20240101

『文化と現実界』(青土社)を著した文学研究者キャサリン・ベルシーは、ジュディス・バトラーなど、文化を巡る議論で重要な役割を果たしてきた理論家の多くが、存在するものだけが文化であると捉えていることを批判している。文化相対主義や文化の差異が、文化についての議論の中心を占める今日、文化が死と深く関わるものであることは忘れられてしまう(これは後述するギデンズの「経験の隔離」現象の一つである)。
 構築主義は、世界が言語によって構築されていることで脱構築の可能性を謳うが、そもそも言語と主体の危機的な関係(言語によって主体に死が刻印されると同時に、主体が成立すること)については考察していない。
 ラカンは、最も詳細に美について説明した『セミネール七巻』で、「静物画は、その中に前兆、終局、展開、腐敗といったものを見せると同時に隠すことによって、美を時間的な関係との関数として私たちに示すのである」と指摘している。これについてベルシーは、完璧な瞬間に描かれたミルク、果実、オレンジなどが快感を与えるのは、その瞬間が続かないことを私たちが知っているからであると補足している。
 ベルシーは、墓碑が、ラカン精神分析が定義する文化の範例であると述べる。墓碑は死のもつ人間を無化する力に立ち向かっているが、逆に死者を蘇らすことはできないことをさらけ出している。墓碑が死者の思い出を伝えることにより、逆に忘れようとしている喪失や死という普遍的な出来事が、実は墓碑が文化的な物として存在する条件である。つまり墓碑は、打ち勝とうとする死に言及しているのである。死に打ち勝とうとする試みの快楽を享受するためには、まず人間はすべきものであるという事実と、その恐怖を受け取らなくてはならない。ベルシーは文化のこの両義性を強調する。
樫村愛子ネオリベラリズム精神分析――なぜ伝統や文化が求められるのか』より「第三章 なぜ恒常性が必要なのか」 p.138-139)


  • 気色の悪い初夢。伝統的な和風旅館のような、武家屋敷のような、そういう館のなかにいる。ひとりではない。だれかといっしょにその館をおとずれたということになっている。心霊現象が多発することで有名らしいその館で一泊する予定のようだ。薄暗い板張りの廊下を歩いていると、館内にもかかわらず砂利の敷かれた一画があり、しめ縄の巻かれた石が祀られている。あ、ここはダメだ、ここはマジだわ、と思う。具体的になにかを目撃したわけでもないのだが、認識上はすでに大量の心霊現象に遭遇したということになっている。寝室のようすもおかしい。ごくごく普通の和室であるのだが、確実に出るというのが雰囲気でわかる。この部屋はやめたほうがいいと匿名的な同行者に伝える(あるいはこの同行者は家族だったかもしれない)。すると、三人称視点でその部屋の曰くが語られはじめる。新婚夫婦がこの部屋で初夜を迎えた際にうんぬんと言葉が続くが、いつまでも経っても詳細がはっきりしない。その語り自体が心霊現象ではないかと、途中ではっとして気づく。
  • 12時起床。あけおメールが届いている。(…)二年生の(…)さん、(…)先生、(…)学院の(…)先生、(…)先生、(…)先生、(…)さんと(…)さんと(…)さんと(…)さんとこちらからなるグループチャット。夜には卒業生の(…)くん、(…)先生からも連絡。三年生の(…)さんからは夕飯を作って持っていくという連絡。彼女とはこの一週間ほとんど毎日会っているのでは?
  • 第五食堂で炒面を打包。食後は阳台で「実弾(仮)」第五稿執筆。14時前から17時過ぎまで。シーン15の続き。すごくいい。夢の書き方、わかった。
  • 夕飯の支度が遅れているという連絡が(…)さんから届く。(…)に買い物に行ったのだが、ロッカーに鍵と鞄をあずけたまま大学にもどってきてしまったという。彼女は昨日の散歩中、鍵や饭卡をこれまでに四回か五回失くしたと言っていた。それだから饭卡は普段ほとんど持ち歩かないようにしているらしい。
  • 一年生2班の(…)くんからTwitterのスクショが届く。石川県で発生した地震および津波に対する注意喚起のツイート(特務機関NERV)のやつ。(…)くん、Twitterをやっているのだろうか? 彼は政治思想関係の学部に「転籍」を希望しているはずであるし、おそらく愛国系男子であるだろうから、翻墙している可能性はごくごく低いと思う、だから微博に転載されていたものを拾っただけかもしれない。あるいは愛国系男子のなかでもコアな層は、毛沢東時代および毛沢東思想を神聖視しているがゆえに現政権に対して批判的であったりするわけだから(たとえば(…)くんは毛沢東共産党に対して平均的な人民同様強い敬意を有しているが、習近平および現政権がもたらした状況——毛沢東の語る理念とはまったく裏腹なリアルな社会の現状——に対する不満はこちらの前でもまったく隠さなかった)、そういうルートで翻墙するにいたっているのかもしれない。地震については震度7を記録したとか、東日本大震災以来となる大津波警報が出たとか、そういう物騒な情報をいくつか目にした。
  • きのうづけの記事の続きをしばらく書く。(…)さんから連絡のあったところでケッタに乗って女子寮へ。ポットみたいな取手のついた鍋を受けとる。なかには骨付き鶏肉の入った麺がある。蓋はない。冷めてしまうかもしれないというので、急いで寮に持ち帰って食う。まあまあうまい。部屋にあがる前、管理人の(…)からシャワーヘッドを受けとった。(…)から届いていた微信によれば、今朝、シャワーを修理するための人間がこちらの部屋をたずねたらしい、しかしこちらは寝ていた、そこでシャワーヘッドを(…)にあずけたとの由。お湯が出ない問題、シャワーヘッドの問題ではないと思うのだが、ひとまず試してみるか。
  • 食後、きのうづけの記事を投稿し、ウェブ各所を巡回し、2023年1月1日づけの記事の読み返し。年始恒例行事として去年のインプットデータとアウトプットデータをまとめたのだが、2023年1月1日から「実弾(仮)」の第四稿にとりかかっている。そこから一年かけて第四稿を片付けたうえでそのまま第五稿のおよそ四分の一まで進んだと、2023年とはひとまずそのような年であったらしい。2024年1月1日現在で「第五稿(243/1093枚)」という現状。春のあいだに第五稿を終わらせて、その後夏から秋にかけて最終稿という流れになるのかな。
  • シャワーを浴びる。浴びる前にシャワーヘッドを交換したが、予想していたとおり、湯の量は多少マシになった程度。業者を呼んであれこれするのもめんどいし、今年の冬はもうこれでいい。風呂を出たあとは、二年生の日語会話(三)の成績表記入。途中で広州の(…)さんからあけおメール。先生と出会ってもう6年くらいになりますか? 2018年でしたっけ? というので、日記をさかのぼって確認してみたところ、彼女のいうとおり2018年の3月だったか4月だったかにはじめて中国に入国したらしい。となるとあと数ヶ月で6年になるわけだ。信じられない。(…)で働いていた期間がたしか5年弱だったはず。職歴としては過去最長記録ということになるのか。