20131120

知覚のプロセスを理解するとき、差異という概念が二度からんでくる。第一に、(地図―現地関係でいうならば――訳注)現地に潜在ないし暗在した差異がなければならない。そして第二に、その差異が知覚システム内でひとつの出来事に転換されなければならない。すなわち、その差異がしきい値を越え、しきい値との差異(ちがい)をもたなければならないのである。
グレゴリー・ベイトソン+メアリー・キャサリンベイトソン星川淳吉福伸逸・訳『天使のおそれ』より「自然と養育のメッセージ」)



10時半起床。腰痛緩和。12時より「A」推敲。14時半に終了。次いで表紙作成。いぜんより使いたいと考えていた拾いものの画像を表紙サイズにあわせてgimpで切り貼りして微調整。作業の途中に大家さんがぶりの煮付けを持ってきてくれたので温めなおさずにそのままがぶりといったのだけれど美味かった。大家さんの目的は家賃の催促だった。支払うのをすっかり忘れていた、というわけでもないのだけれど(…)滞在時に支払いを滞納してもろもろずれこんでしまったそのためにいまじぶんが何月分までの家賃を支払っているのかはっきりせず、それだから大家さんが催促にやってくるたびに適当に支払っておけばいいかというアレで投げっぱなしにしていたのだ。大家さんの記録帳によるとどうも今日支払ったのは11月分のものらしい。もう十日もすれば12月分を支払わなければならない。だいじょうぶ。まだ食いっぱぐれはしない。
17時前に一段落ついたのでぶつくさやりながら買い物に出かけた。ものすごく寒かった。尋常でない。それでも最高気温は14度で最低気温6度である。真冬のピークにくらべたら屁でもない。そう考えるとこの先にひかえている三ヶ月がすこしこわくなる。帰宅。ジョギングに出るためストレッチをしているとき、不意に丸刈りにしようと思い立った。それで押し入れのなかを探ってみたのだけれどどうしてもバリカンが見つからず見つかったと思ったら電気ひげ剃りで、そうこうするうちにテンションがさがってしまったのでふつうにジョギングに出かけた。つい最近までTシャツにユニクロのハーフパンツで走っていたような気がするのにいまやパーカーとスウェットのボクサースタイルである。そこそこ汗を掻いた。が、物足りない。そろそろコースを延長してもいいかもしれない。ぐるっとまわったあと北大路のほうまで北上するようにしようかな。
帰宅後シャワーを浴びてから夕飯をこしらえてかっ喰らった。玄米、納豆、冷や奴、マッシュドポテト&パンプキン、鶏胸肉をにんにくとしょうがと酒とかみりんとか醤油とかあとなんか適当な調味料で煮付けたやつ。ひさびさに腹がいっぱいになるくらい食った気がする。満腹すぎてちょっといますぐ横にはなれない気がするみたいなアレだったので仮眠のひとときを前にネットで適当な調べものなどしていたところ兄から着信があり、最初に頭に浮かんだのは両親いずれかの事故、次いで祖父の死で、というのも兄から電話がかかってくることなど滅多にないというかそれをいえば母親以外の身内から電話のあることがまず稀であり、それゆえに彼らから着信があるたびに必ずといっていいほど不吉な予感にびくつくことになるわけだが、折りかえしかけなおしたこちらの電話に出た兄の第一声が陽気なトーンだったので、セーフ!と思った。たずねたいことがひとつとよい報せがひとつあると兄はいった。よい報せ。去年発売されたばかりのMacBookAirを譲ろうかという提案。マジで!と声をあげると同時にやっぱり!とも思った。今年は欲しいものがことごとく(新人賞の賞金と丈夫な体以外はだいたい)手に入る年である。となればここ最近一日につき一度は必ずフリーズしてこちらをイラつかせる手元のMacの後継機がどこから転がりこんできてもおかしくはないぞなどと考えていたのだけれどほんとうにそのとおりになったというか、フリーズの頻度といいハードディスクの異音といいCDのスロットインの不調といい年越しをむかえることはできても来年の春まではもたないだろうと踏んでいて、それだから後継機を購入するための金を確保しておかなければならないとこのあいだ通帳をながめながら考えていたところにこのニュースで、単純計算して10万円浮いたようなものである。今年はマジでやばい。ありとあらゆる星座がこちらの頭上で輝いている。兄の話によると当のMacBookAirは欠陥品であったらしくいちど中に入っていたデータを巻き添えにして完全にぶっ壊れてしまい、それだからアップルセンターだかどこだかに送りつけて修理してもらう運びになったらしいのだけれど兄はプログラマーなのでパソコンがなければなにも仕事にならない、ゆえに会社の経費で最新型のMacBookAirを購入した、そうしてつい先日一ヶ月半にもわたる修理を終えて例の欠陥品がもどってきたのだがもはや不要である、というわけであんたどうやという話らしくて、いまじぶんの手元にあるMacはOS10.4で、つまりほとんど骨董品みたいなアレで、FireFox自動更新したらそのとたんにOS対応してません的なアレで使えなくなったりしてそれ以降Safariを使っているのだけれどすごく使いにくいしなぜかアクセスできないサイトが猛烈に増えたしでうざったいことこのうえないところだったのでこれは本当に助かるし、なによりバッグに入れて持ち運びするにはちょっとばかしでかすぎるサイズだったという難点もあってそんな悩みもMacBookAirならすべて1分で解決してくれるわけであってマジパーフェクト!今年はやばい。マジでやばい。Q.マヤ暦の終わりは何を意味していたか?A.わたしの幸運のはじまりです!
それでもうひとつの用件すなわちこちらにたずねたいことというのに話が映ったのだけれど兄の会社に面接希望でエントリシート?履歴書?違いがよくわからんのだけれどそういうアレを送ってきた入社志望の若い男がいて、それで履歴を見てみたらどうもこちらの高校時代の同級生にあたるらしい、というわけであんたこの◯◯って子どんな子か知っとるかなーて思うてさというのだけれど、完全無欠に聞いたことがない名前である。「ごめん!まっっったくわからん!」「やろな、あんたに聞いても無駄やわな」「でもまっ思いあたる節がないってことはヤンキーとかちゃうと思うで、アレやったら(…)にきいてみよか?」「あー(…)か、(…)はあんたより顔ひろいんかん?」「うん、あいつどうでもええやつのことまでよお知っとったりする」「そんならちょっと聞いてもろてええかん?」「あーでもあいついま仕事かもしれんわ」「ほならメールでかまへんし」「うんわかった、てか何聞いときゃええの?素行とか?あと勉強でけたかどうかとか?」「まあざっとした人間性やな」「わかった、ほならまたあとでわかりしだいメールします」「たのむわ」「ほいほい」。というわけで(…)にメールした。「◯◯ってやつ知っとる?おれらの高校の同級生らしいんやけど」「パイナップルやろ?」意味がわからないので電話をした。すると高校時代に仲のよかった(…)とおなじ中学出身のどちらかというとおとなしめで気弱で真面目な男であるという事実が判明した。「(…)がよくさあ、すれちがうたびにそいつの名前無意味に叫んどったやん。おい◯◯!いうて。廊下とかグラウンドとか実家の前通るときでもでっけー声で叫んでさあ」「ぜんぜん覚えとらん」「なんならあんたも叫んどったで」「なんでおれが叫ぶん?」「おれが知るか」「おれそいつと関わりないやろ」「ないんちゃう」「ほならなんでおれが叫ばなあかんねん」「知るか!」。仕事中であるところの(…)との通話をはやばやと切り上げてから問題なさそうな子みたいですと兄にメールを送り布団のなかにもぐりこんだ。15分の仮眠のつもりがうとうとしかけたところで兄からメールの返信があったために目が冴えてしまい、今日はもうこのまま後半戦にのぞむかと頭をきりかえることにして布団から出てパーカーを羽織りおもての水場で洗い物をしコーヒーを沸かしてからシットオンザアーロンしてここまで日記を書いた。ぴったし0時。(…)にパイナップルの意味をたずねるのを忘れた。おおかた髪型のことなんだろうが。おれもマイミクほしい……。
「A」推敲。17/53枚。読点の罠にまたひっかかってしまってしんどいしんどいたまらない。もっとおおざっぱな人間になりたい。
高校二年の冬、いろいろあって大学に行くことに決めたと先に述べた(…)に告げると、無理にきまっとるやろが、身の程を知れ、という返事があった。春休みの一ヶ月間で代ゼミのテキストをつかって中学から高校までの六年間分の英語の勉強を毎日やった。すると三年になってすぐの模試でいきなり校内3位に躍り出た。350人抜きだった。あの模試は問題がわるすぎるんじゃ、(…)はそう毒づいた、まあまあ今回はまぐれみたいなもんやろおまえ。だがまぐれはその後も続いた。三年の冬たまたまふたりきりになったとき、制限時間内にテストを終らせるにはどうしたらいいのかと、おずおずとした口調で(…)はたずねるでもなくつぶやいた。(…)の成績は伸びなやんでいた。どう答えたのかはおぼえていない。ただこいつが第一志望の国立大学に受かればいいのにと心底祈ったのをおぼえている。
(…)はFF10が大好きだった。そして地元の国立大学に受かった。(…)とはいまでもときどき連絡をとりあう仲らしいのだが、こちらは卒業してからいちども声を聞いていない。