20130621

 エウリピデスはこう書いた。「奴隷とは自分の考えを話すことができない人である」。患者は自分の考えを話すのを許される場合もあり、許されないこともある。
R・D・レイン/中村保男・訳『レイン わが半生』)



12時起床。ひげ剃り。昨日付けのブログの続きを書いて14時半より16時まで発音練習&リスニング。のち整骨院へ。雨降りの中、徒歩にて生鮮館へ買い出し。帰宅後筋トレして18時。夕食。約束どおりスカイプにログインすると(…)がいたので、いったん飯だけ食い、食い終えてからメッセージを送ると、ずいぶん前からオンラインだったのにどうして何も話しかけてくれなかったのといきなりいわれ、いやいや飯食ってたからと答えると、途端にI'm sorryとか言い出して、sorryと彼女が口にするのはけっこうめずらしい。途中でシャワーを浴びるなどの中断をはさみつつも22時までチャット。今日は電話はしなかった。日本に来たら天ぷらと照り焼きを食べるのだとやたらと張り切っていて、天ぷらはまだしも照り焼きなんて有名なもんなんだろうかと思ってたずねてみると、去年までつとめていたバイト先の上司が日本人女性で、彼女に照り焼きの作り方を教えてもらってトライしてみたところ大ハマりしたとかいう話で、そういえばそんな話もあったと思ってたしか眼鏡屋だったっけとたずねてみると時計屋よとあり、うちのアパートの設備じゃあ天ぷらを作るのはむずかしいけれど実家のキッチンだったらきっとできるし、うちの母親か弟がきっときみに作り方を教えてくれるよといえばやたらとはしゃぎたおし、美味そうに飯を食べる女の子ほどかわいいものはないと、これはもう以前付き合っていたひとと食卓をかこむたびに思っていたことでもあるけれど、なんだったらセックスよりもハグよりもキスよりも寝顔よりも、飯をうまそうに食ってる姿をながめているときがいちばん幸福といってもいいくらいで、別にじぶんが腕によりをかけて作ったものをおいしく食べてもらいたいとかそういう欲望があるわけでもなし、ただだれの作ったものだろうと何を調理したものだろうとそれを心底美味そうに食ってるその姿になによりもぐっとくる、すごくいいと思う、というこの感覚はしかしいまのところだれとも共有したことがない。シャワーを浴びて戻ってくると、ちょっとした問題が発生したとあって、なんだなんだと思ってのぞきこんでみると、一ヶ月滞在する予定だったタイに15日しか滞在できないことが判明した、それ以上となると有料ビザを申請する必要が出てくるとのことで、口座をチェックしてみたのだけれどすっからかんだしこれどうしようもないかも、みたいなふうになっていて、陸路だと15日だけれど空路だったら30日じゃないのと、もっともこれは日本の場合だけかもしれないけれどもと念置きしながらたずねてみると、それ日本のケース、わたしの国からだと15日だけだわとあり、テンションだださがりで、それだったらひとまず15日という建前でタイに渡っちまってむこうで滞在している間にふりこまれる給料か何かを利用してそれを元手にビザの延長申請か何かすればいいんじゃないのというと、とりあえずタイの大使館か役所か、知らない単語だったからよくわからないけれども文脈的にたぶんその手の機関だろうと思われるところに連絡をとって色々とたずねてみるというので、もしどう手を打ってみても15日しか滞在できそうになかったら予定をはやめて日本に半月ばかし早く来ればいいよ、と伝えた。すると、I guessとだけ返事があり、これって、なんとなくそんなことになる気がするわ、みたいなニュアンスのアレなんだろうか。わからないけれどもとにかく14時になれば大使館だかなんだかのお昼休憩が終わるのでそこに電話して聞いてみるといったので、詳細が判明し次第、こちらにもまた連絡をくれといった。万が一、来日の予定が早まるようだったらなるべく早急に連絡がほしい。こちらはこちらで京都-東京間の夜行バスのチケットをブッキングしなきゃいけないから。明日と明後日は仕事だからスカイプにログインするのは難しいと思うしメールで構わないから予定が決まり次第一報を送ってくれ。と、だいたいそんなふうなことを伝えたところで、それじゃあおれは勉強のほうに戻るよ、と続けたのは親戚だか友人だかが三十分後にはやってくると(…)が言ったからで、あしたとあさっては無理でも月曜日は空いているんでしょ、というので、だいじょうぶ、月曜日には電話で話そう、ライティングのレッスンにはもう飽きたから、といってバイナラした。
仮に(…)の来日が早まったとして七月半ば、それから期限ぎりぎりとなる九月半ばまで日本に滞在するとなるとまるっと二ヶ月間にわたる共同生活ということになるわけで、だからといって細かなあれやこれやを先回りして心配していてもしかたがない。ただやはりいちばん気にかかるのは大家さんの了承をいまだにとっていないという一件で、どうも(…)はマジでぎりっぎりのカツッカツみたいだし、大家さんが無理だっていってるから悪いけれどもどこかよそのゲストハウスなり安宿なりに泊まってくんないかなぁなどといえるわけがないしそもそもそんなこというつもりなどまったくもってない、微塵もない、天地が裂けても海が割れても山が動いてもありえない、というわけで土下座でも賄賂でもなんでもいいからとにかくありとあらゆる手段を総動員して了承をとらなければならない。
などなど考えながら三日三晩降りつづく雨音をよそに酔っぱらって酩酊して、あした出勤途中に鴨川の水位をチェックしておこうとかなんとか考えながら3時ごろに寝た