20230907

 6時45分起床。くそったれ。これから毎日木曜日はこの時間に起床する必要があるのだ。歯磨きしながらスマホでニュースをチェック。トースト二枚の食事をとり、身支度を整える。コーヒーを飲んでいる時間はなし。
 第五食堂の売店でミネラルウォーターを買う。朝一の授業に出るのなんてずいぶんひさしぶりであるというか、コロナ以降もしかしたら今日がはじめてかもしれないわけだが、食堂にはけっこうな数の学生がいたのでちょっとおどろいた。朝の自習と朝一の授業のあいだにやってきて包子なりおかゆなりを食うのかもしれない。
 ケッタで外国語学院へ。教室はB601。これまで一度も利用したことのない教室だが、エレベーターがないので6階まで階段をあがらなければならない。朝一の授業であるとはいえ気温はすでに30度あったようであるし、教室に到着するころには汗だく。さらに教卓のコンピューターはおそろしくボロボロで、起動するのにバカみたいに時間がかかったし、USBメモリもうまく読み取ってくれない、ようやく読み取ってくれたところで中のPDFを開こうとするとフリーズを起こすありさまで、(…)くんにお願いして再起動してもらった。(…)くん曰く、外国語学院の教室にあるパソコンはすべて「ゴミ」らしい。中学校や高校にあるパソコンもすべて「ゴミ」であったとのこと。
 8時から二年生の日語会話(三)。初回授業なのでお土産争奪戦のゲームをする。日本で買ったコロンバンのクッキーであるが、さすがに嫌な顔をする子はいなかった。これが海産物であればさすがにみんな躊躇するんだろうが、日本産というだけでクッキーだのキャンディだのチョコレートだのにも嫌悪感を示すほどアレになっている子は少なくとも見当たらない。ひと安心。授業前半はビンゴ。テーマは「(…)先生の部屋にあるもの」と「夏をイメージするもの」で、どちらも名詞限定。後半は例年通りパーセンテージクイズ。ぴたり賞が一度だけ出た。最後はやや駆け足になったが、いちおう時間通りに終わった。ちなみに、クイズの問題のなかに「幽霊」という単語が出てきたので、意味はわかるかとたずねると、鬼! と口をそろえて学生らがいうので、先生は日本鬼子じゃないよというと、みんな爆笑した。これ、ウケなかったことがない。
 ゲームに勝った(…)さんが賞品のクッキーを教卓まで取りにやってきたとき、老师,爱你! と口にして、それで卒業生の(…)さんのことを不意に思い出した。彼女が二年生のころだったと思うが、口語の授業のテストで一対一で会話するという内容であったのだけれども彼女は日本語をまったく勉強しておらず、なんだったら卒業した時点でひらがなは読めるけれどもカタカナは読めないというくらいのレベルだったんでないかと思うのだが、こちらは基本的に口語のテストでは不合格を出さない、しかるがゆえに合格にする旨を中国語で伝えたところ、老师,爱你! と去り際に口にしていって、ああ、爱你ってそういうニュアンスで使うこともあるんだと思ったのだ——ということを今日の(…)さんの言葉でふいに思い出したのだった。
 教室を出る。三階の教務室周辺近くの廊下で学習委員の(…)さんの姿を見かける。B601のパソコンが絶不調であるし、教務室で教室変更を頼もうかなと考えていたところだったので、ちょうどいいやというわけで彼女に通訳をお願いしたところ、彼女のほうでもそのつもりで教務室をおとずれようとしていたとのこと。(…)くんも同行。それで三人そろって教務室に入り、事情を告げて教室変更を依頼する。A605になった。結局6階なのか! (…)くんはなぜか紙飛行機を手にしていた。中国語では纸飞机ですか? と当てずっぽうでたずねると、そうですという返事。
 二年生はこれから(…)先生の担当する基礎日本語だという。のちほどモーメンツをのぞいたところ、複数の学生が基礎日本語の授業で内容がまったく聞き取れなかったとか中国語で説明してほしいとか不満を漏らしていたので、え、(…)先生もしかして全部日本語で授業やってんのか? マジ? と驚いた。
 帰宅。ひととき休憩。きのうづけの記事の続きなどを書き進める。11時になったところでふたたび寮を出る。(…)((…))と(…)とすれちがう。軽くあいさつ。第四食堂へ。先学期ちょくちょく食べた西红柿炒鸡蛋面が食べたくなったのでやってきたわけだが、リニューアルオープンのせいで店がなくなっていた。おなじ麺を出している別の店があったのでそこで打包することにしたのだが、結論だけ先にいうと、以前の店のほうがずっとおいしかった。寮にもどり、階段をあがっている最中、また(…)とすれちがったのだが、彼は前回ここでこちらとすれちがったとき同様、日本から来たんだろう? と確認したうえで、香港で有名な日本のスターがいるとかなんとか言い出して、たぶん山口百恵とか谷村新司とかだと思うのだけれどもその歌をハミングしはじめた。じぶんの世代ではないからわからないと前回も言ったのだが、けっこうしつこく歌い続けるので、男性歌手なのか女性歌手なのかとたずねると男性という返事があっていまは60歳くらいだと続けるのだが、マジで知らないしこの話題に興味もない。以前この歌手のビデオを送ったことがあるというので、たぶんそれはもうひとりの日本人教師ではないか、こちらはそんなビデオを受け取った記憶はないと応じたのだが、というやりとりを交わしている最中も思ったのだが、やっぱり(…)の英語はちょっとちぐはぐな気がする。彼はCanadaからやってきたというが、香港のこともやたらとしょっちゅう語る。もともと両親が香港ルーツ、彼自身は生まれたときすでに一家がCanadaに移住後で、その後奥さんとふたりで大陸にやってきたということなんだろうか? しかし(…)と普通话で会話しているところも見たことがあるし、さらには外教のグループチャット上で(…)相手にじぶんが世話になっているqi masterからこれこれこういう健康上の助言を受けたみたいなことを話していたこともあって、qi masterというのは気功の先生ということなんだろうけれども仮にこれが法輪功だったりすれば、大陸からの弾圧を逃れてCanadaに移住したという過去みたいな話にもなってきかねないわけで、出自がかなり謎だ。そういうのってしかし本人に直接きいていいものなんだろうか?
 西红柿炒鸡蛋面を食う。(…)から微信が届いている。boarding cardは残っているかというので、捨ててしまったと答える。次回からはreimbursementのために保存しておいてくれとのこと。それからthe tutoring for Japanese Language Contestにはpaymentが発生すると(…)先生から聞いた、there must be misunderstandingとのことで、え? マジで? 例年どおり金もらえんのけ? となってあらためて(…)先生とのやりとりを確認したところ、10コマ分だけ報酬が出るみたいな話だった。すずめの涙やんけ!
 ベッドに移動して昼寝。三十分ほどのつもりだったが、一時間半ほど寝てしもた。コーヒーを淹れ、きのうづけの記事を投稿し、ウェブ各所を巡回し、2022年9月7日づけの記事を読み返し、2013年9月7日づけの記事を「×××たちが塩の柱になるとき」に再掲する。そのまま今日づけの記事もここまで書くと、時刻は16時半だった。

 第五食堂で打包。寮の踊り場で(…)夫妻と(…)((…))が立ち話しているところに遭遇する。(…)((…))のとなりには金髪の白人女性がいる。すぐに(…)((…))の奥さんだと思い出す。ロシア人女性だ。立ち話には参加せず、Hello! のひと声のみで突っ切る。
 食後、ひとときだらだらする。(…)さんのスピーチ原稿を修正して録音といっしょに送る。三年生の(…)さんから冷凍のドリアンをいかがですかと微信が届く。なぜ彼女は毎回こちらにドリアンをプレゼントしようとするのか? 「先生は大切な人だからです」という。
 コーヒー豆をミルでガリガリやっている最中、扉がノックされる。出ると、(…)さんと英語学科の女子がいる。名前は忘れてしまったが、彼女が仲良くしている学生で、会話の授業にももぐりとして何度か出席したことがある。あいかわらずボーイッシュな短髪であり、髪型のみならずファッションも含めてこっちで時おり見かける典型的なレズビアンのように思われるのだが、ひさびさに間近に向かい合ってみて、あれ? (…)さんの相棒である(…)さんに顔が似ているなと思った。いままで気づかなかったが、そう思ってながめてみると、けっこうそっくり。(…)さんから冷凍のドリアンを受けとる(冷蔵庫で保存するようにといわれたが、のちほど、冷蔵庫ではなく冷凍庫であると微信が訂正があった)。お礼に英語学科の彼女の分もふくめてお土産のクッキーを渡す。この子はリストカットの事実を知っているんだろうかと思いつつ、とりあえずやや遠回しにもうだいじょうぶとたずねると、包帯もなにも巻いていない左手首の内側をながめながらだいじょうぶですという。彼女も事情を知っているんですかと英語学科の彼女のほうをちらりと見ながらたずねると、いいえ知りませんという返事。だったらこれ以上リストカットの件についてあれこれ話すわけにはいかない。英語学科の彼女は独学で日本語をある程度習得しているし、実際このときもこちらの「彼女」という言葉を、こちらはもちろん中国語でいうところの她の意味で口にしたわけであるが本人は女朋友の意味で受けとったらしくはずかしそうに笑っていた。そういうリアクションも含めて、(…)さんもやっぱり同性愛者なんじゃないかなとあらためて思った。以前このふたりが一緒にいるのを見たときも同様の印象を受けたし、そもそも(…)さん自身過度にフェミニンな感じがして、それがたとえばやはり同性愛者である四年生の(…)さんそっくりだったりするわけであるが、というかそもそもこちらにやたらとなつく学生というのは同性愛者である割合が非常に高いという統計的なアレもあるので、そうなんじゃないのかな、元彼との失恋をひきずってリストカットしたというけれどもあれも本当は元カノの話なんじゃないのかなと思ったりもしたのだけれど、ま、そのあたりは本人の口から直接そうであると聞かされるまであれこれ追求するようなもんでもない。
 20時から21時半まで「実弾(仮)」第四稿執筆。プラス15枚で、計747/1040枚。シーン39、片付く。実家に滞在中の(…)で目にした入道雲が印象的だったので、それを描写にくわえた。そのうえで、景人がラピュタみたいだというのに対して孝奈がジブリを見たことがないと答えるというやりとりを追加。いい会話が書けた。ヤンキーの中にはジブリをまったく見たことのない人間がけっこういる。
 浴室でシャワーを浴び、ストレッチをし、懸垂をする。プロテインを飲み、食パン一枚とドリアンを食い、歯磨きしながらジャンプ+の更新をチェック。部屋の照明を落としてフリースタイルをしたのち、イヤホンを奥までさしこんでボリュームをあげた状態で、適当に選んだ音楽を三曲ほど流す。そのあいだ真っ暗な部屋のベッドで仰向けになっているわけだが、細かいところまで音像をしっかり集中して追う、その感じがマジで異常に気持ち良くて、これ明日仕事なかったら朝方まで延々とやってまうなと思う。大麻なんかまったく必要ない。