20230703

 8時にアラームで目が覚めた。クソ眠かった。歯磨きをしてトースト二枚とコーヒーの食事をとる。だらだらしているうちに9時前になってしまったので、急用ができたので30分遅れると嘘以外のなにものでもないメッセージを(…)くんに送る。着替えて外に出る。午前9時で気温はすでに30度をオーバーしており、マジでアホか殺す気かよと思う。(…)楼近くの売店で夏休みにもかかわらず営業しているようだったのでミネラルウォーターを購入。リュックには冷やしたコーヒーも入っている。
 外国語学院の教室へ。(…)くんと(…)さんが先着している。ふたりのあいだに位置する座席に座り、きのう印刷しておいたプリントを渡す。去年こしらえたスピーチの型の説明したもの。「AとB、どちらが〜ですか」「あなたの(趣味、目標、夢など)はなんですか」「〜に賛成ですか、それとも反対ですか」の三種類に集約されるあらゆる質問に対して、結論→理由(1)→理由(2)→再度結論というカチカチの型で応じる練習のために使うもの。去年の練習では二度か三度やっただけでそれきりになってしまったが、今年はがっつりこいつをやることに決めた。今日は初日なのでめちゃくちゃ簡単な質問ばかりチョイス。午前は9時半から11時半まで、午後は14時半から17時までやったのだが、雑談などはさみつつ、全部で9題。「夏と冬、どちらが好きですか」「都会と田舎、どちらが好きですか」「文系と理系、どちらが好きですか」「お金と時間、どちらが大切ですか」「あなたの趣味はなんですか」「一番好きな授業はなんですか」「高校生の恋愛に賛成ですか反対ですか」「子どもがスマホを持つことに賛成ですか反対ですか」「大学の自習制度に賛成ですか反対ですか」。あらかじめ型を与えてあるので、学生が考える必要があるのは、結論とその理由をのべるくだりのみ。準備時間は10分で、発表時間は1分を目処とする。実際のスピーチコンテストで出題される即興スピーチのテーマはもっと難しいし、発表時間も2分であるのだが、今日はとにかく「型」を身体になじませるのが大事という意味で、短くて簡単なものばかり選んでとにかく数をこなすことを意識した。発表は本番同様ちゃんと立ってやってもらってそのようすをこちらがiPadで撮影。のちほど学生とそろってチェックし、文章のあやまりや発音のあやまりを指導というかたちをとったのだが、これがなかなかうまくいった、たしかな手応えがあった。学生のほうでも同様の手応えを感じているようす。ふたりともこちらが想定していたよりもずっとはやく「型」に慣れたようだった。

 今日は外国語学院の会議があったらしい。われわれが練習用の教室として使っている部屋はふだん日本語学科の教員らがひかえている職員室のような部屋であるので、会議が終わったところで、(…)先生——あいかわらず独り言が多い——や、(…)先生——謎にデカいサングラスをかけている——や、(…)先生——ひさしぶりに話したが、あいかわらずどこからどう見ても聞いても日本人のようでしかない、というか標準語にかぎってはこちらよりきれいなんじゃないかといいたくなるくらいの流暢さ——が部屋を出入りした。
 昼休憩になったところで(…)さんはいったん寮にもどった。こちらは寮にもどるのが面倒だったので(…)くんにたのんで外卖することに。(…)さんおすすめの猪脚饭をお願いしたのち、配達員が(…)医院のあたりにやってくるまでのあいだ、部屋の窓際に置いてある黒の皮張りのソファに横になってスマホをいじっていたところ、(…)先生がやってきた。とんでもねえ醜態を目撃されちまったぜという感じであるのだが、ま、こういうのもすでに何度となくくりかえしてきたアレであるのでかまうまい、実際、(…)先生もまったく気にしているようではなかった。(…)くんは来ていないのかと(…)くんに中国語でたずねるのがなんとなくききとれたので、彼はきのうN1受験を終えたばかりで疲れているだろうし、今日一日はもう休んでもいいよとぼくが伝えたんですよと横から引き取ると、あれ? 先生、中国語の聞き取りすごいですね! と褒められたので、あ、おれが一年生の学生に、きみは優秀! と褒めているときの感じってきっとこんなふうなんだろうなと思った。ついでなので(…)くんを指して、彼は一年生にもかかわらずかなりできる、即興スピーチもすでにかたちになっている、12月にはN1を受けるといっているし、すでに大学院受験も視野に入れているというと、(…)先生はニッコニコになって(…)くんを激励した。出国と帰国の予定をたずねられたので、15日に中国を出て来月の22日か23日に中国にもどってくると応じた。外国人教師の給料があがるらしいですねと(…)先生は突然言った。まったくの初耳だったので、そうなんですかとたずねると、10000元くらいになるらしいですよというので、は!?!?!?!?!?!?!? となった。こちらの給料は6000元スタート、勤続五年かそこらでようやく7300元だったか7500元だったかになったところであるのだが、それが突然、10000元? いや、いくらなんでもそれはないだろと思った。あるとしても、外国語学院の語学教員ではなく、博士号をもった他学部の外国人教授とかそういうアレが対象なんではないかと思ったが、しかしそうだとすれば(…)先生の耳に入るわけがない。(…)は先々学期いっぱいでやめてしまったし、(…)先生の話によれば(…)も年齢制限で先学期いっぱいで引退、すると外国語学院に所属の外国人教師は現状こちらと(…)のふたりになるわけで((…)先生の話によれば、いちおう英語圏の外国人教師が来学期ひとりやってくるようであるが)、大学全体で見てもそれこそ(…)がこのあいだグループチャット上で去ることを報告していたし、いずれにせよ、コロナ以前にくらべるとはるかに外国人の数が減っているのはたしかな事実で(ついでにいえば、留学生の数も減っている)、大学としてはこれ以上の流出は避けたいというアレがあるのかもしれない、(…)はいちおう現在一本大学という扱いになっているはずだが、大学を格付けするにあたっての基準に外国人教師が何人以上いるみたいなアレもたしかあるはずなので、だから、このままであるとやばいぞという判断が働いた、その可能性はある、そうだとすれば10000元という話もありえないことはないのかもしれない。ぬかよろこびするのもアレなので、あまり真剣に受け止めすぎないようにしたいのだが、しかしマジで10000元になるのであれば、日本円にして毎月の給料がいきなり5万円ほどアップする計算になるわけで、おいおいおいおい、淘宝で服買いまくったろかいな!
 外卖を引き取りにいくために(…)医院へ。しかしこちらの分を注文してくれた(…)くんが誤った住所を指定してしまったらしく、注文は結局キャンセルという流れになった。しかたがないので、近所のハンバーガー店でハンバーガーとポテトとナゲットとコーラのセットを買った。(…)医院ではひさしぶりに便所を借りて小便したのだが、男子便所に入った瞬間、あまりの悪臭に死んだはずの嗅覚がよみがえったのでマジで爆笑してしまい、のちほどモーメンツでわざわざ報告してしまった。卒業生の(…)さんからうんこを食えば味覚障害も治るんじゃないかというコメントが届いた。
 教室にもどってメシを食う。(…)くんはVPNを噛ませてTwitterのアカウントもFacebookのアカウントもInstagramのアカウントも作成している。アカウント名はすべて「(…)」だというので、アニメのキャラかなんかの名前? とたずねると、じぶんで作った名前だという。English nameみたいな感じでJapanese nameを作ったのだというので、日本にいる外国人はふつうそういうのを作ったりしないよといったが、ま、本人が楽しんでいるようなので良しとする。ちなみに読みは「(…)」だというので、この字面だったら普通は「(…)」か「(…)」だと思うよ、どちらにしてもちょっと女の子っぽい名前だけどというと、じゃあ「(…)」にするという返答。Twitterでは男の娘をフォローしているという。すごくエロい動画をたびたび投稿していると言ったのち、こちらにスマホの画面を向けてみせたのだが、女装した男性がスカートをたくしあげてM字開脚状態になり、床にたてたディルドにケツの穴をしずめて腰を上下させているもので、違法覚悟のVPNを噛ませてまでなにみとんねんと思った。くだんの男の娘は中国人だという。中国では男の娘がとても人気だと(…)くんはいった。牛子という言葉を知っているかというので、知らないと応じると、ちんこの隠語だという説明があった。男の娘界隈でのみ使用される表現であり、看看牛子などといったりするらしいのだが、界隈に属していない人間には意味がわからないだろうとのこと。こうしてまた使いどきのおそろしくかぎられる中国語をおぼえるはめになってしまった。
 14時半から練習再開。17時になったところで終了。后街に行くという(…)さんと別れて、(…)くんとそろって寮にもどる。徒歩の彼は地下道を抜けて老校区から新校区に移動すればいいが、ケッタのこちらはそういうわけにもいかないので、外国語学院を出たところでさよならのつもりだったのだが、ケッタを抱えて地下道を抜ければいいという無理やりな提案があったので、しかたなく付き合った。(…)くんはいっしょに瑞幸咖啡にいきましょうと続けた。さすがに朝から夕方までずっとぶっ通しでいっしょにいたわけであるからもういいでしょうというアレがあったし、なにより夏休みのあいだはキャンパス内の瑞幸咖啡は閉店しているはずなので、今日はもう帰ろうと応じた。
 それで帰宅。しかし豚肉を解凍して米を炊いてとする余力がすでになかったので、適当にカットした野菜をタジン鍋にぶちこんで蒸し野菜をこしらえ、それを出前一丁といっしょに食うというクソ適当なアレで夕飯はすませた。食後はシャワーを浴び、ストレッチをし、ひとときだらだら過ごしたのち、きのうづけの記事の続きを書いて投稿。ウェブ各所を巡回し、2022年7月3日づけの記事を読み返し、2013年7月3日づけの記事を「×××たちが塩の柱になるとき」に再掲。そのまま今日づけの記事も書きはじめるも、23時半になったところで中断し、ベッドに移動して『異常論文』(樋口恭介・編)の続きを読み進める。今日は「世界の真理を表す五枚のスライドとその解説、および注釈」(草野原々)、「INTERNET2」(木澤佐登志)、「裏アカシック・レコード」(柞刈湯葉)、「フランス革命最初期における大恐怖と緑の人々問題について」(高野史緒)を読んだ。