労働。従業員全員が深々とそろって昼寝をした30分がいとおしい。帰宅後（…）ともめる。truthという語をfactの意味合いで用いていた彼女のいわんとするところ（こちらとの関係をロンドンの彼氏に告げたものかどうかという戸惑い）がこちらの解釈（まーた実存スピリチュアリストの独白がはじまったよ……）に噛み合わなかったのがひとまずの原因であるといえる一悶着。またもや部屋を出て行く出て行かないの大喧嘩となったが、深夜まで及ぶぶっちゃけトークの果てに和解し、男女としてではなく、一個人としてはっきりとなにかをわかちあい距離をちぢめた夜も、この先にはじまりが控えているのかそれとも最果てに到着してしまったのかわからぬ不明瞭さをその懐にほのぐらく抱えこんで見通せない。これまで彼氏および彼女の絶えることのなかった彼女であるが、必ずといっていいほど浮気してしまうおのれの性について嘆くその話をほりさげて聞いていくうちにただのキスやハグ止まりでそれ以上さきに踏み込んだことはいちどたりともないという罪責感の深刻さにまったくもってつりあわぬ事実が判明して大笑いした。わたしはいつも雰囲気にのまれてしまうの、完璧な瞬間に弱いのよ、完璧な音楽、完璧な景色、完璧なムード、それだけでもうだめになっちゃうの、そうして後になって落ち込むわけ。やっときみのことがわかった気がする、きみはとてもロマンティックなんだ。たぶんそうね。それにしても奇妙な話だ、きみたちヨーロピアンはあいさつがわりにハグやキスをするのに。そういうあいさつがわりのものとは親密さが違うのよ、あなただってあのときわかったでしょ。きみはちょっと日本人みたいだ。あなたこそヨーロピアンみたいよ。じぶんのやりたいことをやるというのがおれのモットーだから、もっともおれの場合はsexよりもwritingが上位にくるわけだけど。わたしはそんなふうにわりきれないわ。こうやって話しているとおれってものすごく単純な人間だっていう気がするよ。ねえ、個人的な質問をしてもいい？いってみなよ。あなたはインターネットでポルノを観ることがある？ときどき。どうして？性欲を解消するため、わかるだろ、じぶんで処理したほうが手っ取り早いんだよ、町に出てどっかの誰かにお願いするよりさ。どっかの誰かにお願い！時間の節約だよ、おれには時間が必要なんだ。書くためのね。そう、書くための。もうひとつ質問、ブッディズムのモンクたちもじぶんでやってると思う？当然、なんだったらあいつら毎日二回ずつやってるさ、きみも知ってるだろうけれど仏教徒は女性とのセックスが禁止されていた、一種の法みたいなもんだ、ところが彼らはその法をこう解釈したわけだ、女がだめなら男と関係を持てばいいと、そうして実際にそうしていた、彼らにも性欲はある。今でもそうなのかしら？いまはどうだか知れない、けどかつての日本では寺の少年を相手どって僧侶は憂さ晴らししていたらしいよ。ねえ、それって変態よ。
