20231206

“Take it yourself, darling,” said she. “Run down just as you are. No, wait, take the arum lilies too. People of that class are so impressed by arum lilies.”
(Katherine Mansfield, The Garden Party)


  • 9時ごろ起床。(…)くんから先生がきのう言っていた漫画はこれかというメッセージとともに『吾輩は猫である、職業はバリスタ。』という漫画の画像が送られてきたので、そうではない、『ラーメン赤猫』という漫画だと返信。
  • 第五食堂へ。饭卡にチャージしようとしたが、なぜかできなかった。大学から支払われる今月分の金額はすでにチャージしたということになっているようだったが、チャージしたおぼえはない。いや、チャージしたのか? いずれにせよ残り金額が少なくなっているので、第四食堂にある窓口で直接チャージをする必要があるが、それは明日でいい。今日のところは残り少ない金額で炒面を打包。
  • (…)から微信。帰国するのは13日かというので、13日であるが(…)を出るのはその前日の12日だと返信。その後、(…)からあらためてメッセージが届く。警察署の関係者と電話したのだが、resident permitを今週更新するのははやすぎる、来週であれば問題ない、仮に来週パスポートをあずけたとしても1月10日までには確実に手元にもどってくる、だから手続きをするのは来週の月曜日すなわち10日にしないか、と。了承。しかし時間にきわめてルーズな社会で出国前ぎりぎりにパスポートを受けとる段取りでことをすすめるのはちょっと不安でもある。というかresident permitについては、例年どおり更新するのではなく現状のブツはいったん廃棄してあらたに取得しなおすという方法を選択すれば、はやめに手続きを開始することもできるという話であったし、そういう方向でことを進めていたんではなかったっけと思うわけだが、まあ通常更新できるのであればそちらのほうが国際交流処側にとっても都合がいいのだろう。
  • 帰国の段取りについていえば、(…)からもLINEがあった。1月13日の帰国当日は(…)家で一泊させてもらう予定だったのだが、どうやら(…)ちゃんがその日程を忘れてしまっており、友人をその日招く計画をたててしまったらしい。こちらとしてはそれならそれで別にかまわない。京都駅近くのカプセルホテルにでも一泊すればいいわけであるし、一ヶ月以上日本に滞在する予定になっているのだから(…)家とも別の機会に顔を合わせることができるだろう。
  • 作文。12時過ぎから15時過ぎまで「実弾(仮)」第五稿。シーン9をいじる。むずかしいところなどほとんどないシーンであるはずなのだが、なぜかやたらと時間がかかった。あまり集中できていなかったのだと思う。
  • 作業中、三年生の(…)さんから微信。また部屋にくるという話だったらどうしようと身構えたが、そうではなかった、唐辛子をやまほどぶちこんだ螺蛳粉の写真が送られてきただけだった。不辣だというので、信じませんと返信。
  • きのうづけの記事を投稿し、ウェブ各所を巡回し、一年前と十年前の記事を読み返す。以下、2022年12月6日づけの記事より。

 私は何か選択するとき、コインを投げて決める。コインが地面に落ちた瞬間に心の感触を見極めるのだ。もう一度投げたいと思ったのか、安堵のため息を漏らしたのか、その一瞬に自分の本当の願望や自分の気持ちの方向が分かる。
(郝景芳/櫻庭ゆみ子・訳『1984年に生まれて』)

  • 17時半に西門で三年生の(…)さんと(…)さんと待ち合わせ。新疆料理の店へ。串に刺さった豚肉だの牛肉だの羊肉だの野菜だのが冷蔵庫に入っているのをじぶんでピックアップしてカゴに入れ、それをスタッフに手渡すというシステム。店員はもちろん全員新疆人。顔立ちが完全に非アジア的。こちらは野菜は白菜のみにとどめて、あとは牛肉だの羊の腰肉だの豚の肝臓だのを適当にチョイス。味付けは唐辛子抜きでお願いする。女子ふたりは見るからに少食。かごに放りこんだ串の本数もとても少ない。それでいて会計はふたりでもとうとするので、それはダメだと制する。90元ちょっとだったので、こちらが50元ちょっと払うし、残り40元をふたりで割ってくださいと伝えたが、ふたりともそれはおかしいと首をたてにふらない。結果、あいだをとって、こちらが40元ちょっと払い、残り50元を学生ふたりで割ってもらうことにした。
  • ふたりと授業外で会うのは今回がはじめて。予想通りであったが、会話はかなり困難。しかし(…)さんのほうはまだいくらか聞き取りができるようだったので、一年生を相手にするときのモードで、一文一文を短く区切り、かつ、簡単な単語をチョイスしてコミュニケーションを試みる。能力にもいくらか問題があったが、それ以上にこちらを前にしてなにを話せばいいのかと緊張していることがまるわかりだったので、まずはそこをなんとかしなければならんなと判断、そこで(…)さんには彼氏がいるという話をきいたことがあったのでその話題をふった。(…)さんだけではなかった、(…)さんにも彼氏がいるらしかった。そしてこちらの予想通り、話題がこの方面になると、ふたりとも口数が増えた。(…)さんはいまの彼氏と付き合って半年ほど。大学入学後ふたり目の彼氏。しかし先日の手相占いの「先生」からは、結婚するのは26歳で、三人目の彼氏だと言われたという。相手は(…)市内にある別の学校で電子機械なんちゃらを勉強しているとのこと。のちほど写真を見せてもらったが、身長180センチのスポーツマンだった。(…)さんは彼氏ともう二年付き合っている。彼氏は(…)さんの故郷である(…)にある大学で電子商取引を専攻している。
  • メシはやはりうまい。女子ふたりはあきらかに食べる量が少なかった。特に(…)さんは串を三本程度しか食っていなかったと思う。こちらは六本か七本食べていたのだが、それでも足りなかったので、さらに二本追加した。追加の際、店員の男性が羊の骨で出汁をとったスープを無料で提供しているぞと教えてくれたので、紙の器にそそいでもらってパクチーを山盛りぶちこんだ。店員の男性はこちらが日本人であることを知ると、ひげが生えているからおれたち新疆人のようだといった。スープはべらぼうにうまかった。どんな肉よりもこのスープがいちばんうまい。
  • ルームメイトについてたずねる。ふたりはもともとは(…)さんらのルームメイトだったが、なにかしら揉めて寮を出たらしいという話を以前(…)さんから聞いたおぼえがあるので、そろって大学の外にアパートを借りて住んでいるのだろうと思っていたのだが、そうではなかった、寮にある別の部屋で生活しているらしかった。現在のルームメイトは英語学科の学生が四人、それにくわえて日本語学科二年生の(…)さんと(…)さんだというので、彼女らとモーメンツでちょこちょこやりとりしていた理由がこれでわかった、四人はルームメイトだったのだ。(…)さんらとの関係については地雷かもしれないので触れなかった。
  • (…)先生の話が出た。ふたりともやはり彼女のことが好きじゃないという。最初はおそるおそる遠慮がちに打ち明ける感じだったが、こちらの知るかぎりこの五、六年で彼女のことを好きだといっている学生はひとりもいない、むしろ大半の学生は彼女のことが嫌いだと言っているというこちらの言葉を受けて以降は、わりと率直に彼女に対する嫌悪をあらわにしてみせた。(…)先生の授業もつまらないという。
  • 店を出る。「天気がいいから、散歩しましょう」とN2を踏まえていうので、(…)のほうに向かうことに。こころなしか店を出て以降のほうがふたりとも口数が多かった。一年ほど前になるか、(…)さんは足を骨折して数ヶ月授業に出ることができなかった時期があったのだが、あれはいったいどういう状況でした怪我だったのかとたずねると、電動自転車に乗っていたときに転んだという返事。当日は雨が降っており、地面がかなりすべりやすかったらしい。電動自転車のケツには(…)さんが乗っていたのだが彼女は無傷、(…)さんは横倒しになった電動自転車に足をはさまれて骨折したとのこと。(…)さんはもともとジョギングやスケボーなどの運動が好きだったのが、骨折して以降はその習慣も途絶えてしまったという。
  • われわれが横断歩道の前に達したタイミングで毎回歩行者信号が都合よく青になる。(…)さんがそのたびに「運がいいです」という。(…)で食パンを二袋買う。后街周辺には今日も屋台がたくさん出ている。新校区に入る。そのままいつもの散歩コースをたどる。ジムのそばを通りがかった際、すれちがった自転車から「先生!」と呼びかけられる。足を止めてふりかえると、二年生の(…)さんがディズニーキャラだという着ぐるみを着ている。
  • (…)さんがジムでトレーニングしている男の姿を遠目の窓越しに認めて足を止める。変態だなとからかう。ついでに(…)狗! と不名誉なあだ名をつけてやると、ふたりとも爆笑する。(…)はクソを食べますと(…)さんが不意に口にする。(…)さんは二年生のとき、作文でもたびたびうんこネタをぶちこんできたタイプなので、そこにのっかるかたちで、こちらもうんこネタばかり口にする。そして三人そろってゲラゲラ笑いながら、日本ではなかなか見かけることのない巨大な柳の木がたちならぶ風光明媚な湖の周辺を歩く。
  • 「恋人の道」を歩く。ここではいつも恋人たちがみんなキスしているよという。しかし今日は時間帯がはやかったためか(この時点でたしか19時ごろではなかったか?)、ベンチの大半はめずらしく空席。いつもみんなここでキスしているんだけどなァと漏らすと、「子どもを産みます」と(…)さんが突然口にする。そして(…)さんとそろってゲラゲラ笑いはじめたので、ああここで学生らが青姦するということを言いたいのだと察し、ぼく知ってるよ、中国語で做爱っていうんでしょ? と応じると、ふたりともその場にくずれるほどのいきおいで笑った。
  • 遠くのほうから、たぶん(…)公园のあたりだと思うのだが、わりと激しい犬の吠える声がきこえてきた。一匹ではなく複数だったので、たぶん野良が騒いでいるのだろうと思ったが、その声があまりにやかましくわれわれの会話にさしさわりが生じるほどだったので、うるせえぞ! (…)狗! と叫ぶと、ふたりはまた笑った。
  • この時点ですでにふたりはずいぶんリラックスしているようにみえた。少なくとも店でメシを食っていたころにくらべるとずっと緊張はほどけていたと思うし、口数も多くなっていたし、こちらに簡単な質問もいくつかよこしてみせた(好きな果物をたずねられたのでドラゴンフルーツと答えた、(…)さんはパイナップル、(…)さんはさくらんぼが好きとのこと)。やっぱり冗談って大事だなと思った。他人を武装解除に導くのにユーモアは効率が良すぎる。
  • 図書館のほうをぐるりとまわる。道中、また(…)さんと彼氏と遭遇。暗闇の向こうから「先生!」と呼びかける側も呼びかけられる側も爆笑。(…)さんは(…)さんと(…)さんのふたりにN2は手応えはどうであったかとたずねた。恋爱脑! とからかうこちらに日本語で即座に反論してみせるその口ぶりを目の当たりにしたとき、あ、すごい、(…)さんってよくよく考えたらスピーチ前の口語能力はクラスでも最低レベルだったのに、いまはすくなくともこのふたりを圧倒するほどになっている! とひそかに感動した。(…)さんと(…)さんはおたがいのことを恋爱脑! とののしりあった。いつも彼氏と電話しているといったのち、宝宝〜♪とその口調をまねてみせるので、それはでもルームメイトの(…)さんもおなじでしょうというと、对对对という返事。
  • (…)さんと彼氏と別れて歩く。女子寮に向かう道中、先生は以前どんな仕事をしていますかとたずねられたので、日本にいたころは週二日か三日だけアルバイトしていました、それ以外の日はずっと本を読んでいましたと受けたのち、ぼくはエロいホテルで働いていました、みんなが做爱するホテルですというと、ふたりはラブホテルの存在を知っているのか、ああ! という反応を示してみせた。同僚はみんな黑社会でしたと続けると、ふたりはちょっとびっくりしたようすだった。
  • 女子寮前でふたりと別れた。それで帰宅。二年生の(…)さんから微信が届いている。金曜日の食事会について鍋を食べようと思うのだが、どちらがいいだろうかと写真を送ってみせるので、主役はきみと(…)先生なのだから任せると返信。卒業生の(…)くんからも微信。一浪した今年も大学院試験を受けるつもりなので作文の添削をしてほしいという。スケジュールが詰まっているので週末まで待ってほしいと返信。さらに二年生の(…)くんからは「マタタビ」とはなんですかという質問。『ラーメン赤猫』を読んでいて気になったようす。(…)さんと(…)さんからは店で撮った写真を送ってもらう。
  • 最近空き時間にちょくちょくDuolingoで中国語を勉強しているのだが(といっても一日15分にも満たない)、シャワーを浴びるまえにちょっとだけやるつもりが今日ははじめて止まらなくなってしまい、気づけば一時間ほどやっていた。その後、シャワーを浴びてストレッチをして、夜食はとらずにはやばやと就寝。