20130713

6時半起床。胃が重い。8時より12時間の奴隷労働。寒梅館の前をケッタでえっちらおっちら下っていると、早朝にもかかわらず蝉がさわがしくやんややんやと騒いでいるのが嫌でも聞こえてきて、夏である。きのう(…)のビッグスクーターのケツに乗っけてもらいながら御所の前を通過したときに聞いたのが今年初の蝉の鳴き声だったのだけれど、しゃわしゃわしゃわしゃわと黄緑色の細かな編み目を思わせるあの音はまちがいなくクマゼミの鳴き声で、保育園に通っていたころはクマゼミといえばなかなかにレアな蝉であってアブラゼミなんかに比べるとはるかに希少価値の高い生き物であったのだけれど、いつからか生息数の割合が反転したというか、都市化に適応できたクマゼミばかりがしぶとく生き残ってしまったその結果として、いまやジィジィジィジィ油の撥ねる音がいかにも暑苦しいあの鳴き声も耳にすることは稀になった。ちょうど大学に進学した時期あたりを境にアブラゼミクマゼミの比率に反転の生じたような印象があるのだけれど、それはただ単にまだまだアブラゼミの元気なクソ田舎から京都というまがりなりにも都市化した環境に越してきたそのためなのかもしれない。時間に帰するものとしてとらえていた問題を空間に帰するものとして配置しなおしたときに生じる認識の立ちくらみらしきもの。
朝礼のとき、(…)さんの姿が見当たらなかったので、あれ(…)さんは今日お休みなんですかとたずねると、あーそれ言っちゃう、(…)くんそれ言っちゃうわけ、と(…)さんの苦笑いを浴びせられたので、あ、やっぱり辞めちゃったのか、と察し、と同時に、このやっぱりっていう印象はなんだよと思った。でも、ま、やっぱりとしか言いようがない。曲者しかいないこの職場であんなにもおっとりとしたひとが続くとはとうてい思えない。
午後から豪雨と雷鳴。いちど停電してしまうと精算機関連のエラーから業者が入ってシステムを復旧してくれるまでの間すべての会計を人力でしなければならないという話を聞いていたものだから、どうか雷様よ土日祝日だけは落ちてくれるなよというアレでいたのだけれどけっこうバンバン落ちていた。さいわい停電はしなかった。従業員の出入りする裏口の戸を開けただけで風雨がびゅんびゅんと吹きこんできて、(…)さんと一緒にわーわーはしゃいだ。その(…)さんから(…)くんは祇園祭に行かないのかとたずねられて、同じ質問を先週も、ひょっとしたら先々週も寄越された気がしないでもないけれど、行くったってほんなんいっしょに行く女の子もおらへんのにというと、でもな(…)くん、祇園祭宵山は痴漢し放題やで、あんなもんだれが触ったってわからん、もうぎゅうぎゅうや、すし詰めや、誰も動けへん、身動きとれへんさかい、ほんなもんワシかてな、そりゃ若いころ刑務所入る前はな、仲間あつめてほりゃようやった、いまはもうせんよ、もうここ二十年は祇園祭なんて行っとらへんし行く気もないわ、なんせわしはな、人ごみっていうもんが嫌いやから、あんなもん行きたいとも思わへんわ。
職場の備品として関西ウォーカーが置いてあるのだけれど、そこに京都大阪滋賀兵庫和歌山三重あたりの花火大会の日程が一覧になって掲載されていて、今日は(…)で花火大会があるはずで(…)もそれ目当てで帰省しているはずなのだけれど、掲載されていた中ではわりと上位に食い込む規模の花火大会であるらしいことが判明してびっくらこいた。せっかくなんやし(…)連れていってやりや、と(…)さんに言われて、それもそうだなと思ったのでちょっくら雑誌に目を通してもみたのだけれど、開催日が平日となるとそれだけでおのずと選択肢が限られてくるみたいで、あとPLとかなんかそのあたりの超絶有名な花火大会になるとまったくもって見物どころでないというか、花火大会がまだ開始していない時間帯にもかかわらず最寄り駅で降りようとしたところ警官に気の毒だけれどこの外まったくもって歩けないよ一歩も進めない状態だよ悪いことはいわないから帰ったほうがいいよと、そんなふうな助言を頭から浴びせられるレベルの混雑であるらしくてそんな(…)さんのオススメはたしか亀岡だったかである花火大会で、これは電車での移動も苦痛でなかったしストレスなくほどほどに楽しむことのできる唯一の花火大会だったとのことで、とはいえ、なんかそんな話を聞いてばかりいるとやっぱり花火なんてどうでもいいかという気がしてくるというか、これはじぶんの経験上、それから友人知人の体験談からもいえることなのだけれど、人手の多いところに無理して出かけたところでストレスでおたがいにイライラしてケンカするのがせいぜいのところであって、そんなんだったらおとなしく近所の公園でひそかに線香花火でもしていたほうがよほど素敵ではある。ただ去年バンコクの郊外で開催されているらしい花火大会を(…)が見たがっていた記憶があって、そのときはたしかいちおう現地までおもむきながらも開始時間が夜遅くだったのでゲストハウスのある地域にまで帰るための便がなくなってしまうという理由からあきらめたのだけれど、いや、でもあれは通常の花火大会なんかではなくてちょっと趣向の変わったものであったかもしれない、というか爆竹的なアレだったのかもしれない。よく覚えていないけれど、と、ここまで書いたところでふと嵐山の灯籠流しとかいいんでないかと思い立っていま調べてみたところ来月の16日らしい。これはじぶんも見たことがないし、いや、あったか、学生のころ(…)さんと観に行った記憶があるようなないような、ちょっと定かでない。やっぱりない気がする。本当か?わからない。どうにもはっきりしない記憶の厄介である。
というかそもそも祖父宅をおとずれる日はいつなのか。と、そう思ったのでいま母親にメールを送ってたずねてみたところ、返信代わりの着信があり、祖父宅には13日に行く予定であるとのことで、13日は火曜日であるから12日の月曜日から帰省するとして16日金曜日の午前まで(…)に滞在してそこから京都にもどればそのまま大文字と灯籠流しも見物できるわけで、ハードスケジュールが大好きな炎の好奇心の持ち主(…)さんだったらこの程度の過密さなんてなんてこともないだろうし、いよっし、すべて定まった。と、いいたいところなのだけれど先日(…)が部屋を使ってくれてかまわないよと申し出てくれたその期間というのがちょうど12〜16日で、これ、だだかぶりしていてすごくもったいないな。祖父宅の訪問日をずらすというのも選択肢のひとつなのかもしれないけれども、祖父の家がある秘境のごとき田舎でしか見られない特殊な盆の儀式みたいなものがあってそれをFake Buddhismにかぶれまくっている(…)さんに見せてやりたいというのはちょっとあって、じつに悩ましい。気がつけば母親相手にめずらしくも30分近く長電話してしまっていて、お部屋を提供してくれる(…)さんにせよ(…)にせよ、あるいは職場にひきとめてくれた(…)さんにせよ仲良くやってくれている先輩たちにせよ、そういうひとたちが助けてくれるんはあんたの人徳やでなという聞き覚えのある言葉がまたもや送り出されてきたのだけれど、ごくごく率直に考えて、人徳の持ち主は手をさしのべてもらっているこちらではなくむしろ手をさしのべてくれるあちらのひとびとだろうと、これはわりと正直な気持ちでそう思う。本当に助けてもらっている。すごく。風刺にもならない三文芝居につきあってもらっているような、面映さと後ろめたさの同居してふしぎにまぶしげな気分。
兄夫婦の子供は女の子らしい。CTスキャンだかなんだかしらないけれどもいまの技術を利用すればあの影絵みたいなエコーの画像だけでなしにわりとはっきりと胎児のころから目鼻立ちも確認できるらしくてそれによると兄に似て鼻がでかいようで(兄の鼻がでかいという印象を抱いたことはこれまで一度もなかったが、(…)さんと母親の指摘を介することではじめて、いわれてみればたしかにそうかもしれないと思うようになった)、(…)さんは女の子やのにこんなに鼻でっかくてどうしよ!ぜんぶ旦那のせいだ!と騒いでいるという。あとは(…)さんがひとりでうちの実家に遊びに来ることもあるらしくてそんなときに兄の悪口を言って大笑いをしているみたいな、場合によってはわざわざ母親の携帯に電話をかけてきて、おかあさんちょっと愚痴言っていい?とかなんとかいって兄にかんする愚痴を漏らすみたいな、そういう関係にあるらしくて、これってとても素敵なことだと思う。あの子は性格がさっぱりしていて気持ちがいい、と母も(…)さんについて言っていて、なかなか関係良好な嫁姑の間柄ではないか。
電話を切ってから(…)にメール返信して1時!だらだらして2時!寝!