20131229

28日(土)
7時前起床。昨夜は軽くひっかけて眠るつもりだったのが、ついつい夜遊びをしてしまって、結局3時過ぎまで部屋でひとりYouTube相手にクスクス笑っていた。起き抜けのしんどさをおぼえるたびにもう夜更かしは金輪際やめようと思うのだが、なかなかどうしてそうはいかない。バナナを二本無理やりのみこんでからコートをひっかけておもてに出た。すると粉雪が降っていたので、ああ、となった。季節感というやつはきまって感傷と癒着する。
8時より12時間の奴隷労働。休みのはずの(…)さんが大丸で購入したものらしいししゃもと洋菓子を従業員全員分そろえて昼前に職場にやってきた。今年もお世話になりましたの意らしいのだが、合算すればけっこうな金額になるはずで、カード破産しかけている人間の羽振りとは思えない。というかこういう羽振りのよさ、見栄の張りかた、あるいはもっとえげつない言い方をするのであれば金をばらまくことで気を引こうとするそのやり方のためにTさんはもろもろやばいことになっているわけで、それだからいただきものも素直によろこべないというか、むしろそうじゃないだろうと、配るべき気も遣うべき気もそこじゃあないだろうと、内心でそのように思うところをこちらと完全に共有している(…)さんに目をやれば始終の苦笑で、さもありなん。
門松が届けられて入り口に飾られたのだが、一組4万円で、これは(…)さんの父親のシノギらしかった。
職場の京都新聞に目を通していたら端のほうに小さく震災で犠牲になったひとの身元が新たに二名判明したという記事があり、あらたに遺体が見つかったのかそれとも身元不明としてあった遺体の身元が検査の結果ようやく判明したのか、二年経てなおのこのちいさな記事に、部外者の想像力がとても強く刺激された。震度1でしか体験することのなかった震災が、ものすごく強烈な現実感とともにせまってきた。
出入りの業者のおっさんが、大阪のほうにあるらしいラブホテルの話を延々と垂れ流していったのち、満足して帰っていった。好事家のあいだでは有名なボロホテルらしく、休憩料金なども破格で、当然のことながら部屋は質素であるし建物もとてもきれいといえるようなものではないホテルというよりはむかしながらの連れこみ宿といった趣らしいのだが、一階は全室通常どおりのホテルとして使用されているものの、二階は別で、部屋の戸をかすかに開けておく=スワッピングしませんかのサインである、という暗黙の了解がいきわたっているらしく、その手の性癖を有する利用者でとてもにぎわっているという話だった。女の子をね、最初そこに連れていくでしょ、みんなふつう恥ずかしがるって思うじゃないですか、でもそれがね、部屋にいるとね、じーっと、前のめりになってくる、女の子のほうがもうぜんぜん興味津々、じーっと前のめりになってくるんですよ、だから最初からなにかさせようってあせっちゃダメでね、二回三回とね、最初は見学希望で、じぶんたちの絡みを見てほしいっていうひともぎょうさんいますから、そういうの目当てでっていって連れてくんです、そっからだんだんハマっていくんですわ。
夕方から雪がはげしく降りだした。朝礼のときに例年この時期は暇だからと口にした(…)さんの予想はことごとくはずれ、今年一番のいそがしさといっても過言ではないほどの来客の波また波で、心身ともに疲れきった。内職をするひまなどあるはずもなかった。
帰宅してからじんましんのスーパーで購入した半額品の総菜を喰らい、シャワーを浴び、腕立て伏せをしてから床に入った。布団のなかで丸まって3分もしないうちに眠りに落ちた。


29日(日)
6時起床。じんましんのスーパーで購入しておいた半額のパンとコーヒーの朝食をとりながら「A」の難所を精査した。遅刻ぎりぎりまで推敲を重ねたうえで、28日付けのブログ記事に残された難所をすべてアップして家を出た。(…)さんのスマートフォンを用いて職場でも精査を続けることのできるようにしておくためだった。おもてはおそろしく寒かった。自転車に乗っていると向かい風の寒気がジーンズを貫き向こうずねの毛穴ひとつひとつを刺すようで、そうだこれが真冬だと思った。足の指先の感覚がしだいに失われていくのを受けて、これはちかぢかしもやけになるなと覚悟した。この冬はじめてヒートテックのタイツを履きたいと思った。
8時より12時間の奴隷労働。きのうに引き続き馬車馬のように働いた。信じられない忙しさだった。どいつもこいつもヤリ収めというわけだ。それでも手の空いた時間にはスマートフォンを駆使して難所の改善に励んだ。きのう届いたばかりの紙本をもういちど読み直してみようかと思ったが、最初の数頁に目を通しただけで、最後の一周であるというプレッシャーからか、これまではまったく問題ないと思えていたはずの文章のあちこちに違和感をおぼえはじめ、要するに一種のパニックに由来する意味の喪失みたいなものなのだろうが、これはまずい、この違和感にしたがうとかえって悪いことになってしまうと思ったので、中断した。読み直しはもう必要ない。のこされた難所だけをどうにかするべきだ。紙本発注の目的だったあたらしい表紙案は上々だった。これで決定だと覚悟が決まった。
帰宅してからシャワーを浴びた。風呂場からもどると例のごとく(…)がいたので、例のごとくくら寿司にむかい、例のごとく逃現郷にはしごし、例のごとく薬物市場に立ち寄って帰宅した。あたらしい紙本の表紙を見せると、カッコイイという反応があったので、よしと思った。大晦日には鍋でもしようと約束して解散した。布団にもぐりこんで携帯電話の液晶画面に表示された30日という日付をながめた。あと一日!難所はのこすところ二ヶ所!今日ですべてが終わるさ!今日ですべてが変わる!