2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

20240131

(…)その一方で、御田寺さんは「かわいそうな弱者vs.かわいそうでない弱者」という対立が不可避であるように煽っている。しかし、それは間違いだとぼくは思う。 たとえば、こんな感じで描かれている。「すべての構造はやがて「強者vs.弱者」や「富裕層vs.貧…

20240130

敵/味方という二項対立の世界観を作るポピュリズムは、いかに敵が知的にも道徳的にもひどいやつなのか、という印象操作をおこなっている。ぼくはあまり好きではないが、むかし本多秋五という文芸批評家がいた。そのひとの有名な言葉に「批評家よ、戦後文学…

20240129

最近、「勇気づけられる」という感想をよく見かけるようになった。小説や映画の売り文句としてもよく使われる。この言葉を目にするたびに、どっちの「勇気づけられる」なのか、と思ってしまう。自分と同じような考えと出会って、自分の「常識」を再確認して…

20240128

ぼくは町内会の人に疑問を感じたからといって、「あんたらは良かれと思っているんでしょうが、保守的やし家父長制やし最悪です」といきなり直球で言うと、関係が壊れてしまう。聞く耳さえ持ってくれないだろう。これからも関係を維持しつつ、変えていこうと…

20240127

日本人=集団主義、アメリカ人=個人主義と言われる。だが、その両者にちがいはないという研究がある。「アッシュの同調実験」という心理学の古典的な実験がある。被験者は二枚のパネルを見せられる。左のパネルには一本の線。右のパネルには長さの異なる三…

20240126

瀧本さんによれば、資本主義には「自分の少数意見が将来、多数意見になれば報酬を得られる」という仕組みがある。そのために未来の多数派が支持する「逆説的な真実」をいち早く発見すること。これが投資家=逆張り的な生き方には重要となる。そのためには普…

20240125

ペイパルの創業者であり投資家として知られる、ピーター・ティール氏も投資家=逆張り的な生き方をすすめている。ティール氏は社員の採用面接で「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」と聞くそうだ。多くの人が信じる「常識」の裏に隠さ…

20240124

「うん。銀座のクラブで働いてたことあるから、その手の話にはね。うちの地元なんかも、一帯で応援してる政治家がいたりするし。その先生が引退したあと、誰に継いでもらうかで揉めてるなんて話も、聞いたことある。ずっと秘書やってた人が自分が後継者にな…

20240123

東京からはるか遠く離れた場所で、小さな田舎町しか知らずに生きている自分の家族は、フランス料理を上手に食べられるわけもなく、初対面の人と当たり障りのない上品な会話ができるわけでもなく、財界人や政治家がガハハと幅を利かせる場に萎縮しきっていた…

20240122

「世の中にはね、女同士を分断する価値観みたいなものが、あまりにも普通にまかり通ってて、しかも実は、誰よりも女の子自身が、そういう考え方に染まっちゃってるの。だから女の敵は女だって、みんな訳知り顔で言ったりするんだよ。若い女の子とおばさんは…

20240121

「女同士の義理?」 美紀はその聞き慣れない言葉の並びに、不思議そうな顔を見せた。 逸子はすっかり美紀に気を許し、この話がしたかったんだとばかりに身を乗り出して説明をはじめる。 「近松門左衛門の浄瑠璃に、そういう言葉が出てくるんです。文楽とかで…

20240120

女性は外見をどう作り込んでいるかで、いろんなことがわかる。趣味嗜好も、パーソナリティも、おおよその金銭事情も、願望も、そのすべてが外見から発信される。 (山内マリコ『あのこは貴族』) 10時過ぎに起きて階下に移動した。(…)家は全員起きていた。…

20240119

正月ということもあって街に人手はあったが、歩道を歩く人より車のほうが多いのは相変わらずだ。なにしろ道を歩いているだけで、知らずに目立っている。信号を渡るときは車に乗る人が、高みの見物よろしく通行人を眺めている視線を感じた。 (山内マリコ『あ…

20240118

「美紀ちゃん、またすごい格好して来たなぁ」 大輔は開口一番、美紀の都会的なファッションに目を剥き、せせら笑った。 「別に普通ですけど」 美紀はムッとして眉間にしわを寄せながら反論するが、たしかにブランドもののバッグはやり過ぎかもしれないと思う…

20240117

嘘をついてまで東京に居残って一人で迎えた正月は、ひどく侘しかった。二回もピザを取ってHuluでたいして面白くない海外ドラマを一気に見て、ネットで靴を二足買った。こんなことなら帰ってもよかったなとかすかに思いつつ、それでも地元の悲しくなるほど活…

20240116

「うちはみんなオークラで挙げてるでしょう?」 「オークラ、年内に本館を建て替えるらしいわよ」と伯母。 「それ本当?」 「東京オリンピックに向けて壊しちゃうんですって」 「あら、噂には聞いてたけど……」 祖母は残念そうだ。 「だったら建て替え前にお…

20240115

(…)人が過去の記憶になんの感動も示さなくなる時、それは過去の記憶を自ら抹消しているのと同じことだ。そんな時、人は今現在のことにしか興味がなくなる。 (グエン・ゴック・トゥアン/加藤栄・訳『囚われた天使たちの丘』) きのうづけの記事に書き忘れ…

20240114

「おばちゃんには皺が二本あるよ」 「年をとったらもっと増えるのよ」 「そんなに皺が増えたら、誰だかわからなくなっちゃうよ!」 「そうね、誰だかわからなくなっちゃうわね」 (グエン・ゴック・トゥアン/加藤栄・訳『囚われた天使たちの丘』) 起床した…

20240113

最初に知らせをもたらす者が我らのそばにいるとは限らない (グエン・ゴック・トゥアン/加藤栄・訳『囚われた天使たちの丘』) 6時にアラームで起床。前日に売店で買ったカステラみたいなパンを食してスタバの缶コーヒーを飲む。パッキングして7時過ぎにチ…

20240112

もしかしたら、私は長い人生を生きることになるかもしれない。自分がどんなに死を待っていても、死の方がやってこなかったらどうすればいいのか。私のまわりをぐるぐる回るだけで、死が出て行ってしまったら。それは私が死から選ばれなかったということだ。…

20240111

丘に登って周囲を見渡せば、生い茂る草原の上や木々の間に間に空が見える。それは小さく切り取られた空の一部にすぎないが、人はそんな形で空の大きさを確認するしかない。なぜなら人の目に映るのは一人ひとりの視野に分断された空にすぎず、空本来の大きさ…

20240110

ひとたび足を地につけ、そこでバランスをとることを覚えた瞬間、人は永遠に大地から離れられなくなる。 (グエン・ゴック・トゥアン/加藤栄・訳『囚われた天使たちの丘』) 朝方、5時ごろだったと思うが、胸の悪さで目が覚めた。目が覚める直前にげっぷした…

20240109

しかし人間は、異質な他者と関係する中で現実的なものと自己の幻想の落差に出会い、現実を学習して幻想を再構築していく力をもっている。このように他者を通じてこそ主体が現実と出会えるところに(なぜなら他者の誘惑なしに、人はわざわざ現実的なものと出…

20240108

「主人の言説」は人々に規範的な命令を与える権力の言説であり、「大学の言説」は大学が担う知や科学の言説であると指摘した。「大学の言説」とは、科学的言説であり、事実を表明するものなので、それ自体は、主人の言説のような命令性をもたない。しかし昨…

20240107

哲学者の樫村晴香は、モノは、人間にとって依然、人間の操作的想像力に対し粘性の抵抗力をもって、瞬間的には生成できず、一定の時間と周期を必要とするものであると指摘する。例えば一台の車を作るのは大変な労働で、それを消費するということは、その労働…

20240106

ここで注意したいのは、安倍内閣は、右手で原理主義を推し進めながら、左手ではそれとは真っ向から対立するはずのマクドナルド化を推進していることである。 一方では、原理主義的に「美しい国」を謳い、憲法改正を企図して国の統合を図りながら、他方では、…

20240105

儀礼でなぜ相手を敬うことがわざわざ示される必要があるかといえば、逆にその裏に不信や敵意があるからである。もし最初から不信や敵意が一切なければ、儀礼というシステムは必要ない。どれほど仲の良い相手との間でも、人と人の間には不信があり、それがな…

20240104

ここで、ギデンズの議論の矛盾にぶちあたる。ギデンズはルーティーンが存在論的安心を支えているというが、今見たように、ルーティーンそのものが存在論的安心を支えているわけではないのではないか。むしろルーティンは、存在論的安心の結果なのではないか。…

20240103

ギデンズは、人々の生活における「ルーティーン」は、現実的にこの括弧入れを行っているとする。 毎日同じ時間に起き学校や職場に行き、毎日三食とり、夜は眠り……という生活を私たちは時おり単調だと思う。 が、退職したとたん、うつ状態になってしまったサ…

20240102

ギデンズは、存在論的安心の問題を、人間がイマジナリーや移行空間によって変容していくダイナミクスを積極的に捉える形で議論するよりも、「ルーティン」や「経験の隔離」という概念で議論することが多い。「ルーティーン」は日々のスケジュールなどが固定…