20130927

夢。父親とふたりで久米島のビーチに寝転んでいる。うずまき型の貝殻をもちあげると中からヤドカリが出てくる。それだけしか覚えていない。半袖いちまいでは寒い起き抜けだったので押し入れの中から薄手のパーカーを取り出して羽織ってから歯磨きと洗面のために水場に立った。パンの耳。ヨーグルト。バナナ。コーヒー。知覚過敏がこのところいつもに増してひどいのでひょっとすると虫歯なのかもしれない。評判のよい歯医者の情報を得なければ。軽くぐらついている歯も一本あるので診てもらいたい。もっともこれは虫歯のためではなく以前の職場で万引き犯相手に殴り合いを演じたためだが。やつが手持ちのナイフを使おうとしなかったのはいま思えばラッキーである。系列店の(…)店長が万引き犯に首を刺されて九死に一生を得たときには特にそう思った。逃走した犯人を追跡すべくヘリまで駆り出される大事になって2ちゃんねるにスレッドが立つほどのニュースになったものだから、たしか事件のあった当日づけのブログには比喩で言葉をにごして出来事を記したはずだ。2ちゃんねるといえば、そのまた以前の職場に出入りしていた高校生がダムで溺死しどっかのまとめブログにとりあげられたこともあった。当時の職場は中高生のオタクらが集う日陰の憩い場で、事件後彼らは神妙そうにくだんのウェブサイトの該当記事の存在を確認しあっていた。(…)店長を刺した犯人は地下鉄のトイレにたてこもっているところを身柄確保された。無一文だった。黒い職場だったので(…)店長は自腹で大学病院に通うはめになった。そのことについて愚痴を聞かされたこともあった。その(…)店長についてこのあいだ思い返すところがあったので「偶景」に記した。

 徹底されたほのめかしそれ自体がほのめかす狡猾な意図を電話越しに見抜く日々。不平不満もいよいよ罵詈雑言に接せんとする数々のきわどい言葉をさんざんまき散らしておきながらとめどない口舌が奇妙にも巧妙に標的の名を回避し外堀を埋めるでもなく旋回しつづける。ほとんど潔癖性的ともいえる不可触の徹底にしびれをきらして類推のたやすいその名をあげれば、自らはひとことも標的の名を口にせずにいた唖の事実を言質に、「やはりおまえもそう思っていたのか」という同意の論理のいかにも「ほかでもないおまえがそう思ったのだ」の語調で過激に色づけされてある相づちが待ち構えていたすばやさで瞬時に打たれ、気づけばしらずしらず陣営にひきこまれてあるらしい我が身だけが残る仕儀となる。

ついでに昨日づけのブログに記した蚊の一件は以下のごとく彫刻しなおした。

 浅黒くさらけだされた肌に着地するかそけき気配を覚えるが早いか血を吸われるよりもはやくふるうのがならいとなっている平手が、ふるわれるすんでのところで送り出されたまなざしの照準に見当たらぬ標的のすでに危機を察して姿を消してある機敏さをしかと認めてあるにもかかわらずとどまることなくぴしゃりと音をたてる。ときとして風に吹かれてしなだれるうぶ毛のそよぎに敵意を空目することもあるが、ここでもやはり肩すかしをいなされることなくふるわれる平手の一度や二度どころの話ではない。標的の不在を打つ手に香るのは懲罰である。一方はおのれの間抜けな鈍感さに、もう一方はおのれの過度な繊細さに、悲鳴を知らぬ肌が高く鳴る。

昼前から発音練習と音読。昼過ぎにラーメンを食べて引き続き音読。きりのよいところで止めておもてに出るとまだ明るくそれでいて肌寒く、秋よりも秋のはじまりのほうがずっとせつない。すでに夏の終りではなく秋のはじまりという認識を得てしまっている。執筆と英語の勉強と適度な運動、それらを星座のようにちりばめながら自室を中心にして回転する日々の天体。地に足のつきはじめた気がする。夏の二ヶ月間が今日をかぎりにとても遠くなった。窮屈さも苛立たしさも腹立ちも憤懣も激昂もすべて他人の思い出のようにうつろに見える。経験のひとしきり処理を終えたようでもあるし、去り人の現実に実感がまだ追いついていないだけのようでもある。部屋の照明を落として「偶景」の続きを書いた。プラス2枚で計223枚。ひとまず蓄積していた素案をすべて片付けたことになる。これでようやく「邪道」にとりかかることができる、と思ったが来週は「A」の最終チェックが控えている。10月5日にはデータをばらまく。お代はこちらでけっこう(http://www.amazon.co.jp/gp/registry/wishlist/24C4HVTMLWVZP)。だれがなんといおうとこのリンクは来るべき生誕祭まで一日も欠かさずブログ本文に組み込む!筋トレをすませて水場で夕食の支度をしているところに大家さんがあらわれたので、帰国前にあいさつにうかがったのだが金曜日だったため大家さんは不在だった(大家さんは毎週金曜日デイケアに通う)、(…)がお世話になりましたといっていた、と伝えた。それからシャワーを浴びて部屋の照明を落とし、ひさかたぶりの「邪道」に着手した。もう何度目かわからない冒頭からの加筆修正である。467枚。テキストファイルの一行目には「2012.2.15〜」とある。いい加減さっさとケリをつけてしまいたい。