20130604

この世のなかで、愛の対象がなんであろうと、そんなことはたいした問題ではないと思いますわ。しかし、何かは愛さなければならないでしょう。
(キャサリンマンスフィールド/崎山正毅・伊沢龍雄・訳「カナリヤ」)



12時過ぎ起床。14時から発音練習&音読。とちゅうで最寄りの整骨院の営業時間をチェックしに出かけ、そのついでにコンビニでチョコクロワッサンとワケのわからん炭酸飲料を購入した。保険会社に連絡を入れて音読の続きに取り組み、19時に達した時点でいちどきりあげ、徒歩二分の整骨院にむかった。保険会社からの連絡がすでに行き届いていたために手続きは実にスムーズに進行した。首から肩にかけて四つの電極を設置して電気を流してもらったのだが、途中で左腕が勝手に痙攣しだしたのでびっくりした。痙攣とはこういうものかと思った。悪魔を宿した片腕が主をうらぎって勝手に暴走的な、ARMS的なアレが現実にあるとしたらこういう感覚なのかもしれない。電気を流したあとは首のあたりを集中的にほぐしてもらった。カーテンに仕切られた向こう側でアメリカからこちらまで片道10時間うんぬんかんぬんと語る中年女性の声がし、聞き慣れないイントネーションだったのでひょっとすると外国人なのかもしれないと思った。それから大学のバスケットサークルで肩を痛めたらしい女の子がすでに顔なじみとなってひさしいらしいラフな口調で整体師とやりとりする声が聞こえてきた。じぶんの担当にあたった男性は若く、地味で、それでいて男前で、要するに、あかぬけていないイケメンというやつで、なぜか始終馴れ馴れしいほどのため口であった。しかしいらつくことはなかった。そういう方針なんだろうと、なんとなく腑に落ちる口調だった。受付に女性がふたりいたが、明らかにひとりで事足りる規模の医院であるように思われる。できれば毎日、それが無理なら隔日でもいいから、ひとまずはなるべく頻繁に通うようにしてくださいという指示が出た。
帰宅して整骨院でもらった手書きのちらしをなんとなくながめていると、というのはなぜかこの手の学級新聞的な配布物を熟読してしまう傾向がじぶんにはあるからで、これはおそらく文字フェチというかフォントとかには別にはさほど興味ないのだけれど手書きの文字にたいして尋常ではない興味関心好奇心がじぶんにはあるというか、アレだ、筆跡フェチといえばわかりやすいかもしれない。そのフェチのために学級新聞的な配布物をすみからすみまで舐めつくすように熟読してしまうわけだが、熟読していると、部屋の熱気をのがすために空けておいた軒先の小窓から(…)くんと呼ぶ声があり、ふりむくと(…)さんがいた。このところ全然姿を見かけることがなかったので実家にでも帰省しているのだろうと思っていたのだけれど、事情をたずねてみるとそうではなくて、博多に在住している元カノの家に一ヶ月ほど居候して大家さんを題材にしたくだんのドキュメンタリー映画の編集作業を缶詰でおこなっていたのだという。ヤマガタには無事間に合ったらしい。俳句も応募した。あとは中国に渡るだけである、と、思い残すことのなきよう身辺整理のごとき日々を送っているようにみえる。ひとまず完成品のドキュメンタリーの収録されたDVDをいただいた。七月末には退去する予定だというので、するとちょうど(…)と入れ替わりになるんすねといった。本当にここに一ヶ月滞在させるつもりなの、と驚くようにたずねるので、大家さんには遠い親戚とかなんとかいってうまいこと誤摩化そうと思ってるんすけどね、というと、いやーそれはきびしいんじゃないの、けっこう勘の働くひとやからね、とあって、下手に親戚がどうのこうのいうのではなしに正直に恋人なり友人なりといってしまえばいいんじゃないの、というのだけれど、でもそもそもの話女の子が部屋に出入りするというだけで大家さんの機嫌は悪くなると忠告をよこしたのは当の(…)さんである。そんじゃあもうどうすりゃいいんだよというアレで、幸先の悪い話というか前途に暗雲のたちこめるような見通しなどいまはまったくもって目にしたくない気分であって、そういうあれこれを考えてしまうと英語の勉強もとたんに勢いを失ってしまう。だからなるべく悪い想像を働かせないに越したことはないというか、それをいえばそもそもあれだけケンカばかりしていたふたりが一ヶ月も同居することなどできるわけがないのであって、そんなことはお互いにはっきりとわかっているのだけれど、でもその点にはいまはいちど目をつぶろう、そうしてただ美しい想像と期待で頭の中をいっぱいにして夏の予感に打ち震えよう、そうした暗黙の了解がじぶんたちの間にははっきりと横たわっているのであるし、そうした幻想にみずから飛び込むことで英語を勉強するためのモチベーションをひねりだしている現状であるのだから、京都だったらそこそこ安いゲストハウスもあるんだしといわれたところでそれじゃあ話にならない、そういう問題ではないのだ。パーイで計画倒れにおわった共同生活のリベンジがこの夏に賭けられているのだ。ゆえにたとえどれほど見通しが苦しくなろうと奴はこの部屋にステイさせる、その前提ですべての段取りを整えていく。
閉店間際の生鮮館にすべりこんで買い物をすませ、筋肉を酷使し、生野菜をたらふく食らい、たいして眠くもないのに20分の仮眠をとって目が覚めればぴったり23時。ふたたび音読にとりかかり、きりのよいところまでテキストを進めたところで切り上げ、入浴。ストレッチ。時刻は2時。この時刻から薬物市場にむかうには少し腰が重い。ゆえに本日二度目となるコンビニでのパン&炭酸飲料の購入をすませてから自室にてブログをここまで書き進め、次いで「偶景」の作文にとりかかる。きのう書いたた分も含めて計195枚。5時ごろに床についたが、ひさしぶりに強烈な金縛りに見舞われた。悪夢的なイメージもちらほら。ライク・ア・バッドトリップ。