20131230

 あの娘はキュート
 死ぬほどキュート
 死ぬまでキュート
 死んでもキュート
 墓場でキュート
 焼き場でキュート
 白くてキュート
 光ってキュート


 OH! ユー・ソー・キュート
 踊る機械 愛の機械
 OH! ユー・ソー・キュート
 アメリカ生まれのアンドロイド
 心の冷たいセクサロイド
中島らも『バンド・オブ・ザ・ナイト』)



10時半起床。パンの耳2枚とコーヒー。洗濯。17時まで「A」推敲。スーパーにて買い物。のち銀行にて5万円おろす。ついでに郵便局でも残高チェック。まだまだやれる。夏の荒稼ぎがおおきかった。炊事をする気力がないことに気付いたので、別のスーパーにて総菜品の弁当を購入し、ついでにコンビニでネット料金を支払って帰宅。弁当と冷や奴ともずくを一瞬でたいらげたのち入浴。のち推敲。最後の難所に突破口の見えたところで睡眠剤導入。頭を洗濯して翌朝に賭ける。


決め手は、予言者の喉元からたくましく発せられたひとことであった。おおかたの予想に反し、かつて大佐によっておはらい箱にされた館つきの予言者は在野で生きのびていたのだった。予言者はここでもまた、すべては亜人のまねいた災いである、といわくつきのお告げをくりかえしたが、今度ばかりは状況がちがった。乱立した解釈のなかにあって人心を買うのは、もつれあった因果の糸を──ときには因果そのものを解体することも辞さぬ構えで──巧みに解きほぐし方向づけてみせる繊細で創造的な手つきなどではなく、むしろ一刀のもとに断ち落としたものらの先端を無理やりよじりあわせてみせる無骨で暴力的な手管の突拍子のなさ、根拠のなさ、はばかりのなさのほうであった。
 大佐が倒れてひと月も経たぬうちに亜人は館の地下牢に幽閉されることになった。亜人に課せられたそのような処分が大佐に知らされることはしかしなかった。左肩の傷口を中心にまばらに芽吹きはじめた短く硬い黒毛は、いまや地肌をのぞかせぬほど密に艶めき生いしげり、大佐の半身を野生の漆黒でなみなみと覆いつくしていた──そうした異形を前にして、事の推移を把握してみせるにたるだけの知性が残されているなどと考えるものがいったいどこにいるというのだろう? 館に運びこまれた当初、大佐の体は微熱に鈍く火照り、いくらか膨張しているように見えた。傷口はじきにふさがったものの、熱はいっこうにさがらず、回復する傷と拡大する発熱との奇妙な経過のなかにあって、じわじわと、それでいてあますところなく進展していく巨躯の膨張だけがしたたかにゆるぎなかった。傷口の消滅によって逃げ場を失った熱が皮膚の内側に滞留し、かえって盛んに活動しているのではないだろうか? 医師らによって感染症の可能性が否定されると、未知の毒素の見極めに呪術師らが手に手に薬草をもって駆けつけたが、功を奏すことはなかった。


決め手は、予言者の喉元からたくましく発せられたひとことであった。おおかたの予想に反し、かつて大佐によっておはらい箱にされた館つきの予言者は在野で生きのびていたのだった。予言者はここでもまた、すべては亜人のまねいた災いである、といわくつきのお告げをくりかえしたが、今度ばかりは状況がちがった。乱立した解釈のなかにあって人心を買うのは、もつれあった因果の糸を──ときには因果そのものを解体することも辞さぬ構えで──巧みに解きほぐし方向づけてみせる繊細で創造的な手つきなどではなく、むしろ一刀のもとに断ち落としたものらの先端を無理やりよじりあわせてみせる無骨で暴力的な手管の突拍子のなさ、根拠のなさ、はばかりのなさのほうであった。
 大佐が倒れてひと月も経たぬうちに亜人は館の地下牢に幽閉されることになった。
 亜人に課せられたそのような処分を大佐が知ることはしかしなかった。左肩の傷口を中心にまばらに芽吹きはじめた短く硬い黒毛は、いまや地肌をのぞかせぬほど密に艶めき生いしげり、大佐の半身を野生の漆黒でなみなみと覆いつくしていた──そうした異形を目の前にしてなお、事の推移をいちいち報告してみせる必要があるなどと考えるもののほうが稀だったのだ。館に運びこまれた当初、大佐の体は微熱に鈍く火照り、いくらか膨張しているように見えた。傷口はじきにふさがったものの、熱はいっこうにさがらず、回復する傷口と拡大する発熱との奇妙な経過のなかでじわじわと、それでいてあますところなく進展していく巨躯の膨張だけがしたたかにゆるぎなかった。傷口の消滅によって逃げ場を失った熱が皮膚の内側に滞留し、かえって盛んに活動しているのではないだろうか? 医師らによって感染症の可能性が否定されると、未知の毒素の見極めに呪術師らが手に手に薬草をもって駆けつけたが、功を奏すことはなかった。