20130706

6時半起床。あまりの蒸し暑さに朝方何度も目が覚めた。布団のぬくみに耐えきれなかったものらしく、気がつくと畳の上にごろりと横たわっていて、体中がいぐさまみれになっていた。部屋の畳はボロボロで、ところどころ腐っており、謎の血痕らしきものまで認められる。
8時より12時間の奴隷労働。気温はそれほど高いとも思えない。日射しの晴れ渡っているわけでもないし、ことさら急いでケッタを漕いだわけでもない。にもかかわらず職場に到着するころには全身が汗びっしょりだった。なんなんだこの不快感は!と思っていると、じぶんの後に続けて出勤した(…)さんも昨日からのこの湿気は一体なんやねん!とげんなりしており、自宅では滅多に冷房をつけないという(…)さんまで昨夜はとうとうクーラーを起動したとかなんとか、そういう話をしている最中もたしかに冷房の効いているはずの室内にもかかわらずべたべたとした不快感だけはいつまでたっても払拭されないありさまで、更衣室で普段着を脱いだはいいもののなかなかスーツなど着る気になれず、グレーの肌着のままシャツさえはおらずに小一時間過ごした。普段はこんなにも汗を掻くことはないのだとほとんど唖然としながら(…)さんが顔面汗だくになっていたり、無駄口を叩くことの滅多にない(…)さんまでもが出勤するなり何なんでしょうねこの湿気はと口にしたり、とにかく異様な湿気の一日で、なんだったらこれまでの人生で最高レベルの湿度をキープした終日として今日という日がこれから先たびたび思い返されるんではないだろうか。関東では梅雨明け宣言が出たらしい。信じられない。京都は地獄だ。タイのジャングルなんて比にならぬほどhumidである。
職場に(…)さんという女の子がいて、まだ入ってきたばかりであるのに加えて働いている時間帯が異なるためにこれまでほとんどろくに口を利いたこともなかったのだが、今日は色々なタイミングがうまく重なって、それで少しばかり雑談をする時間があったのだけれど、(…)さんは今日だか昨日だかにピストを買ったといっていて、ネット通販で定価6万円越えのものが1万ちょっとみたいなお買い得価格だったらしく、それをじぶんで組み立てて今日は出勤したのだと、そういうアレで、それでほらほら(…)さんこれかわいくないですかーと、豚を模したかたちの自転車のライトみたいなやつを見せられたりして、へーこんなんあるんやおもろいねーと、そんな話をしているときにふと、ちょっと待てよと、思いとどまるところがあって、それで(…)さんに今まで使っていたケッタってどうしたの?とたずねてみたところ、まだうちのアパートにありますという返事があったので、すかさず、それちょうだい!と言った。したらいいですよという二つ返事で、そうと決まれば善は急げである。それじゃあ明日そっちのほうの自転車で出勤しますよと(…)さんがいうので、じゃあぼくは朝バスで来ることにする、そんで帰りはそいつに乗って帰ることにする、と、そう答えたところでしかしそれなら(…)さん帰りはどうすんだと思ってたずねてみると、(…)さんの車で送ってもらうことにします、といっていて、ちょうどこの昼間に(…)さんが(…)さんに惚れているらしいという話を(…)さんから聞いたばかりだったので、これじぶんが(…)さんからケッタを譲りうけるという一連の流れのおかげで(…)さんも(…)さんにアパートまで送っていってもらうための正当な口実ができたわけであるし、むろんそれにくわえて(…)さんは元々古いほうの自転車の処分をどうしたものかと迷っていたところであったのだから、なんというかマジでwin-win(死語)ですわと思って、とにかく小躍りした。懸念のひとつが潰れた。潰れた途端、これから先なにもかもがうまくいくような気がしてならないという例の躁的な全能感に精神をジャックされて、キラキラと光る夏を幻視した。
職場で簡単な夕食をとって帰宅。(…)からメールの返信あり。こちらの予想していたとおりすでにチェンマイに滞在しているらしいのだが、あの絶大無比なる超絶美味パンプキンスープを出してくれたレストランはどうも移転してしまったらしい。移転先の店舗には厨房がなく、それゆえにただの風変わりな、こういっちゃあ怒られるかもしれないけれども、ふつうにうさんくさいだけのマッサージ屋になってしまったみたいである。あの天才的な女性シェフ(ミャーとかニャーとかそんな感じの名前だったような気がする)もふるさとに帰ってしまったという。前回メールしたときにフライトナンバーを教えてくれるようにと頼んだのだけれど、ちょっとした理由でクアラルンプールを経由することになったとかなんとかあって羽田に到着するのは23日の14:30になったみたいで、以前まで22:30だといっていたからそのつもりで23日も丸一日東京で適当な友人知人にあたって時間を潰すつもりだったのにちょっと計画が狂った。空港で再会する場面を想像するとすこし緊張する。なんだったら日本語でも緊張するであろうこのシチュエーションを三ヶ月の付け焼き刃で乗り切るというしごく困難なミッション! メールを返信して就寝。万が一に備えて携帯の番号とアドレスを報せておいた。これで告げるべき情報はひとまずすべて告げおえたはず。