20140810

(…)責任と無責任という発言は、敬意と自由と言い換えることができる。
(澤野雅樹『ドゥルーズを「活用」する!』)



 5時起床。ブロガーの朝は早い。歯磨きをしながらおもてにでるとぽつぽつの小降りだったのでこれはすでに台風が過ぎ去ったあとなのだろうかそれともこれから接近してくるところなのだろうかと思った。一昨日の晩に雷鳴がゴロゴロなっていたことを思うとこれはすでに過ぎ去ったあとか、と考えたところでブログにもたしかに書き記した記憶のある一昨日のその雷鳴というのがじっさいは雷鳴ではなく滋賀かどこかで開催されていた花火大会の音であったという事実がきのう職場で知れたのだった。きのうの晩ドーンドーンという大きな物音がおもてから聞こえてきて雷にしてはちょっとようすがおかしいからなんだろうと思っていたのだけれど滋賀のほうで花火大会があったらしくてどうも台風間近の強風に運ばれてくるかたちでうちまで届いたみたいでとBさんがいいだしてそれだからあれ花火やったんすかとおもわず問いかえすとあれは花火とTさんもいい、するとぼくの住んでいるところからだとわりと毎年聞こえますねとNさんがいって隣県の花火大会の物音が台風のきざしに運ばれて畸形の雷鳴のごとく鳴りひびくというのもすごい話だなとしきりに感心したのだった。
 ストレッチをしたのちパンの耳を1枚だけ食べてからきのうづけのブログの続きを書いて投稿した。時間ぎりぎりになってしまったのであわてて身支度をすませておもてに出て、ケッタにのって例のごとくアーケード商店街をぬけるルートで職場にむかったのであるのだけれど最後の直線にさしかかったあたりからぜんぜん進まなくなりだしたというかまっすぐの向かい風で、おかげでペダルを踏みしめる足はパンパンになったしいったい何年ぶりにそんなふるまいにでたのかはっきりしないけれどもひらたい道にもかかわらずおもわず立ち漕ぎをするなどした!
 職場に到着してからワイシャツに着替えて引き継ぎをすませると台風接近中だけあってさすがにいつもの半分にも満たない客入りでこれは今日の昼間もたぶんヒマだろうと踏んだ。飲み物を飲もうとおもってコップを取り出したところでJさんがあっと声をあげてこちらを見つめるなりMくんコーヒー飲むけとニコニコ顔でいうのでおもわず吹き出してからひさしぶりにお願いしますといった。朝じぶんとBさんとそれからYさんがいた当時はYさんの分もコーヒーをいれてくれるのがJさんの毎朝の習慣だったのだけれど最近は暑かったしなによりBさんとじつに三週間ものあいだ冷戦状態だったものだからおのずと朝のコーヒータイムの習慣もとぎれてしまっていて、でも今日それがとてもひさしぶりに再開されたというわけだった。洗い物をしているこちらのとなりでポットからコップに湯をそそぐJさんがにやっとしながらMくんきのうおねえになんかいうたけと問うてみせるので、さあどうやろねーと笑ってじらしたのち、Jさんもピュアな子供からええかげんちょっとおとなにならなあかんときがきたなっといってやると、漫画の登場人物みたいに後頭部をかきながらへへへと照れくさそうにつぶやいて去っていった。
 朝もはやくから外線が鳴ったのでどこの業者だと思って出るとEさんからで、ごめんちょっとなんかあたったみたいで上からも下からも止まらんのやわという報告があったので、またかよと苦笑しながらほんならもうええしどうせ今日ヒマヒマやからゆっくり休んでくださいと告げて切った。旅行先で生ものでもどか食いしたか大好きなBBQで調子にのって焼けてない肉でも口にしたのだろうとあとになってみんなで笑った。笑っておきながら夕刻には客室からひきさげてきた食器のなかから残りものをつまんでバクバク食っているじぶんがいた。♪客の捨てた寿司を食べてた。ヘイ、ボーイ。ドンドンドンドンストップ♪
 そうしてじっさい今日はとてもヒマだった。きのうも土曜日にしてはかなり落ち着いていたほうであったけれど今日はそれに増してのクソのつくほどのヒマで、じっさい午前中などはなんとか警報がどうのこうのとたくさん発令されていたみたいであるしそれに近隣のライバル店の改装が終了したのがちょうどきのうからでリニューアルオープンをはじめたとかなんとか、そうなるとむろんこちらからしばらくのあいだは客足が遠ざかることにもなるわけでゆえにヒマヒマで、けれどここまでヒマでじっとしていなければならないとなるとそのぶんかえってしんどいわとみんなで漏らしあった。いそがしい状況に身体が慣れるのには時間がかかるけれどもヒマヒマな状況に身体がなまってしまうまではじつにあっというまである。ご機嫌のJさんがひさしぶりにふるい歌謡曲を延々とうたいつなぐワンマンショーをはじめて、BさんやTさんがいうにはJさんにはまともに歌えている曲はひとつもなくていつもメロディか歌詞のいずれかあるいはその双方をそろってまちがえているらしいのだけれど、今日はモスラ〜やモスラ〜のあの歌をコスモ〜やコスモ〜やと歌っていて耳にした瞬間に腹のちぎれるほど笑った。あまりにもおもしろかったのでさっそくEさんにメールで報告すると、うんこ漏れるからやめてという必死の返信があった。Jさんの横文字系のまちがいはぜんぶがぜんぶむっちゃくっちゃにおもしろくてすべて書きとめておきたいくらいだ。
 そのJさんにあずかっていた二万円を返金した。それから21日にNさんの歓迎会ということでみんなでビアガーデンに行くことになった。ちょうど帰省している週なのだけれど20日にSと川遊びにいくそれ以降の予定はとくにないので21日の午前中の電車にでものって京都にもどってくることに決めた。
 めずらしくMさんが(たかだか二三分の話ではあるけれども)遅刻した。帰りもまたアーケード商店街を通りぬけることにしてそのなかにあるブルジョワスーパーにも立ち寄ったのだけれど値引き品の総菜がほとんど売り切れていて、それだからなにも買わずに店をでてそのままいつものスーパーにまで足をのばした。したらそこの寿司もすべて売り切れていて、それでしかたがないからキムチと豆腐と二割引の竜田揚げだけ買って帰宅してから玄米とインスタントの味噌汁と納豆といっしょにかっ喰らった。食後Wさんにメールの返信をした。来週の木曜日の昼に京都で会うことになった。いいお店を知ってますかと問われたのだけれど外食といえばせいぜいTとそろってくら寿司に出かけるくらいのものなまずしい交友関係まずしい好奇心まずしい感受性の持ち主なのでちょっとどうしようもない。知っている店といえばせいぜいが行きつけの喫茶店くらいで、あとはもうファミレスかファストフードか、とどのつまりは部外者とおなじくらいこの町のことを知らないしそんなに興味もないし、さらによくよく考えてみれば癖の強い書店のそこそこそろっている町であるのにそれらの書店さえまともにおとずれた記憶がないというありさまでこういうふうにふりかえってみるとほんとうにこの町と没交渉のまま十年住んできた。もっとも印象にのこっている場所はとありがちな質問を自身になげかえしてみてもなるほど四つの自室が浮かぶばかりだ。