20130617

14時半起床。たぶん12時間以上眠った。午前中にいちど佐川急便のおっちゃん、じゃなかった郵便局のほうだ、その訪問を受けて起きて玄関の戸を開けてサインを書いてブツを受け取ったはずなのだが、すぐにまた眠りこんだ。それよりも前に、たしか9時か10時ごろだったように思うけれど、目覚ましでいちど起床していて、寝覚めもとても良かったのに、やはり知らぬ間に二度寝してしまっていて、まったくもって昏睡というにふさわしい。12時間以上もの眠りから覚めて、さすがにこれだけ眠れば前夜をひきずって未だにふらふらということはなかったけれども、とりあえず飲み物をがぶ飲みして、それから歯磨きをするためにおもてにでると、玄関脇に自転車がなくて、あーそうだった、回収しにいかなければならないんだった、と思った。
撤去されると厄介なので、というかもうすでに撤去されていたらどうしようと内心びくつきながら、昨夜帰宅するなり脱ぎ捨てたものらしい外着をそのまま身につけて、猛暑にふらふらしながら、あーやっぱりまだ残ってる、頭がはっきりしない、と、iPodで漢を聴きながら歩き、昼間におもてを出歩くことは普段あまりないものだから、すれちがうひとびとがみんなめずらしく見える。今出川にて自転車を回収し、そのままフレスコで食材を購入するつもりだったのだけれどろくでもないものがろくでもない値段でばかり売られていたものだからもういいやとなってとりあえずアイスだけ買って食いながら帰った。帰宅してすぐにまた今度は生鮮館に出かけて食材を購入し、次いでデイリーヤマザキでパンを買い、部屋にもどると大家さんがやってきてご近所さんにもらったという和菓子をわけてくれたのでありがたくいただき、それらを食ってから整骨院に出かけたのだったか、あるいは整骨院に出かけてからそもそも買い物に出かけたのだったか、そして昨日づけのブログを書いたのはどのタイミングだったか、それらがいまひとつはっきりしないのでひとまずは順不同として、買い出しと整骨院とブログの三つをこなしたとそう言うにとどめることにするけれども、それら三つの野暮用を片付けたのち、筋トレをしてジョギングに出かけて、風呂場でシャワーをたっぷり浴びて部屋にもどり、さてそこからエアコン清掃である。今朝届いたばかりのブツ「くうきれい」を用いて送風口の奥にて繁茂する黒カビどもを殲滅しにかかる。購入前にレビューでリンスがまったくもって足りないという情報を目にしていたので同時に注文しておいたペットボトルの先にとりつけることで霧吹き可能になる園芸用のアイテムも購入していたのだけれど、リンスどころかムースすらもがやや不足気味で、ファンの左端から右端にかけて順序泡をふきつけていったのだけれど五分の一ほどを残したところでムースが切れてしまい、しかたがないのでわりばしであまった泡をすくって足りない箇所につめたりするなどしたのだけれど要領を得ず、ええいもうめんどうくさい!となったので直接指先で泡をすくって送風口の奥につっこむなどして対処したのだったけれど説明書きを見てみると皮膚に付着した場合は清水で15分以上洗いながしてくださいとあってとんだ劇薬、あわてて水場に走った。二分洗いながした。説明書をよくよく読み返してみればマスクとめがねとゴム手袋が必須などと書いてあり、めがねしか満たしていないけれどもいまさらどうのこうのいったところでどうしようもないというか、たしかその時点で時刻は0時をまわっていたんでなかったか、そんな時刻に空いている薬局などあるわけがない。と、ここまで書いてなにいってんだ薬物市場があるじゃねえかと思ったけれども、すべて済んだことである。清掃用BGMはボブ・ディラングレイトフルデッドのライブアルバムとライ・クーダーによるヴェンダースパリ、テキサス』のサントラと裸のラリーズの密録。PC内臓のしょぼいスピーカーで聴く音楽もそんなに嫌いではない。おもての水場に出るたびに玄関脇の網戸越しに自室の様子を窃視者の横目でのぞきこんでしまう奇癖があって、しらじらとした照明のもとにうきあがる自室がなじみのない空間のように見えるのがすこし面白い。きのうの勤務中、昼下がりのしずかなひととき、不意にじぶんがいま・ここにいるこのじぶんであることにたいする驚愕と不信のようなものにとりつかれて混乱したというか、となりのデスクに腰かけてPCにむかいあっている(…)さんや、高い位置にならべられた数台の監視用モニターや、身につけているワイシャツや右手ににぎられているボールペンや左手にある引き出しの最上段におさめられている英語のテキストや、背後にひかえている部屋でくつろぐ同僚たちやそのなにもかもが唐突に浮遊しはじめて地に足がつかないというか、シニフィエシニフィアンが分離して両者をつなぐ糸が混線して事物の意味がことごとく遠くこんぐらがってしまうというか、とにかくいまあるすべてがこのようであることにたいする納得がすべて失われてしまうような、リニアな歴史の最先端にあるはずのいま・ここを認識することはかろうじてできるのだけれどその認識にいま・ここにいたるまでの記憶や歴史の蓄積というものがどういうわけか欠損しているそのために記憶喪失のようなめまいにとらわれるというか、回線の弱いPCでネットを接続しているときにあるような接続→中断→接続の断続的なくりかえしを記憶領域へアクセスするための経路でくりかえしているような、そういうことはときどきあって認識のバグとしてふだんは片付けているのだけれどきのうのはちょっと次元が違うというか、かなり短い期間ではあったもののかなり強烈で、あ、狂いそう、狂うなこれはきっと、と思いながら、もちろんそこにはある程度の恐怖もあったのだけれどそれよりもむしろ、よし行け!このまま行け!と、自己の崩壊を願うような破滅的な勢いみたいなものもあって、というかそのやけっぱちな好奇心のほうが恐怖を圧倒的に凌駕していて、とはいえ結局はこのとおりまったくもって無事であり無傷であり正気なわけだが、この手の崩壊感覚にたいする興味というのが要するにムージルを経由した神秘主義や恍惚体験、薬理学的な脳いじりと軌を一にしているのだと思う。たったいちまいの網戸をはさんで窃視者のまなざしを模しただけで自室がああも簡単に他人行儀に見えてしまう、そのおもしろさもまた同様のバグを求める心理に基づくものだ。
ムースを吹きつけてから30分ほど放置したのちリンスでの洗浄開始。予想通りリンスは一瞬でなくなってしまったので、2Lのペットボトルに満たした水をノズル経由で噴射しつづけて敗戦処理。これが永遠に終わらないかと思われるほどの長期戦だったというか、たぶん合計で6L分は使用したと思うのだけれど、汚水が流れ落ちる先に養生しておいた備え付けの巨大なビニール袋の底にたまった水量がけっこうなもので、これそろそろやばいかもしれんな、いったん水をどこかに捨てたほうがいいかもしれないな、と思いながらもあともうすこしあともうすこしとめんどうくさがっていたところ、何度目かの水汲みにおもてに出て部屋にもどってきたまさにその瞬間、エアコンの本体に両面テープでくっつけてあった袋の端がバリバリと音をたててはがれだし、あぶねえ!と思ってさしだしたこちらの両手によって間一髪で落水の危機はまぬがれることができたが、もう少しで黒カビの死骸によって真っ黒に染まった汚水を畳一面にまきちらしてしまうところだった。そういう事態もあるから気をつけよ、というレビューも事前に読んでいたはずであるのに、まだ行けるだろう、まだ大丈夫、とすぐに油断してしまうじぶんがいちばん油断ならない。苦闘の甲斐あってエアコンの黒カビは殲滅することに成功した。外装はボロだから仕方ないけれども送風口をのぞいた内部はぴかぴかで新品同様、黒カビのくの字もない清潔感で、ためしにエアコンを起動してみるとほのかに香る洗浄剤とちゃんとした冷風、これでこの夏は乗り切ることができる。京都に来て最初に住んだアパート以来となるクーラー!七年ぶり!
(…)
清掃を終えて丑三つ時。ようやく夕飯を食す。飯の支度を水場でしているときに左足のふくらはぎに蚊の止まったのが察知されたので右足の裏でペチンとやったら見事に圧殺することに成功し、足の使い方の器用さが我ながらなんか猿みたいだなと思った。過激派の秘密基地みたいな我らが住居のとなりにはごくごく一般的な、三階建てだか四階建てだかのアパートが建っているのだけれど、ちょうどじぶんの部屋の玄関の引き戸をひいて外に出たすぐその正面上空に控えている部屋のことをじぶんと(…)はエロ部屋と呼んでいて、というのもその部屋の主がどんな人物であるのかはさっぱりわからないけれども部屋のカーテンがほとんど下品といってよいくらいのピンクで、照明に透かされたその色合いが夜の闇になかにぼうっと浮かびあがっているその感じがやたらと背徳的であるからなのだけれど、このエロ部屋の主はわりと夜更かし気味で、おなじく夜更かし気味のじぶんが夜中に水場に立ったり便所にむかったりするときにもたいていの場合は明かりがついていて、しかもこちらからは望むことのできない方角にむけられている窓の開放されてあるらしいその向こう側から生活音の漏れ聞こえてくることさえあり、それはいつもなぜか水音なのだけれど、いったい何をしているやつなんだろうかとたびたびふしぎに思う。
夕食を終えて食器を洗うころには外はすっかり明るくなっていた。そうして6時には寝た。