20131109

 一般に、魔術的方法というのはその形式からして科学と宗教の両方に似ているようだ。魔術とは、いずれかの堕落した「応用」形態かもしれない。雨乞いの踊りとか、人間と動物との関係を扱ったトーテム的儀式とかを考えてみよう。こうした儀式において人間は、天候なり野生動物の生態(エコロジー)なりを祈祷したり、模倣したり、コントロールしようとしたりする。だが、これらの儀式の原初的な本質は真に宗教的なセレモニーなのではなかろうか。一体性(ユニティ)を儀式的に表現して、参加者全員を気象サイクルやトーテム動物の生態との統合に巻き込んでゆくものである。これこそ宗教だ。しかし、宗教から魔術への堕落の道はいつも誘惑に満ちている。多くの場合ぼんやりと認識されているにすぎない全体への統合を表明することからはずれて、術者は欲望にとらわれてゆく。自分の執り行なう儀式が、雨を降らせたり、トーテム動物の多産をうながしたり、何か他の目的地を達成したりする、目的性をもったひとつの魔術だと考えるようになるのである。実際、宗教と魔術を見分ける基準は「目的」、とくに外むきの目的だといっていい。
グレゴリー・ベイトソン+メアリー・キャサリンベイトソン星川淳吉福伸逸・訳『天使のおそれ』より「超自然論でもなく機械論でもなく」)



きのうは(…)さんの小説を最後まで読みすすめてから酩酊して眠ったのだけれど(…)さんの小説がものすごいことになっていてひょっとすると今年読んだ小説のなかでいちばんかもしれない。ぜったいにじぶんには書けない小説だった。世界文学のにおいがほのかにした。
6時半に起床してバナナとヨーグルトをコーヒーで流しこんで職場にむかった。職場には前夜のうちに下味をつけておいた鶏胸肉をもっていてレトルトのカレーにまぜて食した。12時間軟禁されたのちスーパーで半額品の総菜(これもやはりまた鶏胸肉)を購入し、帰宅してから玄米と納豆といっしょに食した。烏丸今出川の交差点にたくさんの消防車とパトカーが停まっていて、路上に放水のあとが残っていた。と、書いたところではたして原因はなんだったのかといまグーグルで検索をかけてみたのだけれどヒットせず、速報性ならばやはりこちらなのかと思いつつtwitter検索で「今出川+火事」と検索をかけてみると出るわ出るわのつぶやきが口をそろえて鳥貴族鳥貴族とかまびすしい。なるほど。Tと二度ほどいっしょに行ったことのある店舗である。
BCCKSからサンプル本が三冊届いていた。厚紙のような表紙だけはどうにかならないか。印刷も粗いといえば粗いが、しかし思っていたよりはずっとマシだった。
シャワーを浴びてストレッチをしてから(…)さんに小説の感想メールを書いて送った。朝一でとりあえず傑作でしたとだけ伝えるメールを送信していたのだけれど、短い感想ではあるけれどあらためて書きなおして送った。小説の感想メールを書くたびに思うのだけれどじぶんはとことん書き手の立場からしか小説を読めていないというか、いちど小説を書いてしまうとどうしても書き手目線に立たざるをえなくなるところがあって、じぶんには批評どころかまともな感想も書けないという思いがそのたびに強くなる。
以下、昨日の酩酊時に書き残していたテキスト。もっともっと深く潜ってバラバラに解体されてしまいたいと思うのだけれど、潜りすぎたら潜りすぎたで今度はまったく書けなくなってしまう、そのさじ加減がちょっとむずかしい。

きみを愛していたかった無理な話だったどだい不可能な挿話だった歴史に挿入しそびれたひとかけらのひとつぶのひとしきりのひとでなしのなみだだった
可能なかぎり愛していなかった、そのはずだった汽笛が鳴ったむかえはこなかったきみは死んだ
楽天的な船乗りと港できみは死んだ意味がついてこなかった意義だけが荷台にいっぱいだった
きみにふれたかったもっともっとふれていたかった期限のきれたきみと機嫌をそこねたきみがいた起源だけがなかった起源が
ふれていたらおかしくなるよ地球にひびがわれてしまう神の影におおわれた部分が夜だよ神は巨大だよ地球を足下にみおろすほどの巨大あのハゲじじい
歌っていたいよ踊っていたいよきみの遺体によりそいたいよ
少なく見積もって多少なりともの命が、よこしまな食事の機会をうしなっていま立ち往生している
総長!メジャーを!
ささやかな楽しみを 失われた片腕の分の補償をきみに 支払わせたのだ歯痛のように
地球の心音をひろいあつめる楽器をベースというベースをききとれない男はアホだ。そしてアホだけがつねにすでに世界を救う/巣食う。
おれがキーパンチをするたびごとに地球の裏側で一個の銃弾が飛ぶ因果


ゆるせないことがあったあまりにゆるせないのでいまなおくちにできないそれでゆるせないということをだれにもつたえられずにいる
また救うのか言葉で、きりたった言葉できみは言葉で手首を切る、言葉できりたった言葉で
(いいや、見つけない、きみはぜったいにみつけられない)
世界中に


地球の視線


とっておきがいつもとっておかれなかった
ひとの話し声のようにきこえるきみの歌声に和音を添えて風は吹きすさびれて雑念だけがかろうじて来世まで生きのびる
きみが抱きたい、といいたいいいたい相手がもういない、方角すらわからない故国の、だからいえない北枕だれにも足をむけられない
言葉の先に雨が降るそんな唄があった
それでもさえないままきみは絵描きになった路上で魂を売った悪魔の右手には塩がにぎられていた
かろうじて行方不明になった記憶があったこねあげてままごとをはじめたおとなのままごとだ死がすべてをつかさどる
かけらがなまってからだになった
ふたり!まるで!花瓶にいけられた殺人鬼のようにその瞳から漏れる涙のように
話したい、きみとマルクス主義について話したい、話したい、きみと覚せい剤について話したい、話したい


スト2の実写映画ではベガがバイソンでバイソンがベガでおれがおまえでおまえがおれで


ひとは死ねば犯罪者だれもがみな極道よろしくやってるんだトーテム背負ってあしたを語って
渇きだけが一丁前のガキがいった、これでもうおしまいだねぼくらからはなにもはじまらないね、
おれはガキの首を締めたすると静脈が浮きあがりそれがそのままこの列島の龍脈だった
おれは知ったたからかに歌われる唄のその歌声をたしかにうずまく天気予想図そのなかでうちわめくアイドルただの枕営業
踏むも踏まぬもないここまできたら指が語ることを脳がきく脳の手遅れ脳の周回遅れ
ステレオからアリストテレスが騙りかける、アムウェイ、そりゃだれもが手に負えない
バッハの生首がさらされた街角の一画できみはマネキンに命を吹きこんだ
だれにもやれないやりかたで、たしかな所作で、許された免許更新所の顔パスで


爆笑


小惑星の衝突から生ずる動詞、
詩のおわり。縦書きの悲劇。