20130921

きのうは長々とブログを書き記したあと同僚の(…)さんからいただいたケッタに乗って(…)のアパートにむかった。(…)が帰国したいま二台目のケッタはまったくもって必要ないし(…)からもケッタが余るようだったらこちらにまわしてくれとたのまれていたので後輪のパンクしたそいつに乗ってえっちらおっちら花園にまで出かけた。それからくら寿司にでかけて飯をかっ喰らい、(…)のビッグスクーター2ケツしてじぶんの部屋にもどり、ひさしぶりにふたりで酩酊してmc漢と鎮座DOPENESSのフリースタイル勝負を何度もくりかえしYouTubeで視聴した(http://www.youtube.com/watch?v=xA_j-3GAIYw#t=534)。フリースタイルってほんとカッコイイ。最高にしびれる。言葉の瞬発力が半端ない。
労働。朝礼がはじまる前に(…)さんから(…)とは結局無事にお別れすることができたのかとたずねられたので失敗に終わったと告げると一瞬お通夜のような空気が流れて同僚全員がおしだまってしまうという一幕があった。いやーでも気落ちもしたけどなんやかんやでやっぱりいまは解放感のほうが勝っとんすよ、実際きのう酩酊してぐだぐだになっとるときもずっと(…)とふたりでフリースタイルの動画観て感動したり笑ったりしとったくらいすから、変なスイッチ入ってうじうじしてしまわへんか心配してたんすけどね、結果ぜんぜんそういうことにならんくて、とあわてて続けると、あーまあそれやったらひとまずは大丈夫ってことか、ていうかそれはそれですごい話やな、(…)くんやっぱりだいぶたまっとったんやね。
その(…)さんから休憩中、ハーブで頭がおかしくなって閉鎖病棟に入っていた(…)さんがかつて眠剤か何かをODした状態でクラブにいって、そこにいた鎮座DOPENESSにフリースタイルを挑んだという話を聞いたのだけれどそもそも(…)さんラップとかいっさいしないはずでその時点でもう無茶苦茶なのだけれど、そのリリックというのがまたぶっとんでいたらしくて当時(…)さんは性的な葛藤にあったらしくゲイに走ろうかそれともニューハーフに走ろうかいったいじぶんはどちらをせめたいのかどちらに舵を切りたいのかと迷走していたその心の葛藤を韻なんてまともに踏まずにラリパッパで放言みたいなそういうアレで、むろんラップとしてのかたちなんてまるでなしていなかったようなのだけれど鎮座DOPENESSがこんなやばいMC見たことないと試合後に口にしたとかなんとか、そのフリースタイルの動画をYouTubeにもかつて挙げたことがあるとかいう話らしいのだけれどいまもあるかどうかは定かでないという。
それとは別の休憩中に今度は(…)さんがかつて犯した殺人について詳細を語ってくれて、元々ヤクザをやっていて敵対組織の男をふたり刺殺して二十代前半からまるっと十年間刑務所に入っていたという大筋は以前聞いたことがあったのだけれど、どこかのスナックかバーで(…)さんと舎弟の計五人で酒を飲んでいたところそのスナックだかバーだかのママが別のヤクザ三人組に平身低頭でなにやら平謝りしているのが目につき、それでママ何かあったんけと横から割って入ったのがきっかけで三人組との口論がはじまり、(…)さんは最初血の気の荒いツレをどうにかなだめようとしたりガンガンからんでくる相手にたいしてもこんなくだらんことでケンカして互いの株さげるようなことしてどないすんねんみたいな感じでかわしていたらしいのだけれど、相手方がじぶんたちの所属する組の名前を名乗ったところ血の気の荒いのが(…)組がなんぼのもんじゃと食って掛かったそのあたりから争いがエスカレートし、(…)さんはそこにいたってなおことをおさめようとしていたらしいのだけれど相手が何度も(…)組(…)組と組の名前ばかり出すものだからいい加減腹がたってきてほやから(…)組がなんやねんと結局(…)さん自体も口にしてしまったその結果、激昂した相手にいきなり蹴とばされてしまい、それでスイッチが入った、それまでずっとくだらんことでケンカなんかすんなやと仲裁に入ろうとしていたけれどもういいとなったと、そういうことの次第で舎弟らにむけて「おう!殺ったれ!」と吼えることになったという。それで殴り合いがはじまったらしいのだけれどそこでまた血の気の荒い例の男というのが事務所にわざわざ拳銃を取りにもどりにいってしまい、結局なぜかドスを片手に現場にもどってきたらしいのだけれど(…)さんはそのドスをひっつかむが早いかじぶんを蹴りつけた男の腹にぶさりとやって、相手側もまさか刺すとは思っていなかったらしくてさすがに唖然としたというか完全に硬直してしまったらしく、そうしてそのように硬直してしまっている残りふたりのうちのひとりを(…)さんは続けざまにまたぶさりとやって計二人を殺した。ワシだけとちごてな、ほかのもんもなんやら刺しまくっとったわ、えらいもんやったであの光景は、と入れ歯をなくしてひさしいスカスカの口に煙草をくわえて(…)さんは笑うのだけれど、その姿その語りその表情からもわかるように(…)さんの何がやばいって十年ぶちこまれておきながらもまったくもって反省していないというこの一点にほかならず、じっさい(…)さんは出所後数ヶ月でまたもやパクられている(恐喝罪)。先週だったかもどういう話の流れだったか、70歳になるまではシャバにいたいがそれ以後だったら別にいつ向こうにもどったってかまわないとか平気で口にしていて、70までってあんたあと数年じゃないとみんなから突っ込まれていたりしたのだけれど、それとは別にまたちかごろ(…)さんはタブレットスマホにやたらと興味を示しておりワシもインターネットっていうやつやってみたいんやと時折言ったりするのだけれど、(…)さんインターネットとかいうで結局エロ動画みたいだけっしょ、目的AVでしょと突っ込めば、いやいや(…)くんそんなんいわんといてーや、ワシかてほかに目的があんねんといってはばからず、何があるんすかとたずねれば、いやいや、ほれ、あるやろ、ああいうの、あのー、素敵な熟女との出会いとかやなとかなんとかいって結局そっちかよみたいな。もうそんなんレンタルビデオ屋とナンパですませたほうが金もかからんといいでしょ、そのためにネット料金払ったりするなんてかえって損ですよと(…)さんが忠告すれば、いやーでもワシな、インターネットでな、ほれ(…)さん、インターネットっていろいろ買えるんやろ、ほやしワシな、チャカ欲しい思うとんやけどな、と、さすがにこれを聞いたときには場にいた全員が死ぬほど爆笑した。今日も今日でまた、チャカがあればやな、そのー、そこらいきがっとるんようけおるやろ、ああいうんが絡んできてやな、そういうときにちょっとこっちのほう来てくれませんかーいうて物陰に連れ込んでやな、ほんでバンッ!と、こうや!(ドヤ顔)などとしきりに口にしていて、こいつちょっと気に喰わんなー思うたらな、すみませんちょっとこっち来てくださいいうてやな、暗いとこ連れてってバンッ!と、こうや!(ドヤ顔)、そこらのお嬢さんがえらいのに絡まれとったらやな、お嬢さんお逃げなさいいうてやな、ほれで物陰でまたバンッ!と、正義の味方・月光仮面!と、こうや!(ドヤ顔)などと意味不明の供述をくりかえしており、いまどき中学生でも抱くことのできないある意味でピュアすぎる正義感を発揮していてだから正義はこわい。
近頃の土曜日として異例といっていいほどヒマな一日だった。同僚はじぶんを残してみないつもより一時間早く上がった。
帰宅してメールボックスを開くと(…)から返信があった。あなたに空港で会いたかった、メールを見たのはつい先ほどだ、いちばんつらいのは最後にハグしてグッバイできなかったこと、とあった。
母親から(…)は帰国したのかとメールがあったので、一週間前に家出してしまったから定かでないけれど帰ったはずだと応じた。いくつかのやりとりのあと、後味の悪いことになってしまったなぁというメールが来たので、これはこれでまたある意味では味わい深い別れではあると返信すると、わたしらは後味悪いと思うけど、そのあたりは感じ方がちがうんかな、よくわからんわとあって、そう、たしかによくわからない、この心境をどう説明すればよいのかじぶんでも戸惑うくらいで、なぜじぶんがこの幕切れにある種のさわやかさを感じるのか、解放感だけでは説明のつかないところがある気がするのだけれど、やはりよくわからない。土壇場での再会劇というわかりやすい物語に落着しなかったことにたいする小説家としての挟持みたいなもの?
二日連続で(…)は家出からもどってきたのかと心配のコールを寄越してきた(…)さんが出国予定日当日の昨日にかぎって電話をしてこなかったのはバッドエンドに備えて気を遣ったんだろうなとなんとなく思った。あのひとのことだから今晩あたり(…)さんに電話して、(…)くん最後いったいどうなったんや、無事に再会できたんかと、そんなふうにたずねている姿がまざまざと思い浮かぶ。