20231222

 人間の心的プロセスは、生物学的本能を大きく超えて、自我という自分を支える恒常的な心的装置を生み出した。それは、自殺も可能な生物学的現実を超える力や、現実にはないものを生み出す力をもつ。それが可能となったのは、現実から自律した言語を生み出したからである。
 形式的合理性や、計算と推論の内部だけで人間を考えると、この幻想性や想像力によって行為し、現実と自由に関与し、その結果生まれる創造性を無視することになる。
樫村愛子ネオリベラリズム精神分析――なぜ伝統や文化が求められるのか』より「第二章 再帰性のもつ問題」 p.101)


  • 10時前起床。(…)から日曜日のChristmas activityについてあらためて告知があったので返信。朝昼兼用で第五食堂の炒面を食したのち、きのうづけの記事の続きを書いて投稿。途中、三年生の(…)さんから微信。今日は冬至だという。冬至には羊肉の鍋を食べる習慣があると続く。要するにメシの誘いなんだろうなと思っていると、今日空いていますかの確認もなく、鍋と餃子のどちらがいいですかとあったので、いくらなんでも強引すぎるわと内心苦笑しながら、今日はすでに先約があるので別の機会にお願いしますと返信。(…)さん、前回うちにやってきたときに今日がもう最後ですとしつこく宣言していたにもかかわらず、結局やっぱりこうなる(あの宣言はこちらがそれを否定するのを期待してのものだったんだろうが!)。最近学生からの誘いがまた増えてきているので、計画がある場合はなるべくはやめに連絡をくださいとも補足しておく。言葉通りの意味ももちろんあるが、それ以上に彼女が必要以上にこちらに転移しすぎないように牽制するための言葉でもある(彼女がこちらにとって特別な学生ではなく、one of themであることを遠回しに印象づける)。
  • 日差しの出ている昼日中だったので、パソコンをもって阳台に移動し、ウェブ各所を巡回。一年前の記事も読み返す。そのまま今日づけの記事もここまで書くと、時刻は14時をまわっていた。今日は15時から二年生と三年生の日語会話(一)期末試験。そして18時からは一年生と二年生の学習委員といっしょに火鍋。明日はいまのところ予定はないが、明後日は外教のChristmas activityで、明々後日は二年生の三人娘とクリスマス会。せわしなくなってきた。
  • 三年生の(…)さんに連絡。彼女と(…)さんは一年生1班の日語会話(一)に受講登録してあるという話だったが、くだんの授業は月曜日の10時開始である。その時間帯にほかの授業は入っていないだろうかと確認したところ、ふだん別の授業があるという返信がすぐに届いたので、だったら1班のほうに受講登録しているというのは辻褄が合わないのではないか、火曜日14時半開始の2班のほうに受講登録してあることになるのではないかと疑義を呈したのだが、授業が重複することはままあるという返信。知らなかった。その場合どうやって処理するのだろう。
  • 15時前に部屋を出る。(…)さんにもらったオレンジ、絶対に食べきれないので、袋に10個ほど詰めて管理人の(…)にお裾分けすることにした。(…)はいつものようにとなりの棟の一階入り口に置かれた机と椅子についていたが(こんな寒いときくらい部屋の中にいればいいのにと思うのだが、大学側がそれを許さないのだろうか?)、今日はめずらしく机につっぷして居眠りしていた。起こすのもちょっと悪いが、声をかけて、片言の中国語で、学生にオレンジをたくさんもらった、でもじぶんひとりには多すぎる、だからあなたの家族に差し上げる、と告げた。
  • ケッタに乗って外国語学院に向かう。湖沿いの道路を走っていると、侵入禁止を意味するものらしいテープがいたるところに張りめぐらされている。赤色のテントもぽつりぽつりと設置されている。週末にイベントでもあるんだろうかと思っていると、看板が目につく。大学院試験会場の案内。今年はうちの大学が大学院試験の会場になったということなんだろうか? 少なくとも去年と一昨年はうちの大学は試験会場ではなかった、学生たちはみんな前日から会場最寄りのホテルに宿泊していたおぼえがあるのだが。そもそも仮にうちが試験会場だったとして、それが同じ市内にある複数の会場のうちのひとつであるのか、それともただひとつの会場であるのか、それすらこちらはよく知らない。
  • 国語学院に到着。三年生の(…)さんと(…)さんが先着している。ひさしぶりに向かい合ってみて思ったのだが、ふたりともかなり背が高い。平均身長の中国でもかなり低い(…)省出身であるはずだが、172センチのこちらとほとんど変わらないか、もしかしたらちょっと大きいくらいかもしれない。二年生の(…)さんと(…)くんもやってくる。(…)さんは完全に寝巻き。上下セットアップのもこもこの着ぐるみみたいな服を来ている。B101の教室があいていたのでそこに入る。教卓のパソコンの電源をオンにしてUSBメモリをさしこんだところで、試験で使うカレンダーの画像をインポートし忘れていることに気づいたが、スマホで代用できるので問題なし。教学手冊に四人の名前と学籍番号を書いてもらったのち、テスト開始。(…)さん、(…)くん、(…)さん、(…)さんの順番でやる。曜日と日付の問題。採点基準をまだこしらえていないのでアレだが、まあ全員「優」にしても問題ない出来栄え。とくによかったのは(…)くん。(…)さんは微妙にあやしかった。
  • 帰宅。阳台で15時半から「実弾(仮)」第五稿を執筆開始するも、「(…)」上にて二年生の(…)さんから火鍋の具材をどうするかという質問が届いたので、彼女が送ってくれたメニューの画像をながめながら各自リクエストを述べたり、その流れでいろいろ雑談したりすることになり、執筆にはろくに集中できず。
  • 17時半になったところで中断して寮を出たのだが、グループチャットにて(…)さんが食材のそろいつつあるテーブルの写真を投稿していたので、え? となった。18時に女子寮前で待ち合わせではなかったかと確認したところ、予約するためにはやめに店に来たのだとあったので、ええー! となった。こちらはてっきり予約はアプリでできるものだと思っていたのだが、のちほど確認したところによると、アプリでの予約であるといろいろ制限が発生するらしい。予約をお願いしたのはこちらであるので、これについては本当に死ぬほど申し訳なかった。彼女ひとりだけ店に先行させたうえ、一時間も待たせてしまったことになるのだ。マジであせった。
  • 女子寮前で一年生の(…)さんと(…)さんと合流。南門に向かう。(…)さんは体育のテストが終わったところ。結果は86点。異なる教員の体育のテストを受けた(…)さんは85点。のちほど確認したところによれば、(…)さんもまた似たような点数だったらしい。たぶん可もなければ不可もないスコアだ。ちなみに二年生の(…)さんは(…)さんとおなじく体育ではテニスを選択しているのだが、(…)さんがルームメイトといっしょにテスト前に必死で練習して獲得した80点台半ばというスコアを大幅に上回る90点台のスコアをなんの練習もなく獲得したという話もあとできいた。(…)さん、東北人であるのでこちらよりも背が高いし、というかたぶん肩幅もこちらよりも広いので、そりゃ南方人のなかでもさらに小柄な(…)さん(身長150センチないかもしれない!)とはフィジカルが違うわな。
  • 南門に出たところでタクシーがなかなかつかまらなかった。週末だからかもしれない。ようやく滴滴で呼び寄せることに成功した一台に乗りこむも、運転手のおっちゃんもひどい堵车(du3che1)だとややイライラしているようす。週末の退勤ラッシュ時であることにくわえて、いま(…)に香港の有名な歌手がおとずれていることも影響しているという。おっちゃんは渋滞を切り抜けるために、道路端にある本来は車が通行してはいけない歩行者用のエリアを突っ走ってその先端まで移動し、そこから無理やり車体のあたまを渋滞中の車線のなかに突っ込んで割り込むという、周囲の顰蹙を買いまくるに違いない完璧なマナー違反をけらけら笑いながら犯した。
  • 一年生ふたりはさすがに中国語で会話している時間のほうが長かった。以前(…)さんと(…)さんと(…)さんと出かけたときは、(…)さんと(…)さんのふたりが日本語はさっぱりであるという状況を受けてだろう、(…)さんがものすごくがんばってくれてほぼずっと日本語で会話していたわけだが、今日は高校時代から日本語を勉強しているという(…)さんがかたわらにいたからだろうか、それでずっとひかえめになっているという印象を受けた。これは仕方ない。こういう現象はおなじみだ。大半の学生は日本語能力がじぶんよりも高い人間がそばにいると、だいたい口を閉ざしてしまうのだ、中国語のほうにひきこもってしまうのだ。もしかしたらこれも一種の面子にかかわる現象なのかもしれない。
  • それでも車内ではときおり日本語で言葉を交わした。運転手のおっちゃんが、おまえたちが話しているのは日本語だろうといった。どうしてわかったのかと(…)さんがたずねると、助手席に座ったこちらの「味道」だといって笑うので、あ、味道って味とかにおいのほかに「雰囲気」みたいな意味合いもあるのかと察した。日本でも車は多いだろうというので、中国にくらべると少ないと思う、はじめて(…)をおとずれたときはびっくりした、車も多いし運転も荒いしと応じた。
  • 友阿に到着。一年生ふたりははじめておとずれるという。これものちほど(…)さんからきいたのだが、友阿は万达にくらべるともうすこし高級路線らしい。たしかにテナントとして入っている服屋のなかには(万达とはちがって)こちらでも名前の知っている有名ブランドがちらほらある。だから学生らが遊ぶのであれば万达のほうがずっといいとのこと。五階まで継ぎ目なしで直行するおそろしいエスカレーターで移動。海底捞があるのは七階なのでエスカレーターを乗り継ぐ。店の前に到着したところで、入り口にいるスタッフに予約しているものだがと伝える。予約者の電話番号を教えてほしいとスタッフがいうので、その場で(…)さんに連絡。テーブル番号を伝えればオッケーらしいので、教えられた番号をそのままスタッフに伝える。そして中へ。店のなかはほぼ満席。四人がけの席に(…)さんがひとりちょこんと座っていたので、ほんとうにごめん!!!! と開口一番謝る。
  • (…)さんとこちらが並んで座る。テーブルをはさんで一年生のふたりが並んで座る。放っておけば自然と会話をはじめるタイプの学生らではおそらくないので、こちらが司会役として一年生と二年生の名前と出身地を紹介。女性スタッフからエプロンとあたたかいおしぼりをもらう。こちらが外国人であることに気づいた女性スタッフがどこの人間だというのに学生たちが日本だと応じると、Japanese! となぜか英語で反応。Welcome to China! と続いたのにThank you! とこちらも英語で受ける。海底捞といえば高品質サービスが売りで大人気店になったわけだが、実際ここのホールスタッフはかなりいそがしそう。各テーブルを自発的にまわってそのつど足りないものを補充しなければならないし、バースデーイベントが発生するたびに歌をうたってダンスしてケーキを運ぶ必要もある。(…)さんによれば、国慶節期間中に海底捞でアルバイトをすれば日給300元らしい。これは同業種のほかのバイト代にくらべてもかなり割がいい。一年生ふたりもびっくりしていた。来年の国慶節ぼくもバイトしようかなというと、みんな笑った。
  • 食後ほどなくして女性スタッフがわれわれのところにやってきて、もうすぐ「表演」がはじまるといった。「变面」のパフォーマンス。正直よそで見たことがあるのでどうでもよかったのだが、たぶんこちらのことを観光客だと思ったのだろうスタッフがわざわざ知らせにやってきてくれたのを無碍にするのもアレなので、学生らとそろって四人ぞろぞろとフロアを移動し、「表演」中の一画に移動することに。「变面」の装束に身を包んでいる人間が店内の通路にひとりいる。そこで伝統的な舞踏をするのかと思いきや案外そうでもないというか、なんとなくクオリティの低いことがわかるくねくねダンスをその場でちょっとだけ演じる。「变面」もない。ただフロアからはける直前に、女性スタッフから耳打ちを受けたあとだったが、こちらのほうになにかをぽいっと放り投げてみせた。受けそびれたそいつを拾いなおす。春節の時期にあちこちで見かける赤い飾り紐。先端にはペンダントトップみたいにして「变面」のブローチみたいなのがついている。中国结と学生らが口にする。この飾り紐、そんな名前だったのか!
  • 席にもどる。中国结はリュックサックに結びつけておくことに。パフォーマンスといえば、麺の生地を縄跳びや鞭みたいにして食卓のそばでびゅんびゅんやってくれるやつもひさしぶりに見た(そしてこの麺がまた美味いのだ!)。誕生日パフォーマンスも食事中に三回か四回は見た。(…)さんは以前(…)さんたちと海底捞に来たとき、スタッフに頼まれてほかの席にいる客のために誕生日パフォーマンスをしたことがあるという。お礼としておもちゃをもらったとのこと。
  • その(…)さん、もしかしたらこちらがこれまでに付き合ったことのある(…)人のなかでいちばん辛いものに耐性がある人間かもしれない。食事をはじめる前に調味料やタレなどを小皿に自由にブレンドするわけだが、唐辛子やそれに準ずる辛味調味料をガンガンぶちこむ学生たちの姿にはこちらは慣れている、しかし(…)さんの場合はそのケタが全然違った、一年生のふたりも辛いものが大好きであるのだがそのふたりが軽めにひいてしまうくらい大量の唐辛子を(…)さんは小皿にぶちこんでいた。食事の後半戦も一年生のふたりが辛いものにすこし飽きて唐辛子スープからこちらが希望した三鮮スープに浮気するいっぽう、(…)さんは最後の最後まで唐辛子スープで肉だの野菜だのを食っておりしかも汗ひとつかかない。嘘やろと思った。きみはぼくがこれまでに会ったことのある学生でいちばん辛いのに強いかもしれないと告げると、実はわたしもじぶんより辛いのに強いひとを見たことがありませんという返事。おまえがナンバーワンだ。
  • 今日いた三人のなかでは、(…)さんと(…)さんはアニメ好き。一方、(…)さんは実写ドラマのほうが好き。なにをみているのとたずねると、中国のドラマのほかに『リーガルハイ』をみているとの返事。学生からたびたび名前をきく日本のドラマだ。
  • 海底捞では無料ネイルアートのサービスもある。(…)さんと(…)さんは万达にある店ですでにきれいにしてもらっていたが、(…)さんはすっぴん(?)。だったらぼくといっしょにしてもらおうかともちかける。学生らがびっくりするので、ぼくも一度爪を白黒にしてもらいたかったんだよと受ける。しかし(…)さんが店員を呼び寄せてネイルの予約をとろうとしたところ、まさかの40人待ち。さすがにあきらめた。二年生の(…)さんのルームメイトにはネイルアートをほどこすのがとても上手な女子学生がいて、彼女は小遣い稼ぎも兼ねて学生間で依頼を受けつけているという。(…)さんはルームメイトの特権としてしょっちゅうあたらしいネイルをしており、(…)さんはそれがたいそううらやましいといった。
  • 以前はそんなサービスなかったと思うのだが、客ひとりにつき2枚までスマホの中の画像を印刷してくれるサービスもあるという。食事前に(…)さんのスマホをスタッフに渡して写真を撮ってもらっていたのでそれを印刷することに。それで食後席をたって会計をすませ(学生割引を利用したがそれでも300元以上だった)、印刷機のあるほうのフロアに移動した。待合フロアには待ち時間を潰すためのボードゲームが置かれたテーブルや椅子が複数あった。ネイルをしてもらうためのカウンターもそこにあったが、そのカウンターに二年生の(…)さんがいた。のみならず、(…)さん、(…)さん、(…)さんもいた。ええー! となった。(…)さんが明後日誕生日なので、みんなで火鍋を食べに来たのだという。食後はネイルの順番待ちで二時間ほどここで過ごしていたというので、さすがにちょっと笑った。待合室には当然ほかの客もたくさんいたわけだが、この瞬間、中にいる人間のおよそ三分の一が日本語で話しはじめるというシチュエーションが発生したため、ほかの客がものめずらしげにわれわれのほうに近づいてきたりした。(…)さん、(…)さん、(…)さん、(…)さんの四人のなかでは、(…)さんだけ別の部屋の住人。三人のルームメイトである(…)さん、(…)さん、(…)さん、(…)さんの四人は同行していないようす。(…)さんは(…)くんとデートしているのだろうが、ほかの三人がいないというのはやっぱりおなじ部屋の仲間であるとはいえ、関係があまりよくないのだろう(そしてその裂け目の中心にいるのが、こちらの予想ではおそらく(…)さんなのだ)。
  • 印刷機はちょっと証明写真の撮影機をおもわせるもの。ディスプレイに表示されているQRコード微信で読み込み、印刷する画像をアップロードするだけ。われわれ四人の写真を印刷したものは(…)さんが一枚くれたので、こちらはスマホに入っていたゴダールラカンポートレートを印刷することに。お守りとして壁にでも貼っておこう。(…)さんはオタクらしく『HUNTER×HUNTER』の同人イラストを二枚印刷していた。
  • 二年生らと別れて店を出る。(…)さんの希望で友阿の店内を冷やかすことに。金魚すくいのプールに巨大な鯉がうじゃうじゃひしめいているのを見つける。金を払って餌を与えることができるという子ども向けのサービス。ほかにも陶芸教室、子ども用のケーキ調理教室、ゲーセンなどをのぞく。クレーンゲームの景品のなかに(…)さんの大好きな『NARUTO』のフィギュアがあったので教える。それから一階にある輸入雑貨および輸入食品を多く扱っている店ものぞく。以前四年生たちといっしょにおとずれたばかりだが、日本製の商品も多くとりあつかっているので、そのあたりがけっこう会話のタネになるのだ。賞味期限の近いジュースだの酒だのカップラーメンだのスナックだのが陳列されている一画もある。(…)さんはそこでほろよいを買った。以前(…)先生がおすすめしていたという。(…)さんは『NARUTO』のカップ麺。ふたりを置いて(…)さんとしばらくルームフレグランスのコーナーをひやかしていたのだが、あらためて値引きコーナーにもどってみると、いつのまにかふたりそろって両手で抱えるほど大量の商品を手にしていて、これには大笑いした。商品のなかには半値以下になっているものもある。それでふだんはなかなか買うことのできない割高な輸入品をまとめて買おうというあたまになったらしかった。
  • タクシーで大学にもどる。南門から歩く。例年大学院試験はクリスマスだったと思うのだが、今年はいつからなのだろうかとたずねると、スマホでちゃちゃっと調べてくれた(…)さんが明日から三日間ですという。二日間ではないのか。きみたちは将来大学院に進学しますかとたずねると、(…)さんはI don’t knowという返事。(…)さんは進学したいという返事。(…)さんはたぶんという返事。日本の大学院に行きたいですと(…)さんがいうので、でもその場合はきみの大好きな英語も勉強する必要があるかもしれないよと受けると、彼女と同様高校時代から日本語を学んでいる(…)さんもあたまを抱えてみせる。ただ専攻によっては英語の必要ないところもあるし、いろいろ調べてみたほうがいいでしょうと続ける。中国国内の大学院を受験する場合、英語の代わりに韓国語を選択することもできると(…)さんがいう。しかし韓国語での受験が許されている大学はとても少ない、五つほどしかないとのこと。インターンシップの話も出た。一年生のふたりはインターンシップの存在を知らなかったようす。(…)さんのクラスメイトだったら(…)くんと(…)くんと(…)くんと(…)さんと(…)さんの五人が来年参加するよと告げると、(…)さんは初耳であると驚いてみせた。コースは三ヶ月と六ヶ月があるが、参加するのであれば三ヶ月のほうがいいというと、でも三ヶ月だと稼ぐことのできるお金が少ないですと(…)さんがいうので、同僚に恵まれるかいなかで体験は全然変わってくる、たとえば三年生の女子学生がふたり今年の夏三ヶ月間長野にいたがふたりはすごく楽しかったと言っていた、しかしその一方で四年生の先輩は同僚のネパール人との関係があまりよくなかったり田舎の生活が楽しくなかったりしてはやく帰国したいといっている、だからもし楽しくない環境で働くことになった場合にそなえて三ヶ月コースにしておいたほうがいいと、もろもろ噛み砕いて説明した。日本で働くのであれば温泉旅館がいいと(…)さんはいった。(…)さんも同意してみせるので、インターンシップ先は基本的にホテルか温泉旅館だよと受けると、ふたりは興奮してきゃーきゃー騒いだ。
  • そういう話をしている最中、「先生!」と後ろから呼びかけられた。四年生の(…)さんと(…)さんだった。外でネイルアートをしてもらった帰り道だという。いま仕事しているのとたずねると、していないと(…)さん。ただ高校生相手に中国語を教える家庭教師はしているという。(…)さんからは以前微信で高校の日本語教師をしているという話をきいていた。いまも続けているとのこと。(…)さんは日本語能力はからきしであるけれども、だれもかれもが「社恐」を自称する現代中国においては異端ともいえるほどコミュニケーション能力の高い学生であり、笑い声が島崎和歌子に似ていて豪快で、そういう意味でこちらはけっこう好感をもっているし(輪のなかにこの子がひとりいるだけで空気が明るくなる)、現二年生が一年生だったときに班导を担当していたというのも納得というか、彼女以上に班导にふさわしい先輩学生もなかなか存在しないと思う。
  • 女子寮前で一同と別れる。帰路、四年生のグループチャットに激励のメッセージを送る。大学院試験を受けるひとはがんばってください、と。(…)さんから、わたしは試験を受けませんがどうもありがとうございます!!!! みたいな返信がすぐにあり、ちょっと笑ってしまった。シャワーを浴びる。(…)さんや(…)さんから今日撮影した写真が送られてきたのでしばしやりとり。それから一年生1班の(…)くんから微信が届いた。今日は冬至ですが餃子は食べましたか、と。学生らと火鍋を食べたと返信。それでいえば、冬至に食べるものは羊肉であると(…)さんからきいたばかりであるが、これは中国全土の文化では全然なく、今日いっしょに火鍋を食べた面々によるとたぶん東北の文化だろうとのことで、ふつうは冬至といえば餃子を食べるらしい。しかし(…)さんは東北人ではない、江西省の人間である。
  • 今日は『Clear Memory』(Bomis Prendin)と『When the Shadows Felt the Sun』(The Cabs)と『Point』(Yello)と『Improvisationen』(Gruppo Di Improvvisazione Nuova Consonanza )と『Bach - Gulda - Clavichord (The Mono Tapes) [Remastered]』(Friedrich Gulda)をききかえした。