20131017

A点とB点から出発して、同時にC点に至り、さらにD点とE点とに到達する普通の運動体を考え、それら二つの運動体を一郎、次郎と名付けるものとする。普通の運動体である場合には、それら二つの個体は出発点から終点までの全経過を通じて“実体的自己同一性”を保持しているものと考えられる。そこで、D点に達したのは一郎なのか、それとも次郎なのか、という設問が有意に成立つ。D点、E点に達したのが、一郎である場合と次郎である場合とが有意に区別される。(二人がそっくりで認識上は識別できなかったとしても、客観的にはそれら二つの場合は相異る事態である)。
 ところが、電光板の場合、実体的個体が連続的に空間運動・移動運動をするわけではないのであるし、D点に到達したのが、A点から出発したものか・それとも・B点から出発したものか、ということはそもそも意味をなさないわけである。
 そうだとしても、しかし、C点に至るまではどうであろうか? Aから出発したものとBから出発したものとは各々自己同一性をもっているのではないか?
「Aから出発したもの」「Bから出発したもの」という二つの“実体”に見立てて、それら二つのものの連続的空間運動・移動運動を考えるとすれば、なるほど両者は夫々自己同一性をもつものとして区別されよう。しかし、電光板の場合、最初の時点ではA点とB点とが同時に光り、次の時点では隣の列にある二つの点が光り、その次の時点では更にその隣の列にある二つの点が光り、……という点滅(ついたりきえたり)の状態が継起するだけである。Aとその隣、更にその隣……という系列と、Bとその隣、更にその隣……という系列との、二系列を辿ることは確かに出来るが、実体的自己同一体の移動ではない。
廣松渉『哲学入門一歩前 モノからコトへ』)



夢。政府の重役に任命されている。大臣なのか官房長官なのかよくわからない。どうしてじぶんのような男が保守的な内閣の要職に就くことになったのかといういくらかの混乱を覚えながら与えられた仕事についての説明を受けている。毎日早朝のニュースで政府の代弁者としてぶらさがり取材のようなものを受けなければならないらしい。ときには大学教授との対談もあるという。教授の書斎にはバフチンの書籍がある。政府の代弁者が古今東西の文学・哲学から引用したフレーズでもって取材に答えればとてもおもしろいだろうなと思う。
9時半起床。朝食をとったのち昨夜調べておいたアーロンチェアを取り扱っているオフィス用品店みたいなところにひとまず電話してみたのだけれど試座は可能だけれどサイズBしかないということでせめてというか最低でもAとBの両サイズの座りくらべくらいはしておきたいでかい買い物であるし、みたいなところがあったので続けてもう一軒やはり昨夜調べておいた雑貨店に電話してみたところこちらはAB両方あるとのことだったのでそれじゃあちょっと座りにうかがわせてもらいますねと告げて電話を切った。ウェブサイトで地図をチェックしてみるとどうやら宝ケ池までいかなければならないみたいで宝ケ池ってなんとなくすごく遠いというイメージがあったのだけれど地図で見るかぎりは別にケッタでもいけなくもなさそうであるというか心配なのはむしろ無事に目的地にたどりつくことができるのかどうかというアレでこういうときスマートフォンがあればこわいもんなしなのになあといつも思うのだけれど、とりあえず天気はすごく良いみたいであるしなんとなくケッタで知らない午前の街並をうろちょろしたいという開放的な気分にもなっていたのでストリートビューで念入りに経路だけチェックしておいてから外に出た。天気は良いものの空気はなかなかに冷たくて風も強く、外に出て最初に感じたのはああもうすぐ手袋の季節だという実感で、手の甲はとても冷たくもう乾燥している。北大路通を東にぐんぐん進んで橋をふたつ渡ったところであとはひたすら川沿いを北上というわかりやすいルートで目的地にむかったのだけれど京都って北にむかえばむかうほど街並が落ち着いてくるようなところがあって、山はどんどん近づいてくるし川辺は下手に公園仕様に改造されていないぶんしずかだし、市街地なんかにくらべるとわりと大きな一軒家やスペースをたっぷり確保したカフェや食事処なんかもあったりして京都といえばそりゃあ町家と鰻の寝床なのかもしれんけどもこういう落ち着いた雰囲気ってのも悪くないというかなによりひとけのなさがよい、若者の姿がぜんぜん見当たらない、なんならすれちがった通行人よりも川の浅瀬で突っ立っている白サギのほうがよほど多かったんでないかというアレで次に引っ越すとしたらこっちのほうに、多少の不便も厭わずにというかそもそも四条に出るのなんて一年に何度あるかっていう生活を送っているじぶんであるのだからはっきりいって市街地に住む必要なんて全然ないわけであるし、たとえばタイマスターの(…)さん(元気にしてるんだろうか?)の自宅があったあたりのあのしずかに土地のひらけた一画にぼろい一軒家でも借りてピースフルにサバイブするっていうような生活もぜんぜん悪くないよなと思った。くだんの雑貨屋には一度も道に迷うことなくたどりつくことができた。グーグル!
それで店に入るなり今朝お電話させてもらったものなんですけどとご主人に挨拶してさっそく試座させてもらうことにしたのだけれど、小さいほうのサイズAのほうがなんとなくしっくりするような感覚があってファーストインプレッションではこちらかなと思ったのだけれどご主人の話によるとふつうはだいたいサイズBのほうを購入するらしく10台売れたらそのうち9台はサイズBみたいなアレで、サイズAを買うとしたらだいたいまあ女性であるということらしくそのサイズAがしっくりきてしまうじぶんはいったいどれだけ華奢なんだという話ではあるのだけれどただ身長170センチジャストというデータを参考にするならばサイズBのほうがオススメできますねといわれてまあ大は小を兼ねるっていいますもんねと困ったときのことわざ頼みみたいなアレでなかなかつかない決心を無理やりつけようとしたりして、でもつかなくて、それで何度もAとBを行ったり来たり座ったり立ったり延々とくりかえして悩みに悩みぬいたというかまあせいぜい20分程度の逡巡でしかなかったのだけれどとりあえずAのほうが座面の横幅にしろ奥行きにしろじぶんの体型にしっくりくるというのがあって、ただそれはうらをかえせば座面がせまいということでありそれゆえたとえば作業中にちょっと姿勢を変えたくなったときなど両脚を座面にあげたりすることはまずできないだろうねということであるし奥までしっかり腰かけることができないということでもあるし大は小を兼ねるであるし、とかなんとか考えぬいたあげく最終的にBを購入するに決めたその最たる要因というのはAだと取り寄せが必要になってうちに届くのが一ヶ月ほど先になるという事情で、これがなかったら本当にAかBか永遠に決められなかったんでないかと思うのだけれどあとは12年保証があるからには12年継続して使用することを前提に考えると12年後は40歳、そのころにはさすがにいまよりも太っているんでないかというかできれば脂肪で太るんではなく筋肉ででかくなっていてほしいのだけれどそういう見込みやらあとは懇切丁寧に説明してくれたご主人がBのほうをオススメしてくれたというのもあるしあとアレだ、Aだと思ったよりも座面を高くまで持っていくことができなくてこれだとひょっとするといま自室で使っているデスクに高さを合わせることができないんじゃないかというそういう危惧もあったし、それになにより大は小を兼ねるというから結局Bを購入することに決めた。いまウィキペディアアーロンチェアの項目をチェックしたらA(小)145〜165センチ(女性・未成年)体重55キロ未満/B(中)160〜185センチ(普通の男性)体重50〜80キロ前後/C(大)180〜200センチ(大柄な男性)体重75キロ以上とあったのでやはりマニュアル通りに従っておきましょうということでじぶんの決断にますます自信がついた。サイズの異なるチェアを座りくらべすることができたのはもちろん大きいのだけれどもなによりも収穫だったのは店内にエンボディチェアもあったというサプライズでこれたぶんちょうど一年前まだ二勤二休の月収15万の高給取りだった時期(三ヶ月間でギブアップ!)に買おうかどうか迷っていたブツで京都に一軒だけこいつを取り扱っている家具店があるとの情報をネットでチェケラして(…)と連れ立って意気揚々と出かけたはいいものの肝心の店が閉店してしまっていてなんじゃそれみたいな、そういうことがたしかあったのだけれど(と思っていまブログ検索してみたところ当日の日記がヒットしないのでおそらくブログを一時中断してプライベート日記に移行していた時期のできごとであるように思われる)、そのとき閉店してしまったお店が場所を変えてあらたにはじめたのが今日おとずれたこのお店だったらしくて、エンボディチェアって京都であつかってるのここだけじゃないんですかねとたずねてみるとたぶんうちだけだと思いますよという返事があったのだけれど肝心のブツはといえば実はこれ誤解されてる方が多いんですけどデスクワーク用じゃあないんですよ、アーロンチェアとはもうまったく別コンセプトのチェアなんですよという驚きの説明があり、なんだってと思いながら拝聴してみるに、アーロンチェアがあくまでもオフィスワークに特化した作業用のワーキングチェアであるのにたいして(だからこそハーマンミラーはどれほど多くそれを希望する声があったところで決してアーロンチェアヘッドレストをつけようとはしない、なぜならそれはワーキングチェアという哲学に反するからである!)エンボディチェアっていうのはどちらかというとゆったりとくつろぐ方面に特化したつくりになっているらしく、デスクの上に置いたパソコンとにらめっこしたりならべた書類を相手にしたりするのであればこれはもう間違いなく絶対に迷うことなくアーロンチェアにすべきであるという力強い断言があり、どちらの椅子のほうがいいもんだろうかとずっと気になっていたじぶんとしてはこれはもうたいそうありがたいアドバイスだったのでそれが聞けただけでもここに来た甲斐がありましたとお礼を言った。それでもたとえばモニターが頭上斜めに設置されているような環境でキーボードを相手にカタカタやるような仕事であるならばこれはもちろんエンボディチェアの出番らしくて事実ご主人の話では任天堂プログラマなのかなんなのかしらないけれどもそういう環境でカタカタやってる関係者のひとが仕事用にわりとエンボディチェアを買っていってくれるみたいな話もあって、要するに高ければ高いほど高機能というものではやっぱりなくて目的に応じたものをしっかり見極めて買えよという話であり、あとたしかにアーロンチェアを買ったひとほとんど全員が腰痛が緩和されたと歓びの声をあげるらしいのだけれどだからといってこれは腰痛を治す椅子なんかでは全然ないよと、これも当たり前といえばじつに当たり前の話なのだけれどそこのところを勘違いしてやってくるお客さんも中にはいるらしいという話だった。それでいざ購入する段になって値段を聞いたらちょうどいまキャッシュバックキャンペーン中だということで価格の一割分が割引みたいなかたちになるらしく138000円のところがマイナス13800円で計124200円ということで、とりあえずカードで支払おうかと思ったのだけれどなんか手続きが面倒くさそうだったので近所にある郵便局でお金をおろすことにして15万キャッシュでどーんと引き出して店にもどって一括で支払った。配送はおそらく火曜日になるという話で、今週は日曜日は(…)さんがこちらの誕生日のために乱痴気騒ぎを開催してくれるみたいであるし月曜日は両親が伏見稲荷を見物にやって来るしで、そう考えるとおそらくは土曜日か日曜日に届くとおもわれる「A」のサンプルを元手にした最終チェック作業を開始できるのは火曜日からということになるわけでこれドンピシャじゃんという話である。お店のご主人が直接自宅までチェアを届けてくれるらしいのだけれどまだ若いのにこんな高級品をゲンナマ一括で購入してみせるとはさぞかしたいした男に違いないというその見通しを真正面からぶちこわすことになるわがスラム、わがゲットー、わがアジト、わがシークレットベース、あの娘ぼくがボロアパートに住んでるって知ったらどんな顔するだろう。マンション!マンション!
支払うものを支払ってからほかのブランドの高級チェアについての話など少しばかり聞かせてもらったのち店を後に出た。きのう(…)とメールしているときにアーロンチェア買うかもしれんわと告げるとおい早まるなという返事があったばかりなのだけれどその翌日にはもうこの早まりっぷりで引っ越しもそうだったしタイもそうだったけれど普段つつましやかに単調な日々のなかでちいさくこじんまりまとまっているその反動なのかなんなのか、わりと衝動的にというか発作的にでかいアクションを起こすきらいがじぶんにはあるような気がしないでもないし事実そのような指摘はしばしば受けるのだけれどしかしこの万能感はなんだろう!おれはじぶんの願ったことがなんでもかなう星のもとに生まれているんでなかろうか!?寝たい女とは寝れた!必要な金は必要なときに転がりこんできた!すべてができすぎているこの夏!すべてができすぎているこの夏!!すべてができすぎているこの夏!!!!とテンションだだ上がりで帰路についたのだけれどよくよく考えたらひとつだけ長年かなわずにいる願いというのがあって、講談社!河出書房!筑摩!新潮!おまえら全員ほえ面かかせてやる!今月中に爆弾落としてやるからな!覚悟しておけ!と別にそこまで思ったわけでは全然ないというか新人賞というゲームに乗っかった以上それにケチつけてても仕方ないのであってそのルールが気にくわないなら別のゲームをはじめればいいだけである。というわけで今月中にはどうにかがんばってこの辺境の地から世界文学史の最先端がいまどのような様相をていしているのか世の中にしらしめる巨大な花火をひとつド派手に、というわけにもいかないだろうからひっそりと、しかし優れた嗅覚をもつひとたちにはしっかりと届くような按配で打ち上げたい。
北山通をひたすら西進して帰ったのだけれどこのまま部屋に戻るのもアレだしということで鴨川に寄り道してベンチに腰かけて『天使のおそれ』の続きを読みはじめることにしたはいいものの思っていたよりも風が強くてそのせいでけっこうな体感温度で、それだから一時間もしないうちに結局晴天にさよならを告げることにして川辺を後にした。スーパーにたちよって食材を購入し、それから別のスーパーで木曜日恒例の古本市がやっていたものだから立ち寄ったわけではなく目的はあくまでもそのスーパーの一階に入っているshizuyaのなんとかいうパンで、これJさんEさんYさんが絶賛していたのでちょうど小腹も減っていたことであるし買おうと思って立ち寄ったのだけれどなんとなく本棚もチェックしてしまうことになって結局ベルクソン『笑い』とマルクスユダヤ人問題によせて/ヘーゲル法哲学批判序説』と柄谷行人『倫理21』と大西巨人『巨人の未来風考察』の四冊をそれぞれ100円で購入してしまいもうしばらく読書はいいやと昨日決めたばかりであるのになにをやっているんだかという話ではある。まあおそらく読むまい。こちらのなかで文学ブームはすでに下火にあるのだ。shizuyaのなんとかいうハンバーガーみたいなパンはそこそこ美味かったし何より安かった。
それで帰宅してから最後から二番目の読書というアレで『天使のおそれ』の続きを読みはじめたのだけれど途中で荷物が届いて、amazonさんからでーすと配達人はいうのだけれど最近なにか注文した覚えはないしなんだろこれは思って届いたものを開いてみるとポニョで、新品の『崖の上のポニョ』のDVDが入っていて、ここここれはまさか!と思って同封されている領収書的なサムシングなどざっと目を通してみたのだけれどなにひとつ痕跡はなく、けれどあわててネットにつないでここ(http://www.amazon.co.jp/gp/registry/wishlist/24C4HVTMLWVZP/ref=topnav_lists_1)をチェックしてみたところ『ポニョ』が見事に購入済みになっていた。というわけで誰だか知りませんが素敵な誕生日プレゼントをどうもありがとうございます。くりかえしたいせつに視聴させてもらいます。よろしければおかえしに「A」の紙本をお送りしたいので(…)hotmail.comまでメールください。あと、ご好評につき今年の誕生日はもうしばらく延長させてもらうことにしましたので、そのあたりひきつづきお待ちしております。手持ちの香水が残りすくないです。
それから途中で飯を食ったり仮眠をとったりしながらもひたすら自室で『天使のおそれ』を読みつづけ、読み終え、それでここまでブログを書いたところで午前0時。シャワーを浴びてみっちりストレッチしてそれからプリンターを起動して(…)さんからずいぶん前にいただいた小説をプリントアウトし、寝床に入ってから半分ほど読み進めて寝た。(…)さんの小説は毎度のことではあるけれども漢字の開き方がすばらしい。ここひらがなでいっちゃうんだみたいなところがしかしことごとくうまく機能している。作品単位でこの漢字は開くか開かないかあの漢字は開くか開かないか判断するのではなくて、一文単位の漢字とひらがなの割合を元にしてここは開くか開かないか判断すればよいらしいと見当をつけたのだけれど、しかしこれはいうほど簡単な話じゃあない。