20131225

 君は大麻事件で保釈になった後すぐに、突然、こんな電話をよこしたことがあった。
「俺、フーコーのことがわかったぞ。拘置所のなかで読んでたんだ」、
と君が言った。
フーコーって、ミシェル・フーコーのこと?」、
と僕が言う。
「そうだ。フーコーってのは心底から異常者たちが好きなんや、全身全霊で異常者たちを愛してる、自分の先駆者として」
「異常者ね、たしかに…」
「そう、そうなんだ、やっとわかったぞ、それがどれほどのことか」
「……」
 君が話を続けた、
「ところで、俺はマリファナで捕まったけど、若い頃ブッシュはコカインで捕まったことがあったの知ってるか?」
「ああ、覚醒剤だろ?」
「どっちにしろ、あいつはアッパー系のアホなんや」
「カーッと頭にきて、頭のてっぺんまで血がのぼった人殺しの白痴に世界中が引きずり回されているんだよ」
「それが国際政治の実情でした、とは情けないねぇ」
「頭の悪いラリパーは始末が悪い」
「犯罪や!」、
と君が大きな声で言い放った。
(鈴木創士『中島らも烈伝』)



めざましをセットしておいたのは10時半だったのだがその15分ほど前に職場の(…)さんから電話があった。年末年始の二日間会社持ちで支給される弁当をそろそろ予約しておかなければならないのだが何を注文しておけばいいかという問い合わせだった。こちらにはむろんメニューなどあるはずもないのでとりあえずいちばん高いものにしておいてくれとお願いした。阻害された睡眠の元をとらなければならないという例の論理が働いた結果、めざましが鳴るたびにもう少しもう少しと時計のかしらを叩きつづけて、結果、11時過ぎまでだらだらと布団のなかで丸まっていた。
パンの耳とコーヒーの朝食をとったのち13時より「A」の推敲にとりかかった。15時半に中断して懸垂と腹筋をした。それから買い物にでかけた。じぶんを鼓舞するためにひさしぶりにヒップホップを聴いた。2Pac。スーパーではふだん買うことのないハムのかたまりを購入した。いつもより早い夕飯になることは疑いなかったので、きっと必要になるだろう夜食のラーメンにのせて食べるのにこれほどうってつけのものもないだろうと思ったのだ。
帰宅してからすぐに夕食の支度にとりかかった。玄米と納豆と冷や奴ともずくと胸肉をレタスとわけぎとねぎといっしょに酒と塩こしょうとこんぶだしで蒸し煮をしたしょうもないディナーをかっ喰らいながらウェブを巡回した。それから仮眠をとるべく床に着いた。18時半だった。19時にめざましをセットしたが、なかなか起きることができなかった。19時半にようやく体を起こすことに成功したものの、体中がだるく、このあとまた推敲かと思うと暗澹たる気分になった。日中の作業もたった2時間半でギブアップしてしまったことであるし、これはまずまちがいなく気分転換の必要がある、神経がどうにも参りつつあるにちがいないと、そう思いはするものの、かといってそれじゃあ読書でもしますか、映画でも観ますか、ゲームでもしますか、だらだらネットでもしますか、それともどこか外に出かけてだれかと会いますかと、そのような割り切った時間の使い方をできるほど器用でもない。したがってここでひとつがっつり睡眠をとろうと思った。とにかく脳みそを洗濯するにかぎる。ゆえにめざましを0時にセットした。次にめざめたときは25日の延長なのだろうか、それとも26日のはじまりなのだろうかと、ぼんやり考えながら眠った。