20231124

 このような主体のジェンダー構造を把握したうえで今一度日本近代国家とジェンダーの関係に戻ると、西洋との関係で日本国家=天皇制がもった従属的・受動的性格と、世界において男性との関係で女性教祖の新宗教がもった従属的・受動的性格は一見相同のようだが、両者は女性の側のジェンダー変数の特異性によって性格を異にた。そしてそれゆえに両者は激しく衝突した。この点をより詳しく見てみよう。
 確かに、日本近代国家(天皇制)と女性教祖の新宗教の両者は、世界において従属者の側にあることで相同である。すなわち通常、支配者はみずからのもとにある支配的言説に自分自身も拘束されるのだが、これに対し、支配者が従属者の側にある場合、支配者は女性的場所に立ち、言説は幻想に従属し、その結果言説の明示的分節は二次的なものとなって、支配者は自らの言説に拘束されないこととなる。このとき、言説は、本質的には真の支配者たる西洋や男性のものであり、従属的支配者としての日本国家(天皇制)や女性は、その言説の正統性を保障する責任を免れて、逆にそれを批判したり、否定することで自らの正統性を維持できることとなり、幻想を保持することができる。これは精神分析でヒステリー的構造と呼ぶものであり、知の否定において存在を定立する構造である。近代日本国家が一方では西洋知を導入しながら、そのアイデンティティの核に西洋知の否定をおいたのは、天皇制では明らかであり、みきやなおの教義が詩であり歌であり制度化や教義化を拒んだのも、知に対する否定をとる構造によるものであった。しかし、両者の違いを見ていくと、天皇制は一方で多くの知や制度と結合したのに対し、女性教祖の新宗教はすべての制度や知を基本的に否定しており、否定はより徹底したものだった。天皇制は、いかにそれがコロニアルな性格をもっていても、自らが自らを定立する時に完全に言語を排除するわけではない。これに対し、女性は主体として世界に定立する時、もともと(男性)天皇制以上に知=言説から排除されており、それが徹底的な知と権力の排除という指向につながる。このように、たとえ西洋に対して受動的な場をとっていても、日本国内においては能動的な場所を予めとっている男性は、完全な言語の否定には至らない。これに対し、女性は、ジェンダーにおける知や言説からの排除ゆえ、ヒステリー的な知の否定へと向かうのである。
樫村愛子『「心理学化する社会」の臨床社会学』より「新宗教の女性教祖と日本近代国家」 p.350-351)


  • 10時前起床。はじめて寝違えの回復を実感した。まだ痛みは残っているし、首まわりの動きもかたいままであるのだが、昨日よりもよくなっているという明確な感触があったのだ。よかった。
  • 仮病一日目なので外に出ることはできない。鍋いっぱいにカレーをこしらえる。今日一日はこいつを食って過ごすのだ。具材は豚肉とたまねぎとにんじんとトマト。じゃがいもは邪魔なので入れない。じゃがいもが好きだという人間が理解できない。別にまずいわけではないし、出された皿に入っていたら普通に食いもするが、あんなもんわざわざ好きこのんで食すもんでもないだろ。じゃがバターはうまいけど。カレーはたまねぎたっぷりだったためにか、やたらと甘くなった。
  • 洗濯。きのうづけの記事の続きを書いて投稿。ウェブ各所を巡回し、一年前と十年前の日記の読み返し。以下は2022年11月24日づけの記事より。コロナ対策関連の記録。

 10時前起床。(…)から通知が届いている。(…)に今月15日以降訪れた人物はいるかという。大学の中にある理系の建物のことかなと思ったが、そうではなくて、独立した別の学校らしい。当然行ったことはない。たぶんそこで感染者が出たのだろう。(…)からはその一時間後、さらに別の通知が届いた。昨夜大学のオンラインミーティングがあった、(…)には現在26000人以上の学生と職員がいる、しかるがゆえにコロナ対策もほかの地区に比べると困難を伴うことになる、その結果28日までキャンパスを封鎖することに決まった、その間外卖や快递の受け取りも禁止になるしキャンパス内を移動するあいだはマスクを装着する必要もある、協力よろしく頼むとのこと。ちなみに、(…)では学生ふたりが大学の外に脱出したというケースが認められたらしい(詳細は知らないが、おそらく退学処分になるだろう)。(…)はいまのところ問題ないとのこと。

  • 以下も2022年11月24日づけの記事より。ちょっと笑った。

 帰宅。メシを食う。メールをチェックする。AmazonからKindleのおすすめ本として『ごんぎつね』を紹介するものが届いていたが、おまえな、おれみたいな外見のやつがおもてでKindleの『ごんぎつね』読んどるとこちょっと想像してみろ、そんな風景どう考えても世界のバグやろ! と思った。

  • 14時半から授業準備。「(…)」の結果をまとめ、「(…)」リミックスの編集。
  • 17時に作業を中断。米を炊き、カレーと一緒に食う。食後は仮眠。うつらうつらしはじめたタイミングで上がうるさくなるというのが二度続いたので、むずがる赤子のようにキレ散らかしてしまった。
  • シャワーを浴びたのち、編集作業の再開。完成するころには23時になっていた。しかしいいものができたと思う。これまででもっとも長いものになったかもしれない。明日もう一度確認する。
  • 夜食はカレーとトースト。寝床に移動したのち、Bliss and Other Stories(Katherine Mansfield)の続き。最後まで読み終わる。最後に収録されていたThe Escapeという作品にまったくおぼえがなかった。そのまま『ヴァリス』(フィリップ・K・ディック山形浩生訳)を読みはじめる。