20140510

 彼は燐寸の箱を袂から取り出そうとした。腕組みしている手をそのまま、右の手を左の袂へ、左の手を右の袂へ突込んだ。燐寸はあった。手では摑んでいた。しかしどちらの手で摑んでいるのか、そしてそれをどう取出すのか分らなかった。
梶井基次郎「過古」)



 6時20分起床。歯を磨きストレッチをし、パンの耳2枚とコーヒーの朝食をとったのち、昨日付けのブログを投稿して家を出た。移動中はとてもひさしぶりにDuoをやった。案の定すっぽりと抜け落ちている感じだった。短期間で詰め込んだ知識はやはりもろい。
 8時より歓びなき労働(このフレーズを書きつけるのすごくひさしぶりな気がする)。客足はそれほどでもなかったのだけれど、注文のたぐいが多くてたいそう疲れた。朝っぱらからものすごい調子こいたババアが度を越した要求をしてみせるので丁重にお断りしたところ、「あんた、新人?」とものすごい形相でこちらをにらみつけながらなじってみせるという、いまどきベッタベタの昼ドラでもこんないやみ口にしてみせるババアなんていないだろうというアレを地でいく態度をとられたので、カチンとくるよりもむしろ羞恥をおぼえた。つまり、こんなベッタベタな台詞を現実に、それも真顔で、なんらの疑念もおぼえずに口にすることができてしまえるそのあまりの程度の低さに、当の本人ではなく第三者であるはずのこちらが恥ずかしくなってしまったわけだ。昼食をとるまでずっと眠気がとれなくて何度もうとうとしかけたのだけれど、常ならばますますきわまりをみせるはずのそれが今日にかぎってはどういうわけか食後にあってむしろ解消されるところがあって、どうしてだろうと思ったところで昨夜引っかけたからだという事実に思いいたった。
 蕁麻疹のスーパーで半額品のローストチキンとスパ王を購入し、帰宅後、懸垂と腹筋をしたのちにまとめて喰らった。そうしてシャワーを浴びて部屋にもどりストレッチをし、『アレゴリーの織物』の抜き書きの残りを片付けてからブログを書いた。Pからメールがあって渡米は18日、Skype登録したからよろしくとあったのでこちらのアカウントも報せた。イエス、たしかに時間は流れている。いろいろどんどん転じていく。ひるがって、さて、この先どうする? 百年でも二百年でもまだまだ長らえたいという欲望のたぎる毎日のなかでときおり、もう充分に生きただろうとこの生に打つべき句点の位置を見定めようと無表情に目を細めているじぶんがたしかにいる。燃えつきかけてる? あの程度で? みっともない話だ! 『族長の秋』片手に布団にもぐりこみ1時消灯。