20230817

 正午過ぎ起床。仕事休みの父が朝から庭の草むしりをしていたらしく、いっしょに庭に出ていた(…)がキャンキャン鳴くのを眠りのなかで何度も耳にしていたわけだが、階下におりるとその父が、さっき(…)がモンキチョウを軽々とした足取りで追いかけた! といった。つまり、きのう打った注射が効いているのだ! というわけだが、まだはっきりとはわからない。それから(…)は今日も室内でうんこをしたらしい。朝、母が風呂に入っているあいだに、居間に大量のうんこを漏らしていたという。例によって快便であるので、処理にはさほど困らなかった。拾って流してファブリーズをふきかけるだけ。
 (…)さんから返信が届いている。こちらの提案が気に入ったようす。とりあえずその路線で原稿を書き直してみるという。歯磨きしながらニュースをチェックしたあと、冷食の炒飯をレンジでチンしていると、出かけていた母と弟が帰宅した。母は日赤で心臓の検査を受けた帰り。とりあえずいますぐどうのこうのという話ではないらしい。次の発作が生じたときに今回処方されたニトログリセリンを服薬してみて、それで効果が出るようであればおそらく(異形)狭心症であることがほぼほぼ確定するだろうとのこと。いちおうカテーテルを使った検査などもあるようなのだが、担当医がじぶんであればわざわざ受けたくないと口にしていたというので、ちょっと笑った。同時にその担当医は、カテーテルを使った検査をすること自体はかなり好き(!)であるらしく、もし母が検査を望むのであればいつでも付き合うとも口にしたらしくて、なかなか変わった人物だ。ついでに血液検査も行ったらしく、その結果も出たというのだが、医者が驚くほど健康的な数値だったらしい。少なくとも血液に関しては今後二十年は心配しなくてもいいとのこと。母の血筋はみんな長命で、母の母、すなわちこちらの祖母は90歳以上であるがまだ生きているし、彼女はたしか7人姉妹だったろうか、平均寿命よりはやく死んだのはそのうち1人だけで、あとはたしか全員が90代まで生きていたのではなかったか?
 弟がミニストップの白桃パフェを全員分買ってきてくれたので、炒飯と一緒に食った。食後はコーヒーを飲みながら『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』(乗代雄介)の続き。こちらも抜き書きノートを復活させようかなと思った。抜き書きしたものは日記に含めて投稿しているわけだが、それとは別に、抜き書きだけを集めたものをPagesにまとめたうえで、参照しやすいようにすべて印刷してノートにしようかなと思ったのだ。きのうづけの記事にも書いたが、無印のノートに手書きで抜き書きしまくっていたのがたしか五年ほど、その後手書きからデジタルに移行ということでほんの一時期だけEvernoteを使っていたのだが、あれはまだ生きているのだろうか? データは残っているのだろうか? それで気になってアクセスしてみたところ、アカウントはすでに削除しているふうであったが、メアドとパスワードを打ち込むことによって一度削除したはずのそのアカウントを復活させることができた。で、確認してみたのだが、Evernoteに抜き書きをためていたのは2011年1月から同年4月ごろまでらしい。そんなに短かったっけ? たったの三ヶ月? もしかしたらアカウントを削除する前に一部データを削除したのだったかもしれない。とりあえずここに残されている抜き書きだけでもPagesにまとめなおして印刷することに決めた。で、それがすんだら押入れに収納されているダンボールのなかに入っているはずの抜き書きノートも一冊ずつ、読み返しを兼ねて手打ちでPagesにインポートしていくのもいいかもしれない。かなり七面倒な作業になるし、時間も要するだろうから、中国にはとりあえず最初の一冊だけ持っていけばいいか。一学期ごとに一冊ずつを目処にインポート作業を進めていこう(こうしてまた中国語学習が遠ざかるわけだ)。
 母と弟とそろって外出。弟が古いスピーカーだのプレステ2だのを処分するというので、(…)団地のごみ収集場へ。こういうものは処分に金がかかると思っていたのだが、どうもそういうわけでもないらしい。その後、図書館へ。予約していた本を借りにいくという弟に『風呂』(楊絳/中島みどり訳)を渡してついでに返却を頼む。それから(…)。無印良品で値下がりしていた長袖シャツを一枚購入。それからペットショップで(…)のおやつのほか、部屋でうんこを漏らしてもいいように子犬のときに使っていたシートを買う。(…)、いまでもそのシートのことをおぼえているかどうかは不明。母によれば、子犬のころはそのシートの上で小便もうんこもするものとの思い込みがかなり強く、散歩をするようになってもしばらくのあいだは決して外で用を足そうとはせず、急ぎ足でうちにもどってからそのシートの上で小便なりうんこなりをしていたとのこと。
 懲りない男であるので宝くじ売り場でロト6を1000円分購入。母がスクラッチくじに興味あるようだったのでそちらも2000円分購入。帰宅してからさっそくスクラッチくじのほうを削ったが、最低限度保証額である600円のみ的中でクソが! どこが神都やねん! 600円のカードは弟にやった。
 (…)を連れて(…)へ。スピッツの(…)くんとフレンチブルの(…)ちゃんと会う。(…)はどちらともいい雰囲気であったが、(…)ちゃんのほうがこちらにも父にも母にも飛びかかって甘えたからだろうが、あるいは母が手持ちのおやつを分け与えたからだろうか、途中で(…)がうなる一幕もあった。(…)は本来大型犬が苦手であるらしいのだが、なぜか(…)相手には問題ないようす。(…)の足腰はやはり危なかった。今日はうんこを気張っている最中にこてんと横倒しになってしまった。それでも両親がいうには、いつもよりはずっとしっかりしているようにみえるという。そう見たいというアレもあるのだろう。
 帰宅。夕飯。ロト6の結果がさっそく発表されたので確認してみると5等的中! 1000円ゲット! もとがとれたので、先のスクラッチとまとめて当選カードを弟にゆだねた。合計1600円。全額ふたたびロト6にぶっこむようにと伝える。これでこちらが客死することがあれば、この言葉が遺言ということになる。
 入浴し、ストレッチし、コーヒーを飲みながらきのうづけの記事の続きを書いて投稿する。ウェブ各所を巡回し、2022年8月17日づけの記事を読み返し、2013年8月17日づけの記事を「×××たちが塩の柱になるとき」に再掲。それから今日づけの記事も一気呵成にここまで書くと、時刻は1時前だった。(…)さんのブログで郡司ペギオ幸夫の新刊『創造性はどこからやってくるか 天然表現の世界』が出ていることを思い出したが、『天然知能』もまだ積んだままだ。購入は次回の帰国時でもいいか。

 夜食は米と納豆とめかぶとたまごスープ。歯磨きをすませて間借りの一室に移動したのち、『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』(乗代雄介)の続き。最後まで読み終える。いがらしみきおのI-IMONとG-IMONの話はかなりラカン精神分析っぽかった。読むべき本を読み終えたので、これで出国までの残り数日は授業準備にあてることができる。

 いい文章が書きたい。いい文章が読みたい。
 その思いは、自分の意見というものがあるとして、そいつを殺した上で、乗っ取りかねない。もしかしたら、「いい」ものが書けることに比べたら、意見なんて何ほどのことでもなくて、「いい」ものが書けたからそれを意見に採用しているだけかもしれないのに、書けたら書けたで証拠ができたとばかりに、自分の確固たる意見なのだと信じている。
 人が自分の意見を曲げないのは、その意見が美しいと信じているからかもしれません。小林秀雄が「美しい花がある。花の美しさというものはない」と言ったことを、まわりまわせばそういう意味にもなりそうだ。
(乗代雄介『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』より「ワインディング・ノート」 p.522-523)

「自分が死んだって、自分たちのことは誰かが、何かが見てる。虫麻呂が手児奈を見たように、時空も嘘も本当もすっ飛ばした目が君を、いつ何時も何度でも見てるんだ。そう信じて、信じるためには自分の目を磨くんだ。他の誰でもない、自分の目だ。その目が、この世界のあらゆるものの中でもこれは本当に美しいと自分に信じさせるいくつかをまったく自然に見出して、それがこの世のものとも思えない時、君はまさか、その目が自分のものであるとは到底思えない。そして、それは本当に、実際その通りなんだ。その目——というか美しいものを映し続けるためにせっせと膨らんだり縮んだりする水晶体は、誰のものかもわからずに君が使っているだけのもんなんだ。すると、今度は水晶体の向こうから、君を見ている者の存在を思わずにはいられない」
(乗代雄介『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』より「虫麻呂雑記」 p.580)