20231118

 この点については、NRM(New Religious Movement)という名称がもつ新しさの問題とも関わってくるだろう。西洋では、ウェーバーを始めとし、正当な教会の会員組織であるチャーチ、それに対し逸脱的である組織のセクト、さらに逸脱的でありより神秘的なグループとされるカルトの三類型が取られてきた。スタークとペインブリッジ(同)は、トレルチの影響を受けたウェーバーのこの分類には価値観が入りこんでおり、カルトをネガティヴなものとして捉えているとして、カルトをセクトと同じ逸脱的組織であるが、セクトが伝統的な信念や実践に基づいているとすれば、カルトは新しい信念や実践に基づくものとして、機能的な分類へと置き換えた。こうした動きの中で、カルトのもつネガティブなイメージを払拭しようと、セクト・カルト意味する、New Religious Movement(MRM)という名称が使われるようになったのである。これに対し、さらにHexham,I.とPoewe,K.は、NRMは従来のカルト概念と代替可能なものではなく、グローバル現象として新しいものとして考慮しなければならないと指摘した。これまでの世界宗教もそれはそれでグローバル文化だったわけだが、それでも例えばキリスト教においても、メタ文化としてのキリスト教とローカル文化との間に調和が見られたのに対し、NRMでは、より多様であるとしている。
樫村愛子『「心理学化する社会」の臨床社会学』より「ラカン社会学から見た「オウム真理教」」 p.280-281)


  • 7時起床。健康診断当日であるので飲食は控える。といってもCTを撮るだけだろうし、そんなことする必要はまったくないと思うのだが、念のため。
  • 8時に北門へ。(…)先生、先着している。スクーターのケツにのせてもらうかたちで病院へ。道中、(…)をADHD専門の医者に診せるという話はどうなったのかとたずねると、やはり(…)の医者の評判はよろしくないので行くのであれば(…)かなと考えているとのこと。ただ先日、国語のテストではじめて94点をとったらしい。これまではテスト中もまったく落ち着くことができず、問題を最後まで解くということすらまったくできなかったのだが、今回ははじめて時間内に全問解くことができた、担任の教諭からも褒められた、クラスメイトみんなの前で高得点をとった旨を発表された、それでその一日はずっとハイテンションでほとんどパーティーみたいだったという。(…)先生もお祝いの意味で、その日はずっと(…)の大好きなSwitchのカービィに付き合ったとのこと(ちなみに、ゲームの腕はすでに(…)のほうが上らしい)。ほほえましいエピソードだ。(…)にはこれ以上傷ついてほしくない。のびのび育ってほしい。
  • 病院ではまず呼吸器科で診断。前回の健康診断の結果をみせる。担当の女医は外国人であるこちらにややおどろいたようす。しかしやさしく接してくれる。とりあえず結核かどうかがわかる血液検査をし、CTを撮り、それらがすんだところでふたたびここへ来てくれとのこと。女医はこちらを最初学生と勘違いしていた。健康診断の結果に記載されている38岁という年齢を見て、え! 38歳! とびっくりした顔になった(帽子とマスクで完全武装中だったからいろいろ誤魔化しがきいたのだ)。
  • 血液検査。検査を受けるまえに受付専用の機械で手続きをする必要があるのだが、そばには赤いベストを着たボランティアの女子児童がひとり突っ立っていた。大人であるわれわれにも全然おびえるふうでなく、血液検査を受けたいのかとたずね、(…)先生が肯定すると、彼女に代わってぱぱぱっと機械を操作して手続きしてみせる。ずいぶんおとなびている子ですねと感嘆して漏らすと、(…)とおなじくらいの年の子なのに信じられないと(…)先生は苦笑した。
  • その後はCT撮影。ここでの待ち時間は予想通りけっこうあった。小一時間ほどベンチに座っていたのではないか。その間、いろいろ話した。(…)さんが彼女と別れた話、重慶の大学に務めるかもしれない話、健康診断でHIV偽陽性をくらった話。偽陽性の一件について、(…)先生は知らなかった。当時国際交流処から聞かされていなかったらしい。悪徳私立病院がその必要もないのに再検査を要求して患者から金をふんだくるというケースが中国ではちょくちょくあるという話もあった。(…)先生も高校生のときだったか大学生のときだったか被害に遭ったことがある、と。
  • 中国国内で現状コロナの流行具合はどうなのかとたずねると、統計もまったくとっていないし関連報道もほぼないのでわからないという返事。ワクチンは希望するのであれば接種できるが、効き目については疑わしいという見解が人民らのあいだでも一般的だという。以前卒業生の(…)くんが(…)に遊びにきたとき、偽物のワクチンが流通しているというようなことを口にしていたのでその件についてたずねてみると、さすがにそういう話はきかないという(ただひと昔前の中国ではそういうこともあったようす)。(…)くんは同性結婚を望んでいるので将来アメリカかヨーロッパに移住することを考えているようだという話からおなじく同性愛者の(…)くんの話になり、さらに中国では同性愛や精神疾患に対する理解が全然ないといういつもの話もする。
  • 一年生の授業の話もした。(…)先生が担任している2組はまじめ。彼女の授業も真剣に受けているらしい。もっとも優秀なのは(…)さんだという。彼女は英語の成績もかなりよいらしく、担当教員から絶賛されているとのこと。大学入試にあたっても外国語学部一本にしぼって受験していたという期待できる逸材。ほか、歴史学科に移ることを考えている(…)くんの授業態度がまずいので、いちどふたりで話したという。つまり、このままだと今学期の成績に期待できない、そうするとほかの学科に移動することもむずかしくなる、だから今学期だけは我慢してしっかり授業を受けなさいと伝えた、と。おっとりとして優しい(…)先生でもそんなふうに詰めるべきポイントはしっかり詰めているんだなとちょっと感心した。こちらは中国基準でいえばちょっと放任主義が過ぎるのかもしれない。ほか、1組がやばいという話もした。学生らを廊下に叩き出した件について話すと、ほとんど小学生みたいですねという反応。然り。1組の基礎日本語を担当している(…)先生に今度クラスのようすをたずねてみると(…)先生は言った。
  • 日本語学科の未来も暗い。卒業して実際に日本語を使う仕事についている人間はおそらく数えるほどしかいない。少なくとも(…)省では教師くらいしかないですよねというと、(…)も撤退が決まりましたしねとあって、ああそうだった、最近ニュースになっていたなと思う。以前は(…)にあるチップかなにかの工場にも日本人の技術者が長期滞在していたことがあり、その関係で日本語を使う仕事もちらほらあったらしい。ちなみに技術者らは完全VIP待遇で、(…)街にある高級住宅に暮らし、職場までは送迎車で移動する生活を送っていたという。
  • CTを撮る。機械音声が中国語しか対応していないものだったので、放射線を防御するあのアーマーみたいなのを装着した(…)先生が付き添って、息を吸って〜止めて〜吐いて〜と逐一通訳してくれる。結果が出たところで最初の診察室へ。問題なし。肺にはやはり陰があるのだが、どうも過去に肺炎か結核をやらかしている痕跡のようにみえるというので、そういえば気胸の診断時にも似たようなことを言われたぞと思った。のちほど(…)先生にそう伝えると、たしかにあのときそういう話もありましたねという反応。軽度の肺炎が自然治癒した痕跡があるみたいなことを指摘された記憶があるのだ。
  • と、書いたところで過去ログをディグってみたところ、2022年1月28日づけの記事に以下のような記述あり。気胸と診断された二日後にあらためてCTを撮った日。

ふたたび病院へ。CTの診察結果を受けとったのだが、前回と内容が変わっていた、というか前回は肺のレントゲンを撮影した結果、左側が気胸という診断だったのだが、CTによるより厳密な今回の検査の結果、右側が気胸、左側もおそらく気胸、それにくわえて胸膜炎というふうにレベルアップしていた。は? 胸膜炎? とびっくりした。軽度の気胸なんてどうせ自然治癒するものだろうし、今日の検査はもう受けなくてもいいかもなどと早朝はたいそう余裕ぶっていたわけだが……。もしかしたら入院が必要になるかもしれませんと(…)先生((…)先生の旦那さんは過去に胸膜炎をわずらっていたことがある)。CTによる診察結果の印刷された紙切れを携えてあらためて肺と胸の専門医による診察室をおとずれた。そこで医者の説明を聞いたのだが、胸膜炎は現在進行形のものではないとのこと。過去に肺の病気か怪我をしたその名残みたいなものが胸膜炎として(AIによって? CTの担当者によって?)診断されたらしい。とりあえずひと安心。しかしその肺の傷? 障害? 後遺症? によって気胸の発症しやすい状態になっていることは間違いないという。過去に肺を病んだ記憶はない。ただ京都時代に何度かひどい咳風邪みたいなものにかかったことはあるので、そのときに派手に痛めてしまったのかもしれない。

  • いずれにせよ問題なし。診断書にはいちおう来年またCTを撮るようにとあったが、要するに、経過観察ということだろう。(…)先生のケツにのせてもらうかたちで第五食堂前まで送ってもらう。土曜日の朝からどうもすみませんでした、ご迷惑おかけしましたとあたまを下げる。
  • 打包して帰宅。食後は二時間ちょっと寝る。目が覚めたところでX(Twitter)をのぞくと、池田大作の訃報。死亡説はかなり長いあいだ流れ続けていたわけだが、本当に今日の今日まで生きていたのか。コーヒーを飲み、きのうづけの記事の続きを書いて投稿。ウェブ各所を巡回し、一年前と十年前の日記を読み返す。
  • 以下、2013年11月18日づけの記事より。冬休みに帰国した際、ルネッサンス吉田の著作をまたまとめて再読しようかなと思った。

(…)それから万年床に寝転んでルネッサンス吉田『愛を喰らえ』を読んだ。逆さまになった茜新地。この作家の場合、既視感と退屈さがイコールにならない。つまり、この作家はテーマを持っている。テーマとは呪いであり、ゆえにテーマを持つとは呪いに呪われてあることにほかならない。呪いに呪われてある作家は生涯をとおしておなじひとつの作品を延々と書きなおしつづけることになる。呪いに呪われてあること、すなわち、のぞまぬ子を懐胎してあること、それがひとつの特権でもたしかにありうることの確たる証拠としてこの作家の作品群がある。あるいは、そうした特権の遺憾なき発揮だけが「浄められた夜」(デーメル-シェーンベルグ)をまねきよせるにいたるともいえるかもしれない。「(*不義の結果)きみの授かった子供を、/きみの魂の重荷にしてはならない。/見たまえ、この天地万物がなんと澄んだ光を放っていることか。/万物が輝きに包まれている。/きみは僕と共に冷たい海の上を渡っていく、/だが特別な温かさがきらきら輝きながら、/きみから僕へ僕からきみへ行き交う。/この温かみがその見知らぬ子を浄めるだろう。/きみはその子を僕のため、僕の子として産んでおくれ。」。百花が内田を奪還すべく家から飛び出し町中をいままさに駆けていこうとするその横顔と後ろ姿(P.178)がいわゆる「女の子走り」になっているあたり、作中通してずっと「オヤジくさい」身ぶりをとりつづけていた彼女がまさしく「呪い」を引き受けた瞬間(のぞまぬ子の浄められた瞬間)のようですばらしい。この1ページ、最高にしびれた。

  • 今日づけの記事も書く。途中、(…)からメッセージが届く。来週の金曜日に丸一日使ったボランティア活動がある。そのInvitation Letterが送られてきたわけだが、はっきり言ってクソめんどくさいので、金曜日は作文の添削と授業準備にあてると決めているのでと断る。すると着信。Invitation Letterのなかではactivityとなっているが、実際のところこれは大学のprojectなのだという。それってつまり、参加しないという選択肢はないということ? と率直にたずねると、金曜日に授業がある教師はそっちを優先してもらう、しかし授業がない教師には参加してもらうことになるという返事。projectとしてたぶんある程度の人員が、それも大学の面子を保つためにわれわれ外国人教師が必要だということなのだろうが、こちらはアジア人であるのだからそのprojectのようすをとらえた写真だの動画だのを大学のウェブサイトにのせたり地元のローカルメディアに流したりしたところでそれほど見栄えがするわけではないし、そういうのはもうひと目見て、ワーオ! 国際的ィ! とわかる連中だけ呼び寄せてやってくれよと思う。通話のあと、あらためてInvitation Letterをチェックする。themeは“(…)”で、8時20分スタートの17時解散。ふざけんな。(…)Universityからパキスタン人の博士までやってくるというので、大学も力を入れているけっこうデカめのイベントなのだろうが、なんでそんなもんにおれが行かなあかんねん。当日仮病を使うことも視野に入れておく。
  • 第五食堂でまた打包する。食後、シャワーを浴びたのち、三年生の(…)さんから頼まれた作文の添削。きのう(…)さんからやはり作文の添削を頼まれたばかりであるが、どうやらおなじ作文コンクールに応募する模様。コンクールのルールをざっと読むかぎり、教師による手助けは禁止されているようだが、どうせほかの参加者らもみんな教師に添削をお願いしているはずだとふたりともいう。ついでなので、来学期はきみたちのクラスの授業をひさしぶりにぼくが担当することになったよと告げる。(…)さん、よろこんでくれた。
  • 韓国人の(…)先生から連絡。(…)さんと微信でいくらかおしゃべりしてくれたとのこと。インターネットの件で相談があるというので、VPNの件ですかと返信すると、まさかの着信。出る。かなりしぶい声の男性。日本語のレベルは高い。最初のあいさつだけで、あ、うちの教員よりできるわ、と思った。「敏感な話」なのでテキストではなく直接電話したほうがいいと思いましてというので、それくらい警戒心の強いひとなのにどうしてまたVPNがないんだろうと思って話をきくと、韓国で事前に契約しておいたVPNが全然つながらなかったのだという。それでこちらの利用しているものを教えてほしいというので、良之助VPNだと応じる。しかし中国国内でほかのVPNサービスなしでこいつを一からインストールするのはけっこう難儀ではないか? (…)先生は料金のほうも気にしているようだった。一ヶ月の短期滞在ときいているし、それだったらほかのトライアル期間のあるVPNサービスを渡り歩くのがいいんじゃないか応じる。といってもこちらは英語圏VPNはここ数年まったく使っていないので、どれがもっとも接続安定しているのか知らないし、そもそも壁の内側で契約および設定可能であるのかどうかもわからない。日本語対応可でありかつ接続安定しているときくサービスでいえば、1coinVPNもあるなと思ったので名前をあげてみたところ、中国国内からでもアクセスできることが判明、それでこの問題は解決した。またなにか困ったことがあったらいつでも連絡してくださいと告げて通話終了。
  • 20時から「実弾(仮)」第五稿にとりかかる。構成を確認し、登場人物の年齢や服装や外見および時事ネタなどに矛盾点がないかチェックし、追加すべき情報をどのシーンに挿入するのが適切であるかについて思案する。
  • 途中、母からLINE通話。結核の件についてたずねられたので、問題なかったと応じる。(…)は元気にしている模様。介助グッズなしで散歩しているという。
  • 三年生の(…)さんから微信。「先生、お邪魔してすみません」「でも、もう耐えられないようです」「私は今、少し自分の気持ちを抑えられないです」といきなりくる。これはやばいとすぐにピンとくる。また手首を切るかもしれない、と。(…)さんが寮を出るきっかけになった意地悪なルームメイトから、今日直接、面と向かって悪口を言われたという。しかしなにも言い返すことができなかった。それから、いったいどういう状況であるのか詳細はわからないのだが、たぶんその話を(…)さんから聞いてということだと思う、当の(…)さんが(おそらく怒りや悲しみのあまり)目の前で卒倒したらしい。その(…)さんをおんぶして歩く女子学生の後ろ姿の写真も送られてきた。金の問題はあるかもしれないが、とりあえず両親に相談して、大学の外で生活することを考えなさいという。それは逃げるということになる、意地悪なルームメイトらの勝利ということになるというので、どうしてどいつもこいつもこんなにも逃走が下手くそなのだろうと思いつつ、同じ土俵に立って戦うのであれば勝利も敗北もあるかもしれないが、今回のケースはそうではない、逃げるのではなく相手にしないということなのだと噛み砕いて説明。
  • しかしそうした説明をしても響いているようには思えない。というかやりとりが全然噛み合わない。(…)さんはただただランダムに不満や怒りや悲しみを吐露するだけで、こちらの質問にすら答えてくれない。まるでバグったChatGPTと会話しているみたいだ。内心ちょっとイライラするというかもどかしくもなるのだが、とりあえず言いたいことを好きなだけぶちまけさせるべきだ、こういうときは树洞に徹するべきだと考え、そのような構えをとる。
  • (…)さんはアパートにもどった。(…)さんはいま外をひとりで歩いているという。門限まですでに30分を切っているというので、いまどこにいるのか? 間に合うのか? とたずねると、自分がどこにいるのかわからないという返事。いやそんなもん地図アプリでどうにでもなるやんけと思う。もしかしたらまたこちらの部屋に来ようとしているのかもしれない。しかし学生を部屋に泊めるのは禁止されているし、もし事が発覚したらこちらのみならず彼女も処分を受ける可能性がある(そして寮の門には監視カメラが仕掛けられている)。そういう事情を話したうえで、とりあえず今日は(…)さんのアパートに泊めさせてもらいなさいというと、ほかの住人がいるからそれもできないという。
  • そうこうするうちに門限間近になる。やりとりしながらどうしたもんかなと思案していたが、後味の悪いことになるのだけは勘弁してほしいし、わざわざ連絡をよこすということはつまりどうにかしてくれということなのだろうと思い込むことにして、じゃあいまから迎えにいきますと告げた。これでまた執筆する時間が奪われるんだと思いながら街着に着替えて外に出る。微信にデフォルトで存在する位置情報の機能を使っていまどこにいるか教えなさいというと、迷惑をかけたくないですという返事。もうかけているんだよ、ぼくはすでに外にいる、ここまできたら同じだからと受ける。
  • ケッタに乗ってとりあえず南門のほうに向かう。らちがあかないので電話する。なかなか出ない。ようやく出たと思ったら、「先生」と口にした途端号泣しはじめる。「もう死にたいです」と続いたので、あかんあかんやっぱり外出て正解やったわ! と思いつつ、なるべくゆっくりと落ち着いた、小学生相手に話しかけるようなです・ます体の口調で、いまどこにいるのかとたずねる。まだ(…)さんのアパートの近くにいるという。(…)さんのアパートは大学から少し遠い。つまり、いまから寮に向かっても門限までに間に合わないということだ。となると外泊するしかない。とりあえずそちらに行く、その後大学の近くにある安全なホテルまで送っていく、それでいいかとたずねると、その必要はないという。「ホテル」という言葉を聞いて、なんか妙な想像をしているんじゃないだろうなと思いつつ、もう一度噛み砕いて説明する。こちらの提案は伝わったが、先生に会いたくないですという。なんやそれ! ほななんで連絡よこしてん! と内心思っていると、いま私はきれいじゃないですというので、ちょっと笑ってしまった。そんなことは! クソほど! どうでもいい!
  • 南門の近くでケッタを止める。(…)さんはどうしても居場所を言わない。こちらが迎えにいく必要もないという。「死にたいです」と言われた相手を放っておくことはできない、放っておいた結果大変なことになってしまったこともある、だから一度会いましょう、顔を見るだけでいいですと言ったが、やはり頑なに拒否する。しばらく押し問答をくりかえす。ここで強引に出すぎるのもやっぱりよくないのかもしれない。いま近くにホテルはあるのかとたずねると、すぐ近くにあるというので、すでに23時をまわっているこの時間、知らない路地を女の子ひとりで歩くのは危ないから、とにかくホテルに入ってくれと伝える。それで部屋の写真を必ず送ってくれと続けると、了解の返事。それで通話終了。帰宅。
  • (…)さんから微信が届く。死にたい気持ちになったときに母親と元カレに連絡をとった、しかしどちらも自分のことをさほど気にかけてくれなかった、私の話に長々と付き合って気持ちを安定させてくれたのは先生だけだとか(元カレの連絡先結局削除しとらんのやんけ!)、卒倒した(…)さんはまるで死体のようだったとか、うつ病患者は最終的にそんなふうに肉体のコントロールまで失ってしまうのだろうかとか、どうしてじぶんはこんなにも弱いのかどうしていつもいじめられるのかとか、そういうことばかりまた一方的に送ってよこすだけで、こちらがときおりはさむ相槌や質問など存在しないかのようにとにかく吐き出し続ける。この意思疎通不可能な感じ、以前もどこかで苦々しい思いとともに体験したなと思う。それにくわえて言葉の壁も存在する。しんどい。こちらとしてはとにかくホテルに無事ついたという報告がほしいところ。それで、相手の言葉を辛抱強く受けとめつつも、頃合いを見てホテルにはもう到着したのかとたずねたのだが、「しばらく外にいたいです」とのことで、おい! どうなっとんねん! しかしのちほどホテルの部屋の写真が届いた。ひと安心。
  • どっと疲れた。バッドなほうにもっていかれそうな危うい感じがあったので、そうしたムードを断ち切るために懸垂をした。その後はジャンプ+で無料公開されている『ONE PIECE』の頂上戦争編を読んで、朝方ようやく就寝。