20130517

 古く貝原益軒の『養生訓』以来、〈健康を守る〉方法さえも、この国ではひとつの禁欲と求道の体系となった観があります。生花・舞踏・音曲・体育といった本来なら日常性から逃避し〈あそび〉の世界のなかに人間の生体防禦反応を解消させてしまう方法であるはずのものでもすべてを〈求道〉にかえてしまい、小うるさい上からの束縛と規範で飾り立てねばすまない日本人の心性は、(…)本末転倒として典型的に戯画化されることになるでしょう。
小田晋『狂気の構造』)



6時45分起床。二時間睡眠で風邪が悪化。喉が痛くてしかたない。唾液をのみこむたびに刃物の切っ先を突き立てられたかのように鋭く痛む。8時より12時間の奴隷労働。じぶんが車にはねられた翌日に(…)さんがバスと接触事故を起こし救急車で運ばれてそのまま入院しているという話を聞かされておどろいた。全治一か月という話らしいのだけれどお見舞いにいった(…)さんの話ではこれほんとうに一ヶ月でどうになるレベルの怪我なのかというくらいひどかったみたいで(顔がものすごく腫れていたらしく(…)さんはこんな顔だからできればまだ見舞いには来てほしくなかったと言っていたという)、なぜこの事故でひとつも骨を折らなかったのかと医者が驚くほどの全身打撲らしく、(…)さんはすでに70歳をまわっている老齢である。仮に退院したところで職場復帰はほとんど絶望的なんではないかという話がまことしやかにささやかれている。停留所で停車しているバスの後方に(…)さんのバイクがぶつかったらしく過失でいえばおそらく10:0で(…)さんが悪いということになるようなのだけれど、なぜそんな事故が起きてしまったのか(…)さん本人もはっきり覚えていないというか、ただバイクを運転中にふわーっと意識があやうくなったとかなんとかそんな記憶はほんのりあるらしく、もともといつ倒れてもおかしくないような高血圧であったようであるからそのせいだったのかもしれないが、とにかく痛ましい話だ。
(…)さんから今度の水曜日に(…)さんの自宅ガレージで(…)さんと三人でバーベキューをしようという誘いがあったので、先日(…)さんのお誘いを断っていたこともあるし、了承した。
ひとり入ったと思えばひとり欠けてふたり欠けてと、とにかく人手不足のはなはだしいここ最近の人員事情に加えて、仕事の段取りがまったく身についていないスタッフの再教育をいかにすべきか、あるいは横着をかましてばかりいる古株にどう対処してみせるかなど、七面倒な問題ばかりがたてつづけにもちあがっている五月の職場、傍目で見ていても責任者(…)さんの苦労がしのばれるのだけれど、個人的にいま抱いている最大の懸念は、このまま人員不足に拍車がかかり、いつかじぶんが穴埋め役としてかり出されるのではないかという可能性である。ちょうど(…)が来日するタイミングでそのような事態がまねかれたらと思うと、そわそわして落ち着かない。
帰宅。夕食。入浴。服薬。栄養ドリンク。油断すればたちまちひきずりこまれかねない強烈な眠気と対峙しながらもどうにか瞬間英作文のノルマを片付けて1時半。きのう布団にもぐりこんでからめずらしくなかなか寝つくことができなかったのでいろいろと考え事をしていたのだけれど、年内いっぱいくらいを目処にしてバイトを辞めて、それでもう東南アジアのどこかに移住してしまうというのもアリだなと、けっこうというか、かなりというか、わりと現実的にそう思った。いちどしっかり見積もりを出してみて、それでどうにかなりそうだったら、新人賞の賞金がどうのこうのとか四の五の言ってないで、もうちゃちゃっと行ってしまおう。そうだ。それがいい。日本で生活するかぎりは働かざるをえないのだったらひとまずは日本を出てしまえばいい。じつにシンプルな話だ。その後のことは現地で考える。これだ。