20230708

 記録をとりわすれているので正確なところはわからないのだが昼前に自然と目が覚めて結局スピーチの練習が終わるなりマジでいつもの生活リズムになったなという感じであるのだけれどもそれでいえばこの日はドリルの騒音で起こされることがなかった、ただ工事は続いているみたいで上の部屋なのか下の部屋なのかあるいはとなりの部屋なのかわからないがしょっちゅう家具を動かす音がたったり床や壁をカンカンドンドンする音がたったりした、ドリルにくらべれば全然たいしたことないので耳栓さえ装着していれば朝も問題なく眠ることができるのだったがそれでもときおりはイライラするほどうるさいことがあってそういうときはついつい叫んでしまう、うるせえとか死ねとかボケとか巻き舌で口にしてしまう、しかしこれはもういびきや寝言のようないわば生理的反応であるので仕方ないということにする。
 トースト食って洗濯機をまわしてまずはたまっている日記を率先して片付けることに決めておとついづけの記事にとりかかって17時に中断した、中断した時点ですでに書きあげていたのかどうかはよくおぼえていないがとにかく時間が時間なので中断してそれからケッタにのって(…)に向かった、(…)ではもちろん食材を買うつもりだったのだがその前にまずは(…)で担担面を食うことにした、大盛りにしたかったのだが中国語で大盛りとはなんというのかわからなかったのでスタバで注文するノリで大杯! 大杯! とくりかえすと店のおばちゃんが大份かみたいなことをいってそうか大盛りは大份というのだなといまさら理解した。スタッフはちょうど休憩中だったらしくそのおばちゃんともうひとりのおばちゃんとさらにひとりこれは初顔であるのだが若い男が入っていてこの男は声が異常に高くハスキーで最初女性なのかなと一瞬思うくらいだったし年齢もよくわからない、中学生くらいのようにもみえるし大学生くらいのようにもみえる、おもしろい声質をしているし歌でもうたえばいいのにと思った、浅井健一みたいな声だったりするんじゃないかと勝手に想像した。
 大盛りで腹いっぱいになったあとはそのまま(…)に移動して豚肉だのパクチーだの長ネギだのトマトだの冷食の餃子だのを買った。帰宅後はどうしたのだったかよくおぼえていないがおそらくだらだらした、そしてだらだらするのにも飽きたところでシャワーを浴びて気分を一新してふたたびデスクに向かってキーボードをカタカタ打鍵しはじめたのだがおとついづけの記事に続けてきのうづけの記事にとりかかったもののこれは最後まで書き終えることができなかった、0時ごろに作業を中断して冷食の餃子を食った。

 作業中に卒業生の(…)さんから微信が届いたのだが9月16日に(…)にもどるかもしれないというもので実家が深圳にあるにもかかわらずここでもどるという表現を用いたのは彼女の父方か母方かわからないが祖父母宅が(…)省にあるからなのだがたぶんその関係の用事でもどることになったのだろう、ついでに二年ぶりに会って食事でもしませんかという誘いでこれは当然受ける、彼女はこちらが赴任した当初すなわち教師一年目だったときにおなじく大学一年生だったクラスのもっとも積極的かつ優秀だった学生のひとりでいまは華南師範大学で院生生活を送っているはずであるがあと一年でたしか卒業の予定であるから今年の年末年始にかけておそらく修士論文の添削を手伝う必要があるだろう。(…)さんは(…)の学生であるがおなじ学年の(…)の学生である(…)くんからも連絡があってそれはたぶん彼の元クラスメイトであり現在カフェを経営している(…)さんがモーメンツにコーヒーに関するイベントに出場した旨を投稿していたのにこちらがいいねをつけたそのようすを見てたぶんこちらがなつかしくなってコンタクトをとってきたということなのだろうが(…)くんは在学時代日本語はほぼまったく勉強しておらずクラスでも最下層に位置するひとりであったのだが卒業後は高校の日本語教師として働きはじめたという話をやはり元クラスメイトである(…)くんから聞いていてあのレベルで面接クリアできる高校なんてあるのかよとびっくりしたところ面接はカンニングをしたのだコロナの時期だったのでオンライン面接だったのだが近くに日本語の達者な人物を配してそのひとから答えを教えてもらうかたちで乗り切ったのだということだったがその話をはじめて聞いたときこちらのあたまによぎったのは百歩譲ってカンニングはよしとするにしてもその後基礎もなにもできていない状態で教師がつとまるのだろうかじきにボロが出るのではないだろうかというアレで実際にボロが出たのかどうかは知らないがいまは日本語教師をしていないという、「北京の国有企業」で働いているということで具体的にいうとHUAWEIのエンジニアとして北京で働いているというのだがエンジニアの務まるような技能なんて彼にはまったくなかったはずであってこれはいったいどういうことなのだろうと思ったが「家は国有企業の仕事を手配しています」とあったから察するに親族のコネで無理やり入社させてもらったということではないだろうか、実際「仕事は難しくもなく、忙しいわけでもありません。コンピューターも仕事をしながら勉強しています」とのことで彼の学歴や能力や資格からしてそのように好条件の職場にもぐりこめるとは思えない。
 学生ふたりだけではなく(…)からもLINEが届いていよいよ一週間後に近づいてきた帰国にあたってさてなにを食うかという話で帰国は15日の夜になるからその日ではなくおそらく翌日のことだと思うのだがどこかちょっといい店の予約をとるつもりでいるのだがおまえの味覚はまだもどっていないのかという質問だったので味覚は半分くらいもどってきているので十分楽しむことはできると返信を送った。それから多少世間話のようなものを交わしたのだが日本はやはり欧米ほどではないけれども物価がけっこう上がってきているとのことで中国はどうなのかというので外様として生活している分には特にこれといった変化は感じない、しかし赴任した当初は1元が16円ほどだったのがいまや20円になっているわけでこの変化の大きさはけっこう感じる、学食で腹いっぱいメシを食うにあたって以前は日本円にして320円ほどだったものが400円になっている計算になる。
 数日前の日記にひとつ書き忘れていたことがあるのだがスピーチ練習の昼休み中に(…)くんが鼻歌を歌い始めたその鼻歌というのに聞き覚えがあった、街中を歩いているとやたらと耳にするメロディで一昨年の再入国以来マジでいたるところで耳にしたためにこれを書いているいまそのメロディを思い出すことはできないのだがたとえば外で流れていたりあるいは学生が口ずさんでいたりすればあああの歌だなと同一性を認めることができる程度にはこちらの耳にもなじんでいる、それでそれは有名な流行歌なのかとたずねると元は日本の歌ですよ『深夜食堂』の主題歌でしたという返事があってたいそう驚いたのだった、高橋優という人物の「ヤキモチ」という曲で(…)くんはすぐにアプリで流してくれたがまったく聞き覚えがない、こちらが知っているのはあくまでも中国語バージョンでありその旨伝えると中国ではさまざまなアーティストによってカバーされている大人気曲なのだという返事があった。そのことをこの記事を書いている最中に、ではなかった、きのうづけの記事を書いている最中にふと思い出したのでググってみたところWARNER MUSIC JAPANのウェブサイトに「高橋優「ヤキモチ」カバーが中国で大ヒット!ラージャオ世界デビュー」という2020年5月13日づけの記事が見つかった(https://wmg.jp/lajiao/news/85149/)。

 現在、中国で17億回以上の再生数を記録している女性シンガー「ラージャオ」の人気が急上昇している。
 「ラージャオ(中国語表記:买辣椒也用券)」は、2018年春にドラマの主題歌として国境を越えて中国で人気のあった高橋優「ヤキモチ」(2014年12月発表楽曲)を自身の友達に向けて歌った動画が配信サイトにアップされると、圧倒的な歌唱力と美声に多くの音楽ファンが反応し瞬く間にSNSで中国全土へと拡散、そのカバー動画が5億回以上再生されるまでに話題を呼んだ当時趣味で音楽をやっていただけのごくごく普通の女子大生で、同年5月に話題が海を渡り日本の音楽関係者の耳にとまると1人の音楽プロデューサーが中国へ訪問、本格的な世界デビューへの熱烈なオファーを受けそれを承諾し、一夜にして世界に羽ばたくアーティストへと変貌を遂げることになった。
 その後、彼女は日本へ渡り高橋優本人とも対面、当時の高橋優「ヤキモチ」オリジナル音源参加メンバーにより楽曲を再録音。2018年12月にネットイースより再リリースすると、瞬く間に脅威の5億回再生を記録、現在に至るまでにトータルで17億回以上再生されている。
 そして2020年1月後半、中国にてコロナウィルスが蔓延、旧正月にもかかわらず各地に実家に帰れない人達があふれていた中、外出自粛期間が続き、連日報道で悲しいニュースが流れる状態が2か月も続くと、音楽が唯一の感情表現の手段となり「起风了」を聞いて「会えない人への想い」「戻れない頃の想い出」に想いを募らせる人達が再度急増。「起风了」は発表から2年たった今年、改めて幅広い層から支持を得て、ラージャオの楽曲は中国の各配信サイトでランキングTOPを記録。そして更に世界中の同じ想いを募らせている人々にむけて、本楽曲を2020年5月に日本を含む全世界にて配信することが決定した。
 今回のリリースは、「起风了(英題:The Wind)」に加え、オリジナル楽曲の「旧岛看月亮(英題:Gaze at)」の2曲となっており、2020年1月には資生堂「Za」のリブランディング広告への楽曲タイアップも決定。中国、香港、台湾、シンガポールでの展開を予定しており、世界には羽ばたく中国の歌姫「ラージャオ」の活躍から目が離せない。

 この記事をみるかぎりコロナ流行以前すでにある程度ブームになっていたようだがこちらはその当時この楽曲をきいたおぼえはない、コロナ以前といえば、というかそれこそ赴任した直後くらいだと思うのだがやたらとあちこちで耳にしたのはAlan Walkerの“Faded”でマジでどこでも流れていてうっとうしかった、あの当時の“Faded”にくらべたらこの「起风了」はまだおとなしいほうかもしれない、いやそれはわからない、いずれの楽曲もまったくこちらの趣味ではないのだがしかし記憶に結びつく一曲にはなるんだろうなという気はする、音楽としてではなく記憶のフックとしてたとえば十年後や二十年後これらの楽曲をなにかの拍子に耳にするなり(…)の風景があたまのなかでよみがえるということはあるのかもしれない、そういえば村上春樹の『ノルウェイの森』は飛行機の機内で記憶のフックになる楽曲を耳にして体調を崩すみたいなシーンからはじまるのではなかったか、『ノルウェイの森』は読書をはじめてまもないころであるからおよそ15年か16年ほど前かその当時に一度読んだきりなのでよくおぼえていない。