20130711

11時半起床。11時にセットしておいためざましでいちど目覚めたものの暑気に由来する眠りの浅さゆえに例のごとく二度寝を試みてしまい、しかし試みたその二度寝すらもが同じ暑気ゆえにわずか数十分で打ち破られるという落としどころのむずかしくきびしい汗だくの起き抜け。パンの耳を喰らってパサパサに乾いた口内をホットコーヒーでうるおすのにもいよいよ不快感がつきまといはじめている。そろそろアイスコーヒーに鞍替えすべき時期かもしれない。あるいはホットコーヒーの前にまず野菜ジュースを一杯ごくりとやるとか。
「しあわせギフトキャンペーン」の(…)さんからまたメールが届いていて、これで計33ポイント!ブックカバーまであと7ポイント!というアレでだんだんと勝ち目のある勝負になってきたのだけれど、ところでこのブログの醍醐味は小説の感想にせよ出来事にせよ「対象の内側でも外側でもない場所から描いている」というところにあるという感想をいただいたので、それについて少し考えてみて、以下のごとく返信した。

仮にこのブログに載せている文章が「対象の内側でも外側でもない場所から描」くことに成功しているのだとすれば、それは多分に紋切り型を厭うこちらの性格によるものであるような気もします。たとえばひとつの挿話を記述するなりひとつの出来事を描写するなりする場合、紋切り型を回避するために何ができるかといえば、それこそ、あらかじめ用意された言葉(の型)に頼らないこと、そうして共感に頼りすぎないこと、このふたつに尽きるといえるんでないかという気がします。後者について補足するなら、共感というのはもともと本来ならひとりひとり(あるいは一秒一秒)異なるはずの思考や感情に共通項を探り当て(あるいはでっち上げ)た上で、それを中点とした円を描く作業であるわけですから、共感に軸足を置いた表現とは構造的に(あるいは「構造的な」)紋切り型を免れえないともいえるわけで、それを厭う心象が結果的に「批評性」(幾度となく語られてきた対象を前にしてなおあらたな語り(差異)を産出するための営み)をともなうこともあるんではないかと思いました。
とかなんとか恰好つけてみても、実際のところはただロラン・バルト的な零度の記述に憧れつつもそれを徹底してみせるだけのストイシズムもなく、ムージル-古井由吉の系譜につらなる細部にわけいるような観察を経由することで自らの認識を変容させるにいたる気の利いた一文(すなわち、意味の零度からはほど遠いアフォリズムの残光を宿らせた一文)をそこに追加したくなってしまう、その結果としての内側でもない外側でもないどっちつかずともいえるのかもしんないですけれど(その傾向は執筆(中断)中の自作「偶景」においてますます顕著な気がします)。

(…)さんからは河野道代という詩人のエッセイがすばらしいという情報もいただいた。それに加えて武田百合子のエッセイあたりが、表面的な懸隔の印象とは別に、このブログの文章に似た何かをもちあわせているという話だったので、また読書を再開したあかつきにでも読んでみようと思った(だが、それはいったいいつの日のことなのだろう?)。河野道代という詩人については名前だけどこかで目にした記憶があるのだけれど未読で、調べてみると、平出隆稲川方人と交流があるひとらしく、この名前の並びだけで傑作が保証されているようなものだなと思った。
ぐずぐずと過ごしたのち14時半よりDuoりはじめる。18時にいちど切り上げて整骨院へ。行きしな、土間に運び出したらしい椅子に腰かけて夕涼みしている大家さんの姿が開放されたままの玄関の戸越しに見えたので挨拶し、ずいぶん遅れてしまったけれども今年四月より値上がりした家賃19000円を支払った。その際にあらためて(…)さんがこのアパートに泊まる必要はなくなったと、そう告げたのだけれど、すると、それでもトイレは使いまっしゃろ、そやからあんた、ほれ、女の方やったらあんた、メンス、メンスがありまっしゃろ、ほれ、月に一度の、そやしわたしトイレにあのー、ピンクの小箱を置いとくさかい、あんたそんなん、わたし本人にそんなん言えませんさかい、ね、あんたの口からそう言ってやってください、綿をトイレに直接流したらつまるさかいに、よくよくあんたの口から、ピンクの小箱に入れるように言うといてください、とあって、あれ、なんか意外に気を遣ってくれてるのかもしんないと、ちょっと大家さんにたいする構えを修正するようなやりとりだった。ただ、風呂にいちばんに入ってくれという申し出に対して、今日はちょっと出かける予定があるんで遠慮しておきますと断ったところ、あんたさん友達もよう来てるみたいやし、それでまあむずかしい小説なんかお書きになって、本当にたいしたもんやと思うえ、とあって、この友達というのは確実に(…)のことなのだろうけれど、いい歳として遊びほうけているんじゃねえぞ的な鞭の一撃のいかにも遠回しな物言いが、これ以上ないというくらいにステレオタイプを地でいく京都人じみたもので、率直にいって、感動した。大家さんと話しているとたびたびこういうことがあって、本当にたまげる。このひとだったら歓迎されぬ来客にたいしてぶぶ漬けを用意することくらいのことは平気でやりそうである。これはひとつのすごみである。
整骨院から帰宅後、先日(…)ちゃんに教えてもらった学生会館とやらにあるシャワールームの下見に出かけたのだけれど、利用可能時間は8時から22時まで、年末年始は利用できないみたいなアレこそ書いてあったけれども他はとくに注意書きなしだったので夏休み期間中でもこれたぶん問題なしに利用できるのだろうと、それで中に入ってみてとりあえず実際に身体を洗うなどしてみたのだけれど十分快適で、少なくともタイやバンコクのゲストハウスなんかにあったものとはくらべものにならないほどしっかりしているし、なんならいま住んでるアパートのものよりも水量と水温が安定しているぶん使い勝手がよいともいえるかもしれないというアレで、これは決まりだな、ここでひと夏乗りきろうと、そう決めたところで表に出て、それから念のために女性用のシャワールームの扉に貼られている注意書きに目を通してみたのだけれど、したら最近盗撮騒ぎがあったので女性用シャワールームを利用するには学生証を管理人に提示して鍵を借りるようにしてくださいみたいなことが書かれてあってクソが!なんでこううまく事が運びかけたというところでまた転ぶのか!一難去ってまた一難の長期連載漫画ばりの引き延ばしが続くのか!と、まったくもって憤懣やるかたない思いというか端的にいって凹んで、あーもうほんとどうしよう、タイムリミットは刻々とせまってきているのに、マジでどうしよマジでどうしよマジでどうしよ、と頭をフル回転させながらケッタを漕いで自室にいったん着替えやら入浴用具一式やらを放りなげてそれから生鮮館に出かけて牛乳とグレープフルーツジュースとチーズだけ買って帰って、とりあえずシャワーの利用者数はなんとなく少ないんでないかという気がしないでもないし特にこれからは夏休みであるし、なるほどそれじゃあいっそのこと(…)さんには男性用のシャワールームを使ってもらうことにして、それで彼女が中に入っているあいだはおもてでいちおうじぶんが見張りに立つとかなんとかしてやればどうにかなることはなるんでないかという暫定的な結論をいちおう出しはしたのだけれど、まあ不安要素の多い計画ではある。さいあく出禁を喰らった場合はどうするか。そのときはいぜん住んでいたアパートのコインシャワーを使うという手もあるが、これにしたところで夜中にこっそりと忍びこんで使うべきか、それとも大家さん夫妻に正面きって当たって許可を得るべきなのか、なかなか見極めのむずかしいところがある。あるいは近所に共同シャワールームを設置しているアパートなどないものかとも思うのだが、あったところでやはり住人でもない人間が使用しているところを目撃されると話がややこしくなる可能性があるというか、こちらはどうとでもなるとしてもそもそもパツキンの白人は目立ちすぎる。こそこそ動くに適した外貌ではぜんぜんない。ここがいちばんのネックだ。銭湯にまともに通うとなったらけっこうな出費になってしまうのでそれだけは避けたい。ひとまずあきらめず他の可能性も当たってみるべきだろう。コンクリートジャングルのサバイバル術は奥が深い。
途中で30分程度の仮眠をはさみつつ22時より1時半までひたすらDuoり続けた結果、ようやく頭から尻まで丁寧な見直しを終えることができた。あとは残った期間を利用してまた例のごとく音声CDを流しながらシャドーイングか何かをやっておけばいい。それとできれば瞬間英作文も並行すること。明日はまた四条に買い物に出かけるし、その後はクソ忌々しい吐き気を催す三連勤が控えているし、となると火・水・木・金の残り四日間しか残っていないことになるわけでこれはまずいな!しかも最後の金曜日あたりは結局やつの来日に移住に備えてもろもろ支度を整えるのに費やしてしまうことになりそうであるし(そもそもなにを(…)さん宅に持っていって何を自室に残しておくべきなのかを考えなければならない)、もうほとんど何もできないんでないかというアレでこういう見通しが立ってしまうとやはりあのときもっとがんばれたのにとかどうしてあんな寄り道してしまったんだろうとかそもそもなぜもっと早く勉強にとりかからなかったのだとか、手垢のついた後悔がにおいたってきていよいよげんなりする。
とかなんとかいってるうちにメールボックスをチェックしたら大学時代のクラスメイトの(…)からメールが入っており、ひさしぶりにブログ見たけどおもしろいことになってるねという書き出しで、大阪のアパートでよければ利用してもかまわないよという本題だったのでマジですかというか、お盆に軽井沢に旅行に出かけるからその期間中でも寝泊まりしてもらってもかまわないとかなんとか、あなたいくら昔のよしみとはいえ仮にも女の子なんだし小汚い軽犯罪者と得体の知れない外人にまるごと部屋を明け渡すとかそれ太っ腹をこえて不用心ですよ!と返信したのだけれど、しかし大阪!いいね!日帰りでいちいち京都に戻るのも面倒であるし金もかかるし、そういうことを考えるとやはり拠点が欲しいというのが率直なところであって、暗雲たちこめるシャワールームに反してこちらの一件は上々の快晴である。絶景かな!絶景かな!ここ数日メールボックスがかつてないにぎわいを見せている。