20240306

「父さんは言っているよ、おれたちが大人になるころには、何もかも機械になっているって。仕事があるのは、こわれた機械の廃棄場だけになるだろうって。機械にできないことと言ったら、ふざけることだけだ。人間の使い道は、冗談を生かすことだけさ。」
トマス・ピンチョン/志村正雄訳『スロー・ラーナー』より「秘密のインテグレーション」 p.207)



 8時過ぎ起床。10時から一年生2班の日語会話(二)。出席をとるついでに他学部に移った学生の確認。K・SくんとR・Eさんのふたりはマルクス主義学院へ。K・Sくん、念願の転籍を果たすことができたようでなにより。S・Hさんは事前に本人から聞いていたとおり外国語学院の英語学科へ。結果、2班は合計27人になった模様。ほかの学院から移ってきた学生はいない。ま、処理水以降の学生やし、そうなるわなという感じ。初回授業なのでいつものようにお土産争奪戦をおこなう。先学期にくらべるとちょっと空気が重いかなという印象を受けた。R・Kさんがビンゴもパーセントクイズも全勝で、GODIVAをごっそりと持っていった。
 死ぬほど混雑しているキャンパスをケッタでのろのろ移動する。2コマ目終わりで食堂にむかうのは自殺行為であることを再確認。ゆえに昼飯は(…)でとることにしたのだが、その(…)までこれまで見たことのないほど混雑しておりなんでやねん。いつもはたとえじぶんひとりであってもテーブル席をひろびろと使って優雅に食事をとっているのだが、さすがにこれはあかんわとなってカウンター席に着席。そのカウンター席もしかし続々と埋まっていく。キャンペーンでも打っとんのけ? あとからやってきたおっさんがこちらのとなりの席につくなりフロアに普通に痰を吐くのを見て気が遠くなった。しかも注文した麺をテーブルに置いたままスツールには腰かけず、なぜか立ち食いそば屋スタイルで食いはじめる。前世でなにやらかしたらそんな行儀悪い人間に生まれるんや?
 帰宅して昼寝。その後、デスクに向かってきのうづけの記事の続き。18時をまわったところで四年生のR・MさんとC・Iさんから微信。いま先生の寮の前にいますよ、と。ちょっと待っててと返信し、身支度をすませてからおもてに出たものの、ふたりの姿は見当たらない。どうもこちらの返信に気づかず去ってしまったようす。それで部屋にもどったのだが、ほどなくして着信があり、いま「恋人の道」にいる、いまからもう一度先生の寮に向かうというので、了承。
 18時半にふたりと合流。しかしこちらは19時から(…)楼にあるホールで交流コンサートに参加することになっている。会場まで歩く。四年生はいま大学にいるのかとたずねると、ほとんどいないという返事。ふたりがいまいるのは土曜日の教員資格試験の準備をするためだという。
 (…)楼の入り口にLが立っている。どうやら外国人教師や留学生を入り口で迎える番をしているようす。ひとりなのかと学生ふたりの姿を見ながらいうので、彼女らとはたまたまそこで会っただけだと応じると、席の空きがふたつできた、だから彼女たちも希望するのであれば会場に入ることができるというので、じゃあせっかくだしという流れになった。しかしR・MさんにしてもC・Iさんにしても内心はけっこう微妙だったかもしれない。もともと交流コンサートにもさほど興味ないだろうし、資格試験の勉強をしたいというアレもあっただろうし。
 Lの指名を受けた女子学生がわれわれをホールまで案内してくれた。ホールに入ると、すぐに(…)大学の学生とうちの学生の姿が目につく。みんな二日酔いしていないか確認。大丈夫だという。会場にはCとAも来ていた。Lもいたし、驚いたことにS先生もいた(彼はこの手の行事に基本的に出席しない!)。留学生たちも続々とやってくる。タジキスタンのふたりから「こんにちは!」と声をかけられたので、「こんにちは」と返事する。
 日本語学科の学生と(…)大学の学生は例によってペアで着席している。三年生のK・Kさんのペアは卒業生のS・SさんそっくりのMさんであるが、彼女は二年生のC・Rくんとやたらと楽しそうに話しこんでいる。そのふたりのほうを指差しながらK・Kさんが通路をはさんだ先にあるこちらの席に身を乗り出し、あのふたりは恋人になるかもしれませんと言う。
 Lがやってくる。席をひとつずつ詰めてほしいというので移動する。通路側にL、その右にこちら、C・Iさん、R・Mさんが続く格好。われわれの席はちょうど中央付近に位置していたが、右端のほうにはCとAが座っている。ほかの外教の姿は見当たらなかった。グループチャット上ではTとHが参加を表明していたが、会場内でその姿を目にした記憶はない。Lからはコンサートのあとにステージで花束をいっしょに渡さないかと誘われたが、じぶんはときどきtypical Japaneseなんだ、shyだからできないと冗談半分で受けたところ、もしかしたらそれを真に受けたのかもしれない、ちょっとむすっとした表情になったようにみえた。花束をいっしょに渡す学生をひとり寄越してほしいというので、かたわらのC・Iさんにお願いした。通訳する必要はあるのかとたずねると、なにも話さないから必要ないとのこと。
 プログラムの印刷された紙はすでにない。だからどういう演目がどういう順番で演じられたのかはおぼえていない。白いドレスを着用した司会の女子学生がまずあいさつをし、その後メゾソプラノのH先生とピアノのU先生のふたりが出てきて前者が日本語であいさつ、それをP先生が中国語に通訳したのはおぼえている。最初のパフォーマンスは日本人教師ふたりによるクラシックの演目で、作曲家はもう忘れてしまったけれど、歌はイタリア語だったと思う。その後、U先生のソロで、これはたしかショパンじゃなかったか? 中国人学生および教員のパフォーマンスも複数あった。四人組による二胡の演奏。芸術学院の女性教員による古いポップスの歌唱。真っ白の衣装を身につけた男女混合学生による雷锋を讃える舞踏(スローガンみたいなセリフ付き)。それから(…)弁による伝統的な民謡。Lはこのパフォーマンス中、われわれから少し離れたところに座っている娘ふたりのほうを見るようにこちらをうながした。言われたとおりに見やると、娘ふたりはそろって前の座席の背もたれに両手をかけて身を乗り出すように夢中になっていた。Lはコンサートのあいだじゅうずっとちらちらとよそに目をやっていて落ち着きがなかったのだが、どうやら娘たちのようすが気にかかっていたらしいと合点がいった。それにくわえて、花束を渡しにいくタイミングを間違ってしまってはいけないというプレッシャーがあったのかもしれない、こちらの手にしているプログラムをしょっちゅうのぞきこんではいま何番目の演目であるかを気にしているようであり、ちょっと度を越しているようにもおもわれるその確認のしつこさに、やっぱり彼女は心配性が過ぎているというか強迫性障害っぽいところがあるよなとあらためて思った。あと、ホールのエアコンが全然きいておらず、そのせいでステージの女性陣ふたり——当然ドレスを着用している——に申し訳ないと口にしていたし、自身もまたパンツスーツのももから膝にかけてを寒そうに何度もこすっていたので、途中でこちらのPコートをブランケット代わりに貸してやった。

 プログラム用紙が見つかった。その内容を全部ここにひくのはめんどうなのでひかえるが、H先生とU先生がコンビでやったのはヘンデルとマスカーニとヴェルディーだった。で、クラシカルなこの三曲とは別に、これは交流会用のプログラムなのだろうが、「さくらさくら」「曼珠沙華」(山田耕作作曲・北原白秋作詞)「十五夜お月さん」「うみ」が披露された。H先生の歌唱はもちろんクラシックのそれであるので、大半の学生らにとっては退屈なんだろうなという気はしたし(うちの学生で日頃クラシックをきいている子なんて絶対にいない)、後ろの列に座っていた留学生らも演奏中にもかかわらずぺちゃくちゃ英語で私語を叩いており、曲の転換ごとに演者はいったんステージ脇にひきさがるわけだが、その際にI hope they will not come againと口にするのがきこえてくるなどして、聴取の態度そのものが完全に終わっていて申し訳ない気持ちにもなったのだが、そんななか、ただひとりLだけが「曼珠沙華」の終了後に、これはとても悲しい歌だ、ちょっと泣きそうになってしまったと目をうるませていて、え! マジで! あなたそんなタイプだったの! とびっくりした。聴取の態度でもうひとつ気になったのが、観客席にいた大半の学生がうちの芸術学院所属だったからだと思うのだが、じぶんたちの教員や同級生が出演したステージのあとのみクソデカい歓声をあげたり指笛を鳴らしたりしていて、これもたぶんほかの国だったら考えられないよな、ふつうはゲストに対する配慮からむしろそっちの顔をたてることを考えるよな、こういうところなんだよなと思ってしまった。とはいえ、最後の最後はアンコールとして、H先生が中国人教諭といっしょになって中国の伝統的な歌を歌唱し、それには会場のみんながめちゃくちゃ興奮していた。結局、みんな耳になじみのある曲をもとめていたということなのかもしれない。
 コンサート終了後、関係者各位がステージにあがって記念撮影。こちらはあがらず観客席から様子を見守った。Mさんとお酒好きサバサバ女子のふたりはステージ衣装を身につけた芸術学院の女子学生といっしょに写真を撮っていた。ハグしてくれた! うれしい! とMさんはのちほどよろこんでいた。前日の夕食会のときもそう思ったが、この子は外国向きだな、全然臆さないんだなと感心した。
 そのまま日中の学生らで駄弁る流れに。P先生はH先生やU先生といっしょに夕食に行くらしかった(もしかしたらまた関係者での食事会があったのかもしれない)。日本人学生らはしかし同行を拒んだ。昼間訪問先の幼稚園で園児らがこしらえてくれた食事をたくさん食ったために腹いっぱいなのだという。となるとこのあとはどういう予定になるのかとたずねると、22時までにホテルにもどればいいということになっているとFくんじゃないほうの男子学生がいった。だったらいっしょに后街でもぶらぶらするのもいいんじゃないかと提案。学生らはこちらの責任であずかりますよと告げるとP先生も了承。アニメで簡単な日本語をおぼえたらしい芸術学院の男子学生がひとりやってきて、こんにちは! と突然言った。
 ホールの外に出る。四年生のR・MさんとC・Iさんのふたりは図書館で勉強するといって去る。三年生のR・Sさんもやはり去る。彼女も土曜日に教師の資格試験を受ける予定らしい。ペアの子を置いてけぼりにしていくことに罪悪感をおぼえているようすだった。C・Sさんもまた資格試験を受ける予定であるが、すでに準備万端であるのか、あるいはただみんなで駄弁るのが楽しくてたまらないのか、じぶんは図書館には行かないと行った。S・Sさんは彼氏が待っているからという理由で去った。
 残った面々で地下道を抜けて老校区に移動。ここが外国語学院です、ボロボロです、最悪です、クソです、と紹介。そのまま病院を抜けて道路沿いに出て、このセブンイレブンは去年できたばかりですと説明したのち、后街のほうに移動する。屋台がたくさん並んでいるのでそのひとつひとつを説明していると、C・SさんやS・Sくんから先生ガイドみたいですねと笑われた。MさんはC・Rくんとデートモード。MさんのペアであるK・Kさんはふたりのサポートをしつつほかの女子の相手もする。C・Rくんの本来のペアであったFくんじゃないほうの男子学生は浮動気味。FくんのほうはペアであるS・Sくんとそろってこちらの近い位置をキープ。C・Sさんのペアはおそらくサバサバ酒好き女子で、ふたりは基本的にそろって行動。で、R・Sさんのペアである三年生のR・Kさんに雰囲気の似た女子と、S・Sさんのペアであるめがねをかけた女子(R・MさんとC・Iさんのふたりがあの女の子はきれいですと口にしていた)があまったので、このふたりもこちらがカバーするかたちに(ちなみにこのふたりだけは外出中マスクを装着していた)。列の先頭を歩きながら后街を端から端まで移動する。臭豆腐、亀の丸焼き、おでん、鶏の手首など、いろいろ見てまわる。歩行者の数と、路駐している車の数と、クソせまくるしい道路をそれでも通り抜けようとする車の無茶と、クラクションを鳴らしまくりながら蛇行運転するバイクと、そういうもろもろにマスクの女子ふたりはいちいちびっくりしていたし、ときおり小さな悲鳴をあげていた。
 后街の端にたどりついたところでひきかえす。そうして往路に目星をつけていた屋台や店に立ち寄る。臭豆腐を買った。こちらとFくんとサバサバ女子とMさんが食った。Fくんじゃないほうの男子はすでに別の場所で食ったという。サバサバ女子とMさんは二個ずつ食っていた。好奇心が強い。MさんはほかにK・Kさんにすすめられるがまま東北料理の饼も買っていたし、ミルクティーも買っていたし、とにかくずっと好奇心のおもむくままに食べ歩きしている感じで、すげえなァ、こういうタイプがいちばん強いよなァとここでも感心した。サバサバ女子が飲み物がほしいというので、瑞幸咖啡に立ち寄ったが、すでに店じまい中だった。近くにあるミルクティー店で代わりに飲み物を購入。Fくんはマルベリーのジュース。サバサバ女子はタピオカ入りのミルクティー。R・Kさんに似た女子はもっともオーソドックスなミルクティー
 注文したものができあがるまでけっこう時間を要した。待ち時間のあいだR・Kさんに似た女子と立ち話。先生は聞き取りがすごくいいとR・Sさんから聞きましたというので、最初は彼女らの不完全な日本語を補足して理解するこちらの特能のことを言っているのかと思ったが、そうではなかった、中国語のことだった。どうやって勉強しているんですかというので、じぶんは実際英語も中国語もリスニングがそれほどよくない、ただどちらかといえば中国語のほうが勉強時間の割にいいかもしれない、それはたぶん発音練習をしっかりした経験があるからだと思う、発音はそのままリスニング能力にもダイレクトにかかわってくるのでどんな言語であれども習得を試みるのであればしっかりやっておいたほうがいいという話はよく聞くと受ける。中国語に興味があるのかとたずねると肯定の返事。半年だったか一年だったか独学しているという。もともと大学で英語と中国語とポルトガルの三つから一つを選ぶにあたって中国語を選んだのであるが選考から漏れてしまった、それで独学で勉強をはじめたという。ちょっと意外だった。それだったら単語や文法レベルでいえばこちらよりもよほどしっかり中国語が身についているのではないか。R・Kさんに似た彼女にしてもめがねの彼女にしても女性陣のなかでは比較的おとなしめであるのだが、R・Kさんに似た彼女は特にそうで、かなりシャイであることが接していてわかるのだが、それでもおなじ日本人であるしこのキャラであるのでほかの面々よりは話しかけやすいという印象をもたれたのかもしれない、小さな声でいろいろ語る彼女の言葉に耳をかたむける時間がしばらく続いたのだが、ミルクティーを打包して帰路についたときだったか、軒を連ねる店の照明をあびる彼女の横顔が酒でも飲んだみたいに真っ赤にそまっていることにふと気づき、そして気づいてみればそれが一度目ではなくこの日何度目かの印象——あれ? やたら顔が赤いな?——であることにもやはりまた思いいたり、それで、あ、この子はもしかしたら赤面症なのかもしれない、それでマスクをずっとつけているのかもしれないと察した。
 帰路、S・Sさんが彼氏を連れてわれわれのほうに合流するという連絡があったので、よっしゃ! みんな無視な! 無視! と口裏を合わせておいたのだが(サバサバの彼女から最低の先生やないですかと突っ込まれた)、いざあらわれたS・Sさんはペアのめがねの彼女にプレゼントすべく買ったらしい一輪の花を手にしており、それでさっそく協定が破られた。めがねの彼女は感動していた。中国人、ものすごくカジュアルに花をプレゼントする習慣があり、あれはすごくいいなと思う。
 老校区にもどる。老校区に男子寮があるS・Sくんと別れる。そのまま地下道を抜けて新校区へ。女子寮前で三年生のC・Rさんとばったり遭遇。彼女もまた土曜日の教員資格試験にそなえて勉強中である。K・KさんとS・SさんとC・Sさんとはここでお別れ。そのまま第四食堂付近の男子寮へ。ここでC・Rくんとお別れ。Mさんと最後にやりとりを交わしているその背後に忍び寄り、耳元で「愛していると言え! 愛していると言え!」とけしかける。
 残る帰路は日本人だけとなる。関西訛りがはじまる。MさんとC・Rくんの関係についてみんなでワイワイ語る。Fくんじゃないほうの彼が、自分はもともとC・Rくんとペアだったのに自然とそれが解散されたと冗談めかして言う。C・Rくんは元々全然勉強熱心ではない、でもこれがきっかけとなって日本語学習に熱が入る可能性がある、いつもは教室の最後尾に着席しているが次回の授業は最前列に着席するかもしれないというと、みんな笑った。C・RくんはFくんじゃないほうの彼のことをときどき「お前」と呼んでいたらしい。ごめん、悪気はないんよ、たぶんアニメの影響なんさと釈明すると、だいじょうぶです、わかりますという返事。それで卒業生のY・Sくんがかつて一年生だったとき、くるぶしソックスをはいているこちらの足元を指さして、「先生、お前の靴下、変!」と口にした笑撃の一幕であったり、(…)大学のC・Rさんが留学先の筑波大学で目撃した、アニメで日本語を覚えた西洋人留学生がキャンパスでばったり出くわした教授に対して「貴様!」と呼びかけたという伝説の事件を伝えたりした。学生たちはみんなゲラゲラ笑っていた。めがねの彼女なんて笑いすぎて涙が出てきたといった。
 でもまあ外国語学習の最大のモチベーションは恋やからねというと、先生もイギリス人と付き合ってたんでしょとMさんが言った。K・Kさんから聞いたというので、あいつらなんでもかんでもしゃべりよるなと言うと、先生のこともわたしらどんなひとって聞いたらハゲハゲってみんな言うてましたというので、ほかにもっと言うことあるやろ! と吠えると、やっぱりみんな笑った。そこから問われるがままに、ここに来る前までどんな生活をしていたか、すなわち、週休(ほぼ)五日制の生活をおよそ10年続けていたこと、フロント企業のラブホで前科者らといっしょに働いていたこと、AV店で働いていたことなど、かつてのぎりぎり生活を要約して話した。ま、人生なっとかなるもんよ、と適当にしめると、先生はちょっと神に愛されすぎですよという反応があり、まあたしかにそう感じることもなくはないけどと思いつつも、逆にいえば、神が手助けをせざるをえないぎりぎりまでねばるからこその奇跡であるよなとも思った。Mさんは今回の中国旅行で海外生活に俄然興味をもったらしく、将来中国に住むのも悪くないよなと考えるにいたったようす。
 ホテルに到着。最後はやっぱりちゃんと責任者らしくしないといけないと思ったので、うちの学生たちが社交辞令でもなんでもなく本当に日本人学生との交流を楽しんでいること、お土産をたくさんもらったにもかかわらずじぶんらは何もお返しすることができなかったことを本気で申し訳なく思っていること、できることなら帰国後も微信を通じて交流をしてやってほしいことを伝えてあたまを下げた。Fくんじゃないほうの彼は昨日われわれがホテルを出て路上を歩いているところをホテルの窓から目にしたというのだが、そのとき学生たちが本当にわいわいきゃーきゃーしているようにみえたと言った。まさにそのとおりだ。特にK・Kさんの喜びようったらなかった、中学一年生のときからずっと日本語を勉強し続けてきて、とうとう同世代の日本人女子と友人になることができたのだ。うれしくないわけがない。翌日はもともと(…)をおとずれる予定だったが、旅費だの入場料だのもろもろをふくめるとひとり当たり日本円にして約二万円かかる。それで学生たちは計画をキャンセルすることにしたという。となると明日の午後はまるっと空く可能性もあるとのことで、だったらうちの学生たちも授業が夕方には終わるはずであるし、みんなで歩行街でもぶらぶらしようかと提案した。
 学生らと別れる。S・Sくんから日本の学生をホテルに送り届けたら連絡してくださいとたのまれていたので微信を送る。R・Sさんから今日はありがとうございましたと届いていたのでそれにも返信。帰宅後はすぐにチェンマイのシャワーを浴び、ストレッチをし、今日づけの記事のメモ書きだけ残しておいてから、0時をまわったところで寝床に移動した。明日は早八なのだ。