《父の名》はこのように超越的なものです。〈法〉をもたらすのはなんらかの超越的存在でなければなりません。自分と同じレベルの他者が〈法〉を作っても、それはせいぜい「約束」にしかなりません。しかし〈法〉は約束としてではなく、命令として機能するものです。狭義の法律について考えてみても、それを制定できるのは国家のように国民に対して超越的なレベルにある存在だけです。地位や権力の差があってこそ〈法〉は機能するのです。
(片岡一竹『ゼロから始めるジャック・ラカン』より「第五章 〈父〉はなぜ死んでいなければならないのか」 204-205)
- 10月だぜ!
- 9時起床。アラームよりもはやく目が覚めてしまった。今日もすずしいのでキッチンと阳台の窓をあけた。おもてはずいぶん静か。国慶節なのでキャンパスに残っている学生が少ないのだ。モーメンツも「私は祖国を愛している」「中国誕生日おめでとう」みたいな愛国投稿一色。
- きのうづけの記事の続きを書いて投稿し、ウェブ各所を巡回し、1年前と10年前の記事を読み返す。「実弾(仮)」第六稿はこの一ヶ月で552/1156枚→885/1166枚の進捗。総合枚数がまた10枚も増えていることにびっくりした。連休明けから新入生の授業もはじまってバタバタすることになるわけだが、それでも今月中に第六稿を終わらせることはできるかもしれない。
- 11時前になったところで第五食堂へ。二階は1日から3日まで休業とある。一階はオープンしていたのでいつもの鴨肉を打包。寮にもどると、敷地内で管理人のGの息子夫婦とその子らが遊んでいたので、旦那さん——たぶんこちらとさほど年齢が変わらない、片言の日本語をなぜか知っている男性——に、国庆快乐! とあいさつ。それは朝ごはんなのかと、こちらの手にさげているメシを指して中国語でいうので、朝ごはんと昼ごはん一緒だよと応じた。
- 12時半から17時まで作文。「実弾(仮)」第六稿。シーン43、二度通した。かなりよくなった。まだまだ加筆できることにびっくり。むやみやたらな加筆ではなく、確実によくなったと胸を張って言うことのできる、そういう加筆修正を重ねることができているのがうれしい。これはいい小説だ。しかも今後もっとよくなる。第十稿までねばってみよう。
- 作業中、三年生のR.Hさんに微信。新入生の名簿を送ってもらう。R.Hさんは多くの学生と同様、地元((…))に帰省しているらしく、のちほどモーメンツに友人らしい女性とふたりで、あれはなんというのか、中国の学生らがしょっちゅう投稿している手振りだけのダンスの動画を投稿していたのだが、それに対してC.Rくんが、あなたはモーメンツに動画を投稿するのに自分には返信してくれないのか的なコメントを送っていて、これにはちょっとびっくりした。K.Kさんが言うように、このふたりは本当に「曖昧な関係」なのかもしれないと、はじめてそう思った。
- Jから電話があった。(…)学院に車で行ってみたのだが20分ほどかかった、もう一度行ってみようと思うのだがよかったらいっしょにどうだみたいな話だったと思うのだが、正直あまりうまくききとれなかった。こちらはいずれにせよバスでむかう予定であるので、車でルートを確認する必要はない。
- 夕飯は第四食堂。三人行は営業していなかったので別の店で打包。帰路、「先生!」と男子学生から呼びかけられた。(…)院三年生のR.Sくんだった。この子はたしか日本語はほとんどできなかったはずなので、国慶節であるのにふるさとに帰らないのかと中国語でたずねると、大学に残るという返事。どうしてとたずねると、遠いからというのだが、彼の出身は省内だったように記憶している。交通の便が悪い農村地帯なのかもしれない。
- 夕飯を食しながら『眠る男』(小栗康平)を少しだけ観る。PRIMALの1stアルバムのタイトルは『眠る男』であるけれども、もしかしてこれが元ネタだったりするのか。
- 30分ほど仮眠をとる。微信から通知がとどいている。関連法律の変更により、不足している個人情報をすべて埋めないかぎり、支払い機能を制約する、と。もとめられるがまま、住所、職業、電話番号を記入。reviewに3日かかるとあったので、ということはこれから3日間支払い機能なしで過ごさなきゃいけないということ? マジで? 無理でしょ! と思ったが、たぶん最長3日ということだったのだろう、すぐに認証済みの通知がとどいた。
- シャワーを浴びたのち、新入生の名前の日本語読みを確認。全40人の名前は以下のとおり。
(…)
- はじめて見る名字は、(…)の翦(せん)、(…)の銭(せん)、(…)の胥(しょ)、(…)の蘭(らん)、(…)の庄(そう)の五つ。とはいえ、銭については銭鍾書という偉大な作家がいるのだった。
- 連休明けからはじまる新入生の授業にそなえてビリビリ動画にあがっていた五十音の発音動画をダウンロードした。教卓のコンピューターで直接ビリビリにアクセスして再生すればいいのだが、動画がもしかしたらなんらかの事情で今後消去される可能性もなくはないので、保険も兼ねてローカルに保存しておいた格好。鼻濁音と「ん」については端折る。これらは学生を無駄に混乱させるだけだ。