every breath, wakin…

20231203

"Does everybody have to die?" asked Kezia. "Everybody!" "Me?" Kezia sounded fearfully incredulous. "Some day, my darling." "But, grandma." Kezia waved her left leg and waggled the toes. They felt sandy. "What if I just won't?" The old woma…

20231202

The water was quite warm. It was that marvellous transparent blue, flecked with silver, but the sand at the bottom looked gold; when you kicked with your toes there rose a little puff of gold-dust. Now the waves just reached her breast. Be…