2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

20141004

たとえば死。病に罹って死に隣接した体験を持った者には、見るもの聞くものすべてが死の暗喩と感じられる、といった平凡な事態と作品はまるで無縁である。死を典型とするような、言葉を超えた出来事から出発して、言葉を読み書く姿勢を古井氏はとらない。超…

20141003

一般に小説とは何をどう書いてもよい自由なジャンルであると言われる。しかしこの見解は誤っている。小説が小説であろうとすれば、必ず或る様式の拘束下に置かれることを余儀なくされる。小説には暗黙のルールがあるのであり、小説が自由なジャンルに見える…

20141002

(…)小説とはたくさんの細部からなる一個の構造物であり、小説は細部以外のものを何ひとつ必要としない。だから偉大な思想や深刻な主題といえども、小説空間の内部ではやはりひとつの細部であるにすぎず、ごく些細なエピソードや他愛のない会話と同等の権利…

20141001

観念の世界でなら人間はいくらでも自由になりうる。鎖に繋がれた奴隷でも内面の自由は確保できる。その姿は高貴であるかもしれないが、しかし決して偉大ではない。偉大さとはなにより、拘束のなかでぎりぎりの力を発動し、ときに鎖を断ち切らんばかりに生を…