20130630

 彼女は十九歳で、サーカスの曲馬師だった。彼女を乗せた馬が人馬一体になって倒れた。馬は彼女の頭の上でころがり、殺されなくてはならなかった。彼女は数日の間、完全に意識不明だった。意識が回復すると、彼女は馬になっていた。傍目にも馬のように見えた。目は馬の目だった。彼女は嘶いた。病棟の外で草を食んだ――全裸で、四つん這いになって。三週間か四週間たつと、二、三日で再び自分自身に戻った。こういうことを理解したいものだと私は必死で思った。
R・D・レイン/中村保男・訳『レイン わが半生』)



5時半起床。スカイプにログインしてみるも(…)不在。出国前のやりとりはあきらめて二度寝。6時半起床。8時より12時間の奴隷労働。あたらしくバイトに入ってきた(…)さんというひとがだれかにとてもよく似ていると思ったら(…)ちゃんだった。おまえには考えられないことだろうが、という前置きに続いて披露された(…)さんの話によると、(…)さんというこのものおとなしい雰囲気の女の子はバイトを三つか四つ掛け持ちして週七日働いているのだという。学費を稼ぐためらしいが、両親にじぶんの貯金を呑みつぶされているとかなんとか、どこまでが本当でどこまでか嘘かはわからないけれども、なかなかハードな環境にあるらしい。もっとも、ハードでない環境に身を置いているひとなどそもそもここで働いてなどいないわけだが。十中八九ワケ有り。不遇と貧困の百貨店。
帰宅。(…)より出国前のメールあり。体調は上々。バンコクに到着したらまた連絡するとの由。旅路に暗雲をたちこめさせるわけにもいかないので、こちらの事情についてはなにもいわずにおく。というわけで、さて、どうしたものか。引っ越すべきか否か、夏の拠点をアパートに置くべきか否か、延々と思案しつづける。思案しているというよりはじっさいのところどれにしたところでそれ相応のリスクと不便をかかえることになる手持ちの選択肢のうちのいったいどれを選択して開き直ってしまうべきか、その覚悟が固まらずにグズグズしているだけだともいえるわけだが。どういうかたちになるかは未定だが、なにかトラブルが生じたときの保険の意もこめて、やはり(…)さんにはある程度お世話になることになるかもしれない。やっぱり絶対ケンカすることもあると思うし、いざというとき家出できる場所くらいはあったほうがええやろ? (…)さん当人にもそういわれたのだった。あとは自転車をもう一台確保しておいたほうがいいともいわれた。これもそのとおりである。というわけでだれか京都市内で自転車のあまっているひとがいたら(本当に!本気で!マジで!真剣に!!!!)お譲りください!