20131201

29日(金)
10時起床。昨夜床に着いたあたりから喉がすごく痛い。風邪っぴきだ。ゆえにのどぬーるスプレー。朝食とったのち「A」推敲。14時過ぎに(…)がやってきたので地下鉄で四条に出た。死ぬほど寒かった。はじめてファーストキッチンハンバーガーを食べた。薬局で購入した風邪薬を服んだ。(…)のすすめで鞄を持たずに出歩いてみたのだけれどすごく快適だった。古着屋をめぐった。スヌードを買った。財布が欲しかったので月給八万円のくせして藤井大丸を散策した。三万円のポール・スミスが格好良かった。十万円浮いたわけであるしここで三万円費やそうとたいした痛手ではないと思ったが、結局その後おとずれたリサイクルショップで去年のいまごろ新品で購入しようか迷っていたタケオ・キクチの財布の色違いが4000円ちょっとで売っていたのでそれを購入した。笑えるくらい都合のいい展開、また金が浮いたというわけだ。大丸で見たヴァイヴィアン・ウエストウッドのピーコートが死ぬほど恰好良かったが、月給のまるっととんでしまう価格だった。あとは性懲りもなく6Gのボディピを購入した。久米島のゲストハウスのシャワールームで洗髪しているときにピアスのキャッチの落ちる高い音がして、あーまた落ちたと思ってタイルの床に視線を落としてみたのだけれど見つからず、その後十分くらいかけて目を皿のようにしてくまなく探索したのだけれどどこにもないものだからもういいやとなって部屋にもどり、風呂場でピアスのキャッチを失くしちまったと(…)に告げると、おおあわれなわたしのダーリンとおおげな口ぶりでとなえながらハグみたいなご機嫌でのりのりの慰めともつかぬ慰めがあり、去年の夏にもチェンマイのソンテオにのってるときに車の揺れでピアスがはずれて路上に落っこちまったんだけど覚えてる、と問うと、覚えてない、という案の定の返事があって、きみあのとき言ったんだよ、旅先で落とし物をするとその土地にふたたびもどってくることになるって、だからおれこれでもうチェンマイ久米島の再訪問は確定しちゃったわけ。
(…)が先週くらいから、というか先々週くらいからだったかもしれないけれどもとにかく自転車が欲しい自転車が欲しいとクソうるさく、それでなんとなく足を運んだ新風館自転車屋が入っていたものだからそこにも入って店員さん相手に長々とくっちゃべって、この日は本当によく歩いたし色んな店を見てまわったしいかにも街に出た感がある。自転車は9万円のクロスバイクがものすごく格好よくてそれまで全然興味なかったのに俄然欲しくなってしまった。(…)は6万円のブツを買うべきか否かでずっと迷っているようだった。結局その日はなにも買わずに店を出た。店を出てからも(…)は自転車買おうかなどうしようかなとIQの低いオウムのように延々とひとりごとをくりかえしていた。ずーっとむかし(…)さんといっしょに町歩きかなんかしている途中、あれはひょっとするとクリスマス当日だったかもしれないのだけれどおもてに立っていた看板にひきよせられるようにして店の前までおとずれてはみたもののドア越しになかをのぞくとミニスカサンタのコスプレをしたすごい巨乳のエロいお姉さんがウエイトレスとして立ち働いている様子が見えたものだからこりゃカップルで来店するようなアレではないだろうと引き返すことにしたハンバーグ屋さん、そのハンバーグ屋さんっぽい店を見つけたのでこれあのときの店じゃねーのとなって(…)といっしょに店のドア越しに中をのぞいてみたところふつうの飯屋で、じゃあもう夕飯ここなとなって昼飯にハンバーガーを食べたばかりなのにハンバーグを食らった。美味くも不味くもないふつうの味だった。地下鉄に乗ってコンビニでちょっとした食べ物と飲み物を買って部屋にもどって酩酊してYouTubeひとつで大笑いしたりして寝た。
 
 
30日(土)
6時半起床。8時より12時間の奴隷労働。職場に到着するなり九州からやってきたそちら界隈の方々によるワンフロア独占なシチュエーションを(…)さんに告げられてええーよりによって今日なのーと朝からガックリした。社長の交友関係のアレで年に二度ばかりはこういうことがあるのだけれど、当然といえば当然ながらクソ落ち着かない。電話がかかってくるたびにおいおいマジかよと思うし、受付で直接顔をあわせた面々の何人かが、これは前回も前々回も同様の感想を抱いたのだけれど、本当にそこらにふつうにいるおっさんのような風体であるというか、鴨川をとぼとぼ歩いていたり平日の昼日中から動物園で時間を潰していたりしそうなパッと見がパンピーなアレだったりするので、そういうの駄目でしょ、遠目から見てもそれとわかるようにパンチパーマと黒いスーツと金ぴかのアクセサリーにしてくんないとまぎらわしいでしょ、仮におもてで揉めることがあったりして後出しでじつはアレでしたとかそういうのほんとこわいんでやめてくださいと思う。むろんなかにはいかにもといった面構えと身なりの前科100犯かよみたいなやばい人相のひともいる。そしてそういうひとと直接面と向かって金の受け渡しをしたりするのがじぶんの仕事だったりするのだ。OMG!! 毎度のことながら嵐が無事に去ってくれるとほっとする。
そういえばもう二週間か三週間以前のことになるのだけれど、入室してすでに2時間近く経過していた客室から電話があって出ると若い女の声で、あのーさっき警察みたいなの見かけたんですけどそういうの来てたりしますか?といきなりたずねられたことがあった。見かけたってそもそもあんたどこで見かけたんだよと、いちど入室したら会計をすませるまで部屋の外に出ることのできないこの手のホテルのシステム上ありえない疑問の唐突な提示にそれこそありえないわとなったのだけれど、とりあえず、いや別にいませんけれどもと応じて電話を切った。で、これひょっとして慣れないハーブか何かやって思いきりバッドに入ってしまったとかそういうアレじゃないのという気がして、(…)さん(…)さん相手にたぶんそうっすよね、たとえいくらやましいことがあるとしてもシラフだったらまずこんな馬鹿みたいにあやしい足のつきかねない電話よこしたりしませんもんねと話しているまさにその時に当の部屋が会計をすませて、さあいったいどんなツラしてるやつなんだとみんなで食い入るようにモニターをながめていたところ、どっこにでもいるような若くておとなしい大学生カップルみたいなふたりで、いやーこのふたりが援交?クスリ?あるいは駆け落ち?いやいやそりゃないわーみたいな空気になって結局正体不明のままふたりは帰っていった。この町にもいろんな物語があるし、いろんな欲望がうずまいているし、いろんな誤解がいろんな理解と結託していろんな陰謀をつむぎあげている。
土曜日にしてはめずらしくわりとヒマな一日だったので、たまりにたまってごちゃごちゃにあふれかえっていた客室の忘れ物をいっぺん整理しましょうよと(…)さんにもちかけて、ここ三ヶ月以内の忘れ物だけはひきつづき保管しておくという基準を原則としてほこりをかぶったあれやこれやを大量に処分した。貴金属のたぐいはモノがモノなのでいちおう残しておくに決めたのだけれどそれ以外のものだったら欲しいもの適当にもっていけという話だったので、以前から気になっていたパタゴニアのダウンジャケットをいただくことにしたのだけれど少し汚れているし色はださいし何よりサイズがでかいのでじぶん用には使えない、けれど捨てるのもアレだしそんじゃあ古着屋にでも持っていて小銭を稼ぎますと宣言していただくことにして同様にスヌードやマフラーやベルトもいただいたのだけれどこれらはなんのブランドものでもないアレなのでたぶん値段はつかない気がする。あとはジョギング用に黒いニット帽をもらったし、あきらかに偽物であるルイヴィトンの煙草ケースやサマンサタバサのポーチ、それにポールスミスの腕時計(レディース)をいただいた。ぜんぶ売っぱらったら5000円くらいになんないすかねえといってダンボールの中身をごそごぞやっていると、(…)さんがi-phoneをこちらにむけて構えながら、(…)くん客の忘れもので日銭を稼ぐ男っていうタイトルでフェイスブックにアップしていい?とたずねてみせるので、いいっすよ、いっしょに大炎上して死にましょう、と応じた。(…)さん曰く「うちの職場には金がないやつと腹をすかせとるやつしかおらん」。惜しい。厳密にいえば、金がないやつと腹をすかせているやつと金がなくて腹もすかせているやつの三パターンだ。忘れ物の山のなかにひとつ黒いフェイクレザーのショルダーバッグがあるのだけれどそれは忘れ物ではなくて厳密にいえば人質みたいなもので、(…)さんが勤務しているときにあったことらしいのだけれどいま手持ちの金がないので宿泊料金を支払うことができない、家に帰ったら金はあるのだけれどじぶんは九州の人間である、だから家にもどったあとに郵送で料金を支払わせていただきたいのだけれどどうか、もちろんこのままふつうに帰してもらうわけにいかないことはわかっている、ゆえに身代わりとしてこの鞄を置いていくことにする、家にもどってから現金をそちらに送るのでそれと引き換えに着払いで荷物を送っていただければどうかと思う、みたいなアレであずかることになった鞄、その鞄がもうかれこれ数ヶ月置きっぱなしになっていて要するにまんまと踏み倒されたわけなのだけれど、その鞄の中を見たことがあるかと(…)さんがこちらに問うのでいやないですけどと応じると、おもろいもん入っとるでというものだからシャブでも入ってんですかといいながら請求書のたぐいがやたらとつめこまれている鞄のなかをあさってみると、出るわ出るわ××の山で、空になっているものもあれば中身のまだずいぶん残っているものもあったけれどいずれにしてもこんなものの入った鞄をよく他人にあずけられるなという話で、そのあたりひょっとしてなにかしら見通しのかなわぬ物語がうずまいているのかもしれないけれどもとにかく(…)さん曰く中身はおそらく××××で、まあめんどうくさいことになるとアレなんで(…)さんには内緒にしておきましょうかと話し合って奥のほうにそっと封印しておく運びとなった。
給料日の翌日にドーピングベアと化してパチンコに出かけ全財産をすった(…)さんがわざわざ休日に職場にまでやってきて(…)さんに給料の前借りをたのんだという話を聞いた。前借りはできない、けれどどうしても金がないんだったら個人的に1万円までだったら貸してもいい、と(…)さんは応じたらしい。(…)のハゲにも1万円貸しとるしおれ今月ほんま金ないわ、と(…)さんは嘆いていた。ろくでなしどもの集まる職場のおかしらになるのも大変だなと心底同情した。
帰宅してからがっつり筋トレし、簡単な食事をとってからシャワーを浴び、ストレッチをしてから「A」の原稿データをBCCKSに送信して寝た。
 
 
1日(日)
12月だぜ!
6時起床。このところ緩和されつつあったはずの腰痛が突然ぶりかえして地獄絵図の死亡遊戯。とにかく痛いし重いしだるいし、ときおりひやっとする。BCCKSのプレビューをチェックしてみると裏表紙の配色がおかしなことになっていたのでそこだけ修正してふたたびデータ送信。念のために早起きしておいて良かった。8時より12時間の奴隷労働。(…)さんは(…)さんの結婚式に出席するために欠勤。(…)さんはじぶんの父親がヤクザであることを資産家らしい嫁さんのお家にはひとことも告げていない。店の有線がクリスマスソングになった。元プロサッカー選手が面接にやってきたという話を聞いた。これで職場に元プロ野球選手と元プロサッカー選手がそろうことになる。きのうが土曜日のわりにヒマだった反動からか、鬼のようにいそがしい一日だった。腰痛の悪化にくわえてほぼ立ちっぱなし動きっぱなしの12時間だったため仕事を終えて帰宅し先に部屋に着いていた(…)と合流してくら寿司まで歩いていくのがちょっとしんどかった。自転車やバイク使うべき距離でもおれらたいてい歩いて出かけるよなとTがいうので、徒歩はおしゃべりに最適な移動手段やからなと応じた。くら寿司ではやっすいわさびだけが文字通り鼻につくまぐら丼をかっ喰らってこれで600円かよと後悔した。でかい声でしゃべる客のほうに耳をそばだてると案の定西洋人だった。アメリカ人をほかの英語圏の人間と区別する基準として声がでかいか否かで判断していいかと冗談で(…)にいったことがあるのだけれど、十中八九それでまちがいないという返事があったのを思い出した。たしか清水寺のあの土産物屋がたちならぶ坂道をならんで歩いているときだ。飯を喰らってから例のごとく(…)にでかけて中身のこれっぽっちもないクソみたいな対話を夜遅くまで延々と続けたのち薬物市場で甘いものだけ購入して帰宅した。軽く酩酊して寝た。