20130323

もっとも、何が本当かっていう点になりますとね、真実ってやつは、自分を語るための言葉だけをすいすいかすめとって消してしまって、その消滅の仕組を隠しだてするための言葉ばかりを物語の表面に浮上させてですよ、結局は、話の筋ばかりが妙にしらじらしく諸々の挿話と折り合いをつけ、遂には語る当人とは縁もゆかりもない物語を捏造し、(…)贋の挿話を世界に流布することにしか役立たんわけです。
蓮實重彦「陥没地帯」)



6時20分起床。8時から12時間の奴隷労働。偶然発見した奥さんのブログの中に生まれ変わったらいまの旦那とは決して結婚しないと書かれているのを発見して離婚の危機感を覚えたので第三者をよそおって離婚などしないほうがよいとメールを送り続けているうちにその奥さんから会いたいとアプローチをかけられはじめて困っているというひとの話を聞いた。冷静に考えたらすさまじいシチュエーションであるはずなのにどうにも食指の動かないのはおそらくフィクションの中ではとっくに消費しつくされている物語構造をこのエピソードが担っているからだろう。
(…)さんから四月に合コンがあるのだけれど参加しないかと誘われた。土日のいずれかになる予定だから(出勤日=遊びの日である)(…)くんにとっても都合が良いだろうしどうかな、とあって、そういえば合コンっていちども参加したことがないしここらあたりで体験してみるのも面白いかもしれないと思ったので了承したのだけれど、個室タイプの居酒屋で開催する予定だからだいたい参加費7000円程度になるけど、との続く言葉に、すみませんやっぱいいっすわと即断った。いやいや(…)くんそこはケチるとこちがうで! と突っ込まれたが、参加費だけで7000円(労働による拘束9時間分に相当)プラス一日のうちの夜の部がまるごと潰れることを考えるとそれってちょっと割が合わなさすぎだろというのが率直なところで、二勤務分とはいわないまでも一・五勤務分もの対価=時間を支払うほどの魅力を感じないと伝えると、まあたしかにけっこうふつうな女の子ばっかりやからなー、(…)くんアレやろ? (…)くんと同じくらいエキセントリックな子やないとあかんのやろ?と、これはひどい誤解なので訂正した。阿部薫鈴木いづみみたいなカップルにぜんぜん憧れない。
仕事を終えて帰宅したら玄関の扉が真新しいものに一変していた。唖然とした。どういうことだよこれと思いながらとりあえず部屋にあがって部屋着に着替えていると、取り替えられたばかりのその扉を例のごとくガンガンやりだすやかましい音が聞こえだして、イラっとしながらおもてにでると大家さんがいて、引き戸のたてつけがとても悪かったことであるし大工さんに頼んで今日あたらしいものに取り替えてもらったのだと悪びれることなく言ってのける。プライバシー観念とかその手のものをいっさい持たないらしい世代のひとであるしガミガミいうのもためらわれるのでただ一言びっくりしましたねとだけ応じると、えらい勝手なことさせてもろうてすみませんと言うのだけれどぜったいすみませんとか思ってないし、大家さん単独ならまだぎりぎり許せるとしても得体の知れない大工さんが勝手に部屋にあがってガンガンガンガンやってたのかと思うと、やはりクソ不愉快であるといわざるをえない。せめて電話の一本でも入れるなどできないものか。いい加減勝手に部屋にあがるんじゃないと釘を刺すべきかもしれない。
寝る前にこれ(http://www.youtube.com/watch?v=WtGMsm8gBPI)観て、こえーとなった。ダチュラってネーミングになんか聞き覚えがあるような気がしたのだけれどアレだ、村上龍コインロッカー・ベイビーズ』に出てくる毒の名前だ。