20230525

 午前中に目が覚めた。微熱は続いているが、具合はかなりよくなっている。(…)一年生の(…)さんから期末テストの内容である「道案内」について質問。(…)さんからは作文コンクール用の原稿をあらためて修正したのでチェックしてほしいという依頼。
 シャワーを浴び、歯磨きをすませる。とにかく体の凝りや張りがしんどく、なんだったら微熱よりもそっちのほうがきついので、しっかりストレッチをする。ストレッチをするだけでしんどくなるのに体力の衰えを感じる。こればっかりはどうしようもない。
 今日はもうベッドでごろごろしないと決める。可能なかぎり平常通り過ごす(ただし外出は控える)。食事はトーストとフルーツ。コーヒーも飲む。ベッドでほぼ寝たきりだった数日前、本の読めるコンディションでもないし、YouTubeで適当にむかしのバラエティ番組などを流していたのだが(もちろん流すだけ流して視聴する余裕はなかったが)、その関係で、YouTubeのトップ画面にめちゃイケの動画が表示された。で、むかし大好きだったなァと思いながら、朝食のお共に軽く視聴してみることにしたのだが、だまされたと思ってまずはこの動画(https://youtu.be/sCI9jSf0eek?t=1703)を1分半ほど視聴してほしい。
 氷川きよしがゲスト出演している「爆烈お父さん」のコーナーで、氷川きよしが原宿や代官山で私服を買っていると発言をする、それをきいたチャラチャラしたもの嫌いな加藤浩次演じるお父さんがブチギレて「家訓」を読み上げるといういつもの流れなのだが、「演歌歌手なのに普通な場所で服を買っちゃう奴は」という家訓前半に続くのが「武蔵丸ピッコロ吹いたらついて来る」というフレーズで、これにはマジでクソ笑った。こんな経験ははじめてかもしれない、ふつう声を出して笑うとき、たとえそれがコンマ1秒のことだったとしても、じぶんの置かれた状況などをいったん把握したうえでこれくらいの声の大きさであれば出してもだいじょうぶだろうという計算が働くものだ、けれどもこのときはそんな計算を抜きにしてマジでいきなりでかい笑い声が出た、というかこの経験をすることでむしろ日頃じぶんが声を出して笑うとき、たとえどれほど自然で反射的なものに思われてもそれでもなお一種のはばかりの介在していたことが遡及的に認識された。本当にびっくりした。自意識の吹き飛ばされるような笑いがあるんだ、と。
 洗濯機をまわし(ほとんどが寝巻き用のTシャツだ、汗をかくたびに着替えていたので大量にたまっている)、デスクに向かい、おとついづけの記事を投稿する。そのままきのうづけの記事も書いて投稿。作文コンクールの原稿について、24日までにこちらに送るようにと告げてあったにもかかわらず、一年生の(…)くんと(…)さんからはいまだに音沙汰がないので連絡。(…)さんはまだ500字、(…)くんにいたっては規定文字数を大幅にオーバーする2500字とのこと。今日中に完成させてこちらに送ることができない場合は、応募手続きなどじぶんですませてくれとここは厳しく対応する。なんでこう、こっちの学生は締め切りに対しても、みんながみんなというわけではないけれども、にしてもこれほどルーズなんだろうか? コンクールの締め切りそのものが月末であるので、たぶん学生らとしてはひそかにそこをデッドラインとして見ているのだろう、ぎりぎりそこにすべりこめばいいというあたまなんだろうが、添削や応募手続きに要する時間と手間暇の計算がそこには欠けている。だからこそ、文章添削や応募手続きなどにはそれ相応の時間を要する、そうであるからこそ一週間前である24日を締め切りとするという、その意図を説明する文章も含めてこちらは通知しておいたわけなのだが、にもかかわらずこれなのだ、コンクールに参加しようとする意欲があり、能力も高い学生ですらこれなのだから、そりゃあ卒業のかかっている卒論であろうとも締め切りを守らない学生も出るわなという感じだ。

 熱もほぼひいたし、いい加減部屋を換気したほうがいいように思われたので、台所と阳台の窓をあけた。それから一年前の記事の読み返し。2022年5月22日づけの記事から25日づけの記事をまとめて読む。前回、(…)さんと(…)さんと友阿に出かけた日の記事だったと思うが、学生会の内部でもいろいろ政治的な駆け引きがあるらしいと書きつけた、それについて2022年5月25日づけの記事に裏打ちするような内容が記録されていた。卒業を間近にひかえた当時(…)四年生の(…)くん、(…)くん、(…)くんと一緒に火鍋を食ってコーヒーを飲んでだべった夜の記録。

 学生会でも同じようなものだと(…)くんと(…)くんはいった。二人とも学生会に参加していたわけだが、上の役職に就くためには先輩のおぼえのめでたい人物になる必要があるという。だから結局上のほうにいく人間というのは(…)さんみたいな権謀術数に長けた人物になるということで、(…)くんはそういう「権力のゲーム」が嫌になって二年生の時に学生会を抜けたらしい(「権力のゲーム」というワードが面白すぎたので、「わかりやすいわ〜!」と爆笑していると、(…)くんも爆笑し、それからなぜかこちらに握手を求めた)。

 このくだりを読んでいるだけで、(…)くんの気さくな笑顔がよみがえり、ああいう気のいいやつといっしょに馬鹿笑いできる一瞬があっただけでも、この仕事をはじめた甲斐はあったよなとしみじみ思った。
 夕飯はまた(…)さんと(…)さんにお願いした。第四食堂の西红柿炒鸡蛋面と夜食と翌日の朝食用にクリームパン。このまま症状が悪化しないようであれば、明日以降は自分で買い出しに出るつもり。とはいえ、授業に出るのはまだはやいと思うので(こちらの体調そのものよりも学生らに移してしまう可能性をおそれている)、明日の一年生の日語会話(二)についてはおやすみさせてくださいと昼間グループチャットのほうに通知したのだった。
 食事をとる。そのまま作文コンクール用の原稿チェックにとりかかる。(…)さんのものは完璧。彼女、たぶん受賞すると思う。(…)さんのものは正直むずかしいと思う。こちらのことを褒めそやす内容になっているのだが、具体的なエピソードがひとつもなく、空疎な美辞麗句に尽きているので(こういうのもいかにも中国的だよなと思う)。添削を終えたところでふたりに返却。(…)さんとはじめてちょっと長めにやりとりを交わした。彼女が真剣に勉強をはじめたのは二年生の途中から。一年生のときは当時恋人だった(…)くんといつも一緒にいて、モーメンツにもしょっちゅう彼に関する内容を投稿していて(誇張でもなんでもなく、一日に最低五回は「(…)は〜」みたいな文章を投稿していた)、とにかく恋愛に完全に狂っているなという感じで、当然勉強などまったくしていなかったのだが、いまは大学院進学を目指して勉強しているという。一年生は完全に無駄でしたというので、恋愛経験そのものは無駄ではないよ、全部財産だよと応じた。
 おなじ二年生の(…)さんからパンを差し入れしようかという微信が届いた。今日別の学生に持ってきてもらったばかりだからだいじょうぶと応じた。中国では次の感染ピークが六月下旬におとずれるという報道を、今日か昨日か忘れたが、ネットで目にしていたのでそのことを伝え、きみも二度目の感染に気をつけてねと続けると、「全然怖くないです」という反応。ま、フルオープン後の中国は死者や重傷者やLong COVIDなんてほぼ存在しないという空気が作りあげられているもんなと思っていると、「中国には“是福不是祸,是祸躲不过”という言葉があります」と続いた。「福であれば禍であらず、禍であれば逃れられず」といったところか。ちょっと「ニーバーの祈り」を思い出した。
 (…)くんと(…)さんからも作文コンクール用の原稿が送られてくる。ふたりとも案の定テーマから逸脱している。とはいえ、後者については肝となる段落ふたつのうち、ひとつが逸脱しているだけだったので(彼女が選んだテーマはポストコロナ後の日中交流みたいなアレであるのに、コロナとはまったく関係のない教科書問題や歴史問題についての記述が、文脈を無視してそこだけ無理やりねじこんだみたいにごろりと横たわっている)、その点だけ指摘(この指摘が、教科書問題や歴史問題に対する「日本人」のアレルギーとして受け取られないように言葉を尽くすのが、愛国心の尋常でない若い世代を相手にするときはまた面倒なわけだが)。(…)くんに関してはテーマ全無視。ふだんの会話と同じ。つまり、自分の大好きな日本の歴史を語りたいだけ。そういうわけで、彼の選んだテーマは日中友好条約四十周年うんぬんであるにもかかわらず、弥生時代から近代にかけての歴史をひたすら、オタクがみずからの知識を問わず語りに開陳してひけらかし何者かに勝ち誇ろうとするかのようなあのテンションで、論旨も構成もなくただただ記述しているのみという代物。さすがにこれはダメだろと思ったのでその点指摘すると、応募テーマをそもそもろくに見ていなかったと笑顔の絵文字付きで返信してみせるので、こいつアホかと思い、真面目な話をするとこれがもし作文のテストだったらほぼ最低点になると思うよ、問題文をちゃんと理解していないというのは作文の内容うんぬん以前の問題だからと伝えた。(…)くんはたしかに一年生のなかではトップレベルに会話が上手であるし、少なくともこちらの授業を受けるときの態度も熱心であるし、やる気もある。ただコミュニケーションのあり方もそうであるし、今回の作文コンクール用の原稿もそうであるし、さらにいえばスピーチコンテストの原稿もそうだったが、端的に、独りよがりなところがある。コミュニケーションの場では、会話の文脈を頻繁にぶったぎってじぶんの興味関心にひきつけようとするし、その場合相手の興味関心を考慮することをあまりしない。作文コンクール用の原稿でもやはりテーマを無視してじぶんの興味関心ばかり書きつらねているし(しかもそこには構成的意思がなく、本当にただの垂れ流しになっている)、スピーチコンテスト用の原稿にいたってはそもそもスピーチというものを無視した、新海誠村上春樹に通ずる感傷的なモードをコテコテに盛っただけの、本当に悪い意味でのポエムみたいなものをただぼそぼそと読み上げただけだった。他者がいない。ここをもうちょっとなんとかしたほうがいい。そうしないと、今後、クラスでもちょっと浮いてしまうんじゃないかと思う。N1なんて楽勝だとクラスのグループチャットでイキりまくった発言をしてすでにいくらか顰蹙を買ったらしいという情報もこちらの耳に入ってきているし、このままではかつての(…)さんみたいになってしまうかもしれない。
 シャワーを浴びる。ストレッチをする。(…)さんから書き直しを終えた作文が送られてくる。完璧になっていた。日中、締め切りをオーバーしていることを警告した強めのメッセージを送った際には、書きあげることができるかどうかわかりませんと泣き顔の絵文字を付して送ってみせたほどであったのに、追い込まれたらこのペースでできるんじゃないかという感じ。ま、彼女はモーメンツの投稿を見ているかぎり、かなりソシャゲにハマっているようであるしそれにくわえて大学内に彼氏もいるしで、日頃はそれほど熱心に学習しているわけではないのだろう(いまは高校時代の日本語学習の貯金で優位に立っているが、今後一年でランクが下がることも考えられる)。しかし、今回の書き直しはこちらの指摘を十全に理解したものになっていたので、これだったら問題ない、やればできるじゃん、おつかれさまといたわると、先生はすごい、コロナで気分が悪いはずなのに作文を添削するなんて、そんなにまじめなことに感動しますみたいな反応があったので、いや、熱はいま全然ないからわりとだいじょうぶなんだよと返信。
 (…)くんの作文については、結局、こちらが全面的に手を加えることに。直すのも手間であるし、直したところでいい結果を得られるわけもないしで、こんなもんただの苦行やんけという感じ。(…)くんはスピーチ代表に選ばれる可能性もあるわけだし、そうなったらそうなったで、こういう作文ばかり書くようであればやっぱり問題であるし、次回顔をあわせたタイミングであらためてしっかり伝えるべきことを伝えたほうがよさそう。
 添削のあいだ、なぜか不意にABBAの“Dancing Queen”がききたくなり、ずっとリピート再生してしまった。これ、やっぱり、めちゃくちゃいい曲だよなァ。
 クリームパン食す。歯磨きしながらジャンプ+の更新をチェックする。今日は昼寝をしていない。ごろごろもほとんどしていない。部屋の外に出ない以外は可能なかぎり通常の生活を送ったかたち。ただ、夜になるとやっぱり、あたまがちょっと重くなる。カフェインの離脱症状かなと思ったが、いちおうコーヒーは二杯飲んでいるし、頭痛というよりも発熱に近いあたまの重さなので、やはりコロナだろう。熱は37度あるかないかなのだが、体感はやっぱりそれよりしんどい。そういうわけで23時には寝床についたし、寝付くのに時間もかからなかった。