20131005

6時半起床。クロノ・トリガーのストーリーをおさらいする夢を覚めぎわに見た。時の賢者が時の最果てに不時着しておーいだれかいないのかーと叫んだあとにここは時の最果てかとひとりさびしくつぶやくイベントシーンをそっくりそのまま見たようなそうでないような。
労働。誕生日ということで(…)さんから昼飯の出前をおごってもらった。一件目は注文がいっぱいだから無理だと断られ、二件目は注文がこみあっているので配達が遅くなるというのでこちらから断り、三件目はおかけになった電話番号は現在使われておりません、そうこうしているうちにけっこうな時間になってしまい、これはよほどヒマな店でないかぎりお昼の休憩時間内に配達などしてくれないぞと焦りながら当たってみた四件目がこちらのお願いした時間よりも十分以上早く配達にやってきたのでどんだけ流行ってないねんこの店は、そりゃ不味いわとみんなで大笑いした。(…)さんはコンビニでパンケーキを買ってきてくれた。(…)さんは日をあらためて乱痴気騒ぎを計画してくれているようである。(…)さんは手元に131円しかないので祝ってくれなんてとても言えやしない。昼食後、腕を組んで首を落としうつらうつらと眠気に耐えていたつもりが、とちゅう完全に落ちてしまっていたらしく、気づけば姿勢は変わらぬまま時間だけが数十分ほど経過しているという時のブランクを経験した。土曜日がここまでヒマになってしまったらここももうおしまいだねと従業員らのひそひそ話がこだまする日中だったが、15時をまわったあたりから次から次へと客が押し寄せてきてまたたく間に部屋が埋まった。いつもならやってられるかとなるみんなもここ最近の客足の遠のきっぷりにはさすがに危機感を覚えていたのか、いやーここまで埋まるのもひさしぶりやねーといいながらせっせと働いていた。
スパークリングワインはあるかとたずねる客があったので少々おまちくださいと保留ボタンを押してそんなものはあっただろうかと(…)さんにたずねてみるとたぶんないと思うという返事があったので通話相手にそう伝えるとこれだけ待たせておいてないっていうのはどういうことだとほんの15秒の保留にたいする意味のわからないイチャモンをつけられて、話し声から察するにずいぶんいい年をしたおっさんだろうにまったくもって生きる価値もないゴミ虫もいたもんだと思いながら申し訳ございませんなどと応じているともういちど探してみろそれで三秒以内に見つからなかったらビールを持ってこいみたいなまたしても意味のわからない命令をくだされて怒りや不快を通り越してこいつすごいゴミ虫だと感心した。客室にビールを持っていって手渡すさいにドアの陰に身をひそませることなく堂々と相手の顔をのぞいてやったところものすごく貧弱な身体をした白髪頭のおっさんがブカブカでヨレヨレのトランクス一丁で出てきてこちらと目が合うなりひるむような顔つきになって、客と従業員の力関係にあぐらをかききることもできず電話対応という顔の見えないやりとりの安全性あってはじめて虚勢をはることのできるこんなゴミ虫になったらもうおしまいだなと心底思った。こういう職場につとめている人間が曲者だらけだってことくらいちょっと想像力があればわかることだろうし、そういう連中相手にあんまり横着かますとそりゃあときにはもめ事にもなるだろうしもめ事になれば警察沙汰になるだろうし警察沙汰になればそりゃああんたの不倫なんて一発で明るみに出ちゃうぞと、そういうリスクの計算にまでぜんぜん行き届くことのない頭で必死に張った虚勢がいまどき小学生でも口にしない程度の中折れした恫喝で、ものすごく醜悪で救いのないものを目の当たりにした気がしてこういう年のとりかたをしてしまう人間が存在するという事実にドン引きする。正真正銘のしょうもなさ、純然たる無価値、結晶化した凡庸、言葉にならない面白みのなさ。ここまでくるとほとんど奇蹟だ。奇蹟のゴミ虫。
(…)さんに帰りぎわ(…)くん今日なんか変な空気感じたりしたとたずねられたので、いつもペアを組んでいる(…)さんと(…)さんが午前中別行動をとっていた時間があったのでひょっとしてケンカでもしたんでないかと(…)さんにたずねてみたりしたそんな一幕を思い出しつつひょっとして(…)さんと(…)さんですかと問い返してみると、あーやっぱりわかるかーとあったものだからなにかあったんですかと追求してみるとここ数日(…)さんが(…)さんと一言も口をきこうとしないらしいという話があったのでびっくりした。(…)さんも思い当たる節がないといっているしおれもちょっと今日(…)さんに訊くチャンスがなかったし、(…)さんは(…)くんのこと大好きだから何いわれても気にしないと思うしそれだから(…)くんもし明日時間があればそれとなく原因を探っておいてくれないかという(…)さんの話を上の空で聞き流してしまったのは、いわれてみればたしかに今日いちにち一言も言葉を交わしていなかった(…)さんと(…)さんのあからさまな不仲のしるしにしかしそういわれてみるまでまったくもって気づくことのなかったじぶんの鈍感さ、というか無頓着さ、というかそれら鈍感さと無頓着さからひるがえってあらわになる常日頃から他人事の距離感で同僚らにたいして接しているらしいじぶんの無自覚的なよそよそしさに心底おどろいたからで、そんなふうであるとは思ってもみなかったおのれの薄情さの実際になんなんだこれはいったいと自己嫌悪にすらいたらぬ至極微妙な感情をおぼえてただただ戸惑った。
帰路、裁判所付近のバス停前で、どことなく80年代のアイドルヒーローみたいなクソださい全身まっさおの衣裳に身をつつんだ若い白人男性(額に青いバンダナをねじり鉢巻のようにして巻いている)が勘違いした中国拳法家みたいなポーズをとってむずかしい顔をしているのを見かけた。最悪の誕生日だと思った。
帰宅してから飯を喰ってシャワーを浴びてYouTubeでどうでもよいゲーム動画など視聴してしまってマジ時間の無駄なのだけれどしかし『ゼノギアス』は少しやってみたいと思う。『クロノ・クロス』にちかい空気を感じるとおもったら開発スタッフがけっこうかぶっているらしかった。大風呂敷をひろげまくってたためずに終わってしまっている作品が好きだ。たたまずに終わるのではなくたためずに終わる作品。どうにかたたみきろうとして悪戦苦闘した結果ますますいびつに奇形化してわけのわからない情報密度と分布図を描いて息絶えてしまっているような、そういう力ずくで挫折だらけの説得力の軌跡にこそ本物の創造を見てしまう趣味がじぶんにはある。