20130513

昼前起床。午前中にいちど保険屋から電話があって起きたが無視して二度寝した。歯磨きをするために外に出るともわっとする熱気とかんかんの日射しで、さすが最高気温30℃の真夏日である。強すぎる日射しのあまり景物のひとつひとつがはんぶん光で飛んでしまっているようなあの白さ。今日も鼻をかめば見事なまでに大量な青っ洟である。免疫とウイルスのつわものたちが夢のあと。声の嗄れも相変わらず。それに加えて昨日まではなかった咳が出はじめている。最初に不調を覚えたのが一週間前の勤務日だったと思うのだけれど、胃の不調と頭痛で、そこから数日して喉の痛みになり、青洟になり、それでとうとう咳となったというわけで、発熱以外のすべての風邪の諸症状をこれで通過したわけであるが、寝込むほどたいしたわけでもないぼんやりした体調不良をこうして低空飛行的に持続させてしまったことが去年もあったような気がする。熱が出るまえに薬を飲むのがかえって悪いのかもしれない。発熱でもってうわ−っと敵軍を殲滅する総力戦の機会というのはきちんともうけるべきなのかもしれない。そうでないとこうして両軍の斥候同士が散発的にちょこちょこやりあうだけの局地戦ばかりが続いていつになっても戦は調停にいたらない。
保険会社から電話がある。自転車と衣服と医療費の補償についての説明など。物損事故を人身事故に切り替える旨を伝えておく。あっさりと了承。次いで加害者に電話し、同様の旨を伝える。示談にもちこもうとしてくるんでないかと踏んでいたのだが、こちらもやはりまたあっさりと了承。拍子抜けする。さらに警察署に電話して人身事故に切り替える手続きについて質問。おととい発行してもらった診断書に一部必要な文言が抜けていることが発覚したので病院に出向いて訂正してもらう。たったこれだけのことで小一時間待たされるのだから今後通院することを思うと頭が痛くなる。病院からタクシーを呼んで警察署へ。乗車前に保険会社に連絡して交通費についてたずねると、原則として通院以外には出ないという。事故でケッタがぶっ壊れたのだから仕方がないだろうというと、領収書をいただいてください、示談のさいに考慮しますから、とのこと。あくまでも確約はしないという返事の仕方。かまうことはない。強気でいこう。下手に退こうものなら足もとを見られておしまいだ。どのみち今後こういう駆け引きや心理戦を腐るほどくりかえすことになるのだ。保険屋とはとどのつまり詐欺師であるとはしばしば聞く。法律について何もしらない素人を相手にいかに金を払わずにすませるか、しらばっくれるか、会社の都合の良い方向に誘導してみせるか。要するに、その道のプロと一夜漬けの戦争というわけだ。こういうケンカの仕方も覚えておいたほうがいい。
警察署で診断書を提出し、調書をとってもらう。担当は例の頭にくる警官だったが、冷静に対応。好印象。てっきり実況見分に立ち会う必要があるものと思っていたのだが、すでにお互いの言い分は聞いているし食い違いもないのだからその必要もないとのこと。相手側があっさりと非を認めたのは、ひょっとするとこちらが目撃者を確保していたのが大きかったのかもしれない。事故直後はまるでこちらに非があるような言い分だったのに、署についた途端にしおらしくなったのだから。いや、しおらしくなったのは事故当日の昼間にかかってきた電話からか。当日の警察署では謝罪の言葉ひとつなかったが、電話では平謝りだった。おそらく誰かに入れ知恵されたのだろう。いちどお詫びにお宅へうかがいますとあったが、適当にはぐらかした。まだその段階ではない。いずれにせよ実況見分となれば半日は潰れるものと覚悟していたので、この展開には大助かりした。とにかくこちらとしてはいい加減ゆっくり英語が勉強したいのだ。気づけば五月も半ばだ。もう二ヶ月半しかない!
ふたたびタクシー。それから金閣寺マクドに出向いて『フォレスト』の残り数章を四時間ほどかけて片付ける。リニュアールオープン後はじめての来店だったが、一階にふつうのマクドとはちがうカフェテイストのマクドみたいなのが別で用意されていて、店内もけっこう居心地の良い感じだった。電源も豊富にあったし、もう少し自宅から近かったらこれから暑くなってくることだし、毎日通ってもいいと思うのだけれど。店内にはどういうわけか西洋人の姿が目立った。
19時過ぎに店を出て生鮮館に立ち寄り買い物。さすがに夕暮れ時となると半袖じゃあ肌寒い。帰宅後夕食をすませてたまっていた日記を書きはじめる。スカイプにログインすると(…)がいてすぐにコンタクトをとってきたので、ゆったりとチャットしながら日記を書き進めていたのだけれど、回線が重くて、通話どころかチャットすらままならない。車にはねられたといったらびっくりされた。でもcompensationがはいったらもう週末は働かなくてもいいんじゃないのというので、こいつも相当アレだなと思いながら、そんな大事故でもないのだし仕事をやめることができるほどの額が手に入るわけじゃあないと応じた。妹というのはさすがにアレだけれど遠い親戚とでもいえば大家さんを説得することだってできるかもしれないと、これはうちの両親の案なわけだが、そういっていたよ、だからきみはたとえばおれの叔母の娘(ということは従姉妹か)の息子の嫁くらいの設定でいけばいいんじゃないのと提案したら、ザッツ・ア・グレート・プラン、きっとうまくいくわ。
面倒なことはさっさとすませてしまってはやいところ紋切り型の日常にもどりたい。代わり映えのしない日々にそれでも鮮度を求める性根こそが認識の解像度を鍛えあげる。日記というのは書かなければ忘れてしまいそうな事柄を書いてこそ光るものだ。思想も箴言も批評も分析も必要ない。天気と景色と取るに足らない出来事となんでもない会話、それにささやかな思い出話を添えればそれでいい。