20240223

◉ぼくの名前は父親がはじめて生まれた息子に自分と同じ名前を付け、それから母親がその息子にニックネームを付けて、それで父と息子とが広い畑で腰まで麦に埋まり、並んで働いているようなときに遠くから呼びかけてもどちらのことだか判るようにするということを繰り返して、もう七代も前から受け継がれてきた名前だ。
 息子たちは畑の上の大気を伝わってくるその呼び名が自分たちの名前なのだと信じるようになり、ニックネームに答えながらその名の響きのまわりに自分が誰であるのかという観念を育んで、実は彼らの本当の名前がシカゴのどこかにある書類の上でひっそりと出番を待っており、やがてその名前で彼らが「ミスター」と呼ばれ、その名前と共に彼らが死ぬことになるなど夢にも知らなかった。
サム・シェパード畑中佳樹・訳『モーテル・クロニクルズ』 p.76)



 11時起床。たっぷり寝た。歯磨きをすませてからラスクと白湯の朝食。インスタントコーヒーを用意し、おとといづけの記事の続きを書いて投稿する。三年生の(…)さんから微信。航空券変更の手数料を外国語学院が負担してくれることになった、と。1日にもどってくるらしい。「学校の温水設備も悪い天気で壊れたそうです」というので、きのうキャンパスで見かけた人夫はその修理に来ていたのかなと思った。今学期は(…)先生の授業がないので幸せだという。代わりにあたらしい先生がやってきたというので、え? マジで? となった。(…)という名前の人物。繁体字で書くと(…)となるわけで、日本人の感覚からするとこれはあきらかに男性の名前であるのだが、男性か女性かわからないという。たぶん若くてかわいい女の先生ですよというので、いよいよぼくも結婚するときがきたなと受ける。
 部屋の空気がやっぱり埃っぽい。雑巾で寝室だけざっと拭き掃除をする。リビングのほうはたまっている日記をすべて片付けてから掃除機をかけるつもり。
 きのうづけの記事に着手する。(…)先生に今学期の時間割を送ってほしいと微信を送る。じきに返信がとどく。火曜日8時から二年生の日語基礎写作(二)、水曜日10時から一年生2班の日語会話(二)、木曜日8時から三年生の日語文章選読、10時から一年生1班の日語会話(二)、金曜日10時から二年生の日語会話(四)というスケジュールであることが判明。早八が週に二日もあるやんけ! くそったれ! それにくわえて土日月の三連休になっているのも気にくわん。週半ばに一日休日のあるほうがずっといい。授業が全部午前に固まっている点については、リズムさえちゃんと作ることができればいろいろやりやすいのかもしれないが、いやしかし、このスケジュールだとマジで夜更かしはほぼできんな——考えるだけでイライラしてくる! おれを大学にひきとめたいんやったらもっと思慮深い時間割をこしらえてくれ! 事前に事務室にお願いして授業をすべて午後に固めてもらえばよかった。10時からの授業が三つもあるということは週に三日は大混雑する食堂で昼飯を打包しなければならんし、教室も外国語学院の2階にあるものを使えるのは一年生2班のものだけで、あとは全部6階となっている! アホか!
 今日もまた(…)でメシを食う。食後は(…)で一本4.5リットルのミネラルウォーターをふたつ買う。きのうアプリで注文したbottle waterが今日になってもやはり配送されておらず、たぶん路面凍結のせいだと思うのだが、となるとあと三日か四日は厳しいだろう。そういうわけで、日本ではまず見かけることのないずんぐりしたかたちのペットボトルに入っているその水を両手に一本ずつ提げて寮まで持ち帰ることにしたのだ。
 帰宅後、いったんデスクを前にしてきのうづけの記事の続きを書きはじめたが、猛烈な眠気をおぼえたので、ベッドに移動して30分ほど仮眠をとった。実家にいたころは夕食後の仮眠をとらない日のほうが圧倒的に多かったわけだが、この土地この部屋で暮らす過程で血肉化されたバイオリズムみたいなものがこの土地この部屋に身を置くことによってやはり賦活されたのだろう。

 シャワーを浴びる。三年生の(…)さんから(…)といっしょに夜道を散歩している写真が送られてくる。きのうづけの記事の続きを書いて投稿する。ひとつ書き忘れていた。きのう(…)から正式に新学期の開始日時が後ろ倒しになるという通知がとどいたのだった。
 冷食の餃子を食す。それだけでは足りなかったので、帰国前に手土産として買ったものの税関でひっかかることにのちほど気づき、やむをえず部屋に置きっぱなしにしておいた鶏の手首を辛く味付けしたやつも食った。歯磨きをすませ、今日づけの記事も途中まで書き、寝床に移動して就寝。