20130429

「序言」中のブーバー自身の言葉をそのまま借りれば、ここでは「反省的な経験化に先立つ」自己の体験を言葉にしている主観的な告白が重んじられ、「非主観的な講話」は収められていない。ブーバーの最大の関心事は神秘的体験の秘密そのものを反映している言葉であり、元来「言い表わしえないもの」として体験された神秘的状態、「月の隠れていて見えない面」とも、「方程式の割り切れない剰余」ともいうべきその秘密を、にもかかわらず言い表わそうとする試みから生まれた、そうした固有性をになう言葉と声なのであり、またそれらの言葉と声のうちに彼は、人間なるものの言葉の究極的な根源としての言葉(das Wort)を感得しようともしている。
マルティン・ブーバー/田口義弘・訳『忘我の告白』より「訳者あとがき」)



7時前起床。朝食を食べているヒマがなかったのでコンビニのヨーグルトとレンジでチンするあのナンみたいな生地の中にチーズとハムがはさまっているやつを買った。8時より12時間の奴隷労働。朝礼「おはようございます!禁断の三連勤、いったいどうなってしまうのか!?できるフロントスタッフ(…)です!」。
職場の近所にある民家の前に捨ててあったキャリーバッグがけっこういいところのものでまだまだ使えるかもしれないと朝っぱらから(…)さんと(…)さんがそわそわしてるので回収作業についていくことにしたのだけれど、思っていたよりも古かったしそれにどうも施錠&解錠のできそうにない代物だったので結局捨て置くことになった。
昼前いちばん高価な部屋を掃除していた(…)さんから内線が入ってちょっと手伝ってほしいことがあるんだけれどというので出向くと、客の置き忘れていったものらしい弁当が手つかずのまま部屋に残っていたから(…)くん食べなよとわざわざ手渡してくれたので昼飯としてありがたくちょうだいした。なかなかうまかった。
お腹がぱんぱんになってひさしいメダカがとうとう卵の一部を下っ腹から垂らしはじめたのだけれど、なかなか水草にくっつけようとしないのでもどかしい。テナガエビはカッコイイ、テナガエビが欲しいのだけれどペットショップでみるとすごく高い、と(…)さんがしきりにいうので、五年か六年くらい前に地元の川でテナガエビを捕獲したさいに撮影した写真が携帯電話の中にはいっていたのを見せてみると、でっつ!むちゃくちゃでっつ!と叫びだし、でっつ、というのはたぶん京都弁ででかいということなんだと思うのだけれど、(…)さんまでテナガエビってこんなでかいもんなのか、琵琶湖にいるやつなんてむちゃくちゃ痩せほそってるぞと言い出すので、これくらいのものだったら地元で簡単にとれますよ、今年の夏もどうせまたいつもの友人らと川遊びにでかけるだろうからでかいのを見つけたらつかまえて京都まで持ってきますわと約束した。
夕刻だったか、職場でリネンを拾っているときにふと、今日から三連勤かと考えて長いなー三日はと苦笑気味に溜息をもらした朝が、ほかでもないこの日の朝であるかのような錯覚を覚えた。シームレスに持続する厚みのない72時間を丸一日として認識するこの錯覚の由来をほどきなおしてみるに、入眠と覚醒でもなく、日の出と日の入りでもなく、作業の開始と終了こそがじぶんの中でその日をその日として分節する役割を果たしているのではないかという仮説に思い当たった。おとついきのうと勉強と作文の時間をまったくもって確保できていない。そのせいで金曜日の夜勉強を終えた時点で区切られた一日に続く新しい一日がいまだはじまりを告げてすらいないかのような、起床後朝食をとってからテキストファイルを開くなり参考書を開けるなりするまでのあの小一時間にずっと留まりつづけているかのような、そういう印象を受けるんではないか。
5月1日は(…)さんの誕生日らしい。またプレゼントを用意しなければならない。母の日も目前に控えている。贈り物をするのは楽しいからべつにかまわないけど。
仕事のある日は基本的に夜更かしもしくは早起きのために寝不足なのだけれどその寝不足が三日間続くとさすがにつらい。特に今日などはきのうおとといにくらべて客足もめっきり少なく、退屈した(…)さんが話しかけてくるのに相づちを打ちながらうとうとするくらいねむたかった。それに風邪気味なのか、朝から喉もたいそう痛く、サイズのあわない眼鏡を長時間かけていたときに覚えるようなこめかみの疼痛にも日中はずっと悩まされていた(だが、喉の痛みにかぎっていうならば、それは昨夜(…)を相手にしゃべりすぎたからなのかもしれない)。帰宅後は飯もいらないしさっさと風呂にだけ入って眠ってしまいというほど疲れきっていたが、しかしここであえて無理を押しとおすド根性を発揮してナンボのものだろうという気合いからジョギングに出かけた。するとふしぎに気分が高揚した。じぶんはこういう無理をすることができるタイプの人間なのだという挟持に歩幅がぐいぐいひろがりだした。おかげで最後の直線は脇腹をおさえての見苦しき疾走とあいなった。たっぷりかいた汗を風呂で流して部屋にもどると、すっきり頭が冴えていた。翌朝に回そうと考えていたブログをそれゆえこの時間を利用して書いた。それから軽く酩酊した。2時前に気絶するようにして布団に倒れこんだ。