20230407

(…)分離とは、〈他者〉の欲望からの分離、〈他者〉の欲望の最終的なシニフィアンになろうとする不幸な試みからの分離である(「最終的な」というのは、そのような欲望を完全に満足させ、治療を終わらせるという意味である)。
(ブルース・フィンク/上尾真道、小倉拓也、渋谷亮・訳『「エクリ」を読む 文字に添って』 p.174)



 10時半ごろに自然と目が覚めた。歯磨きと洗顔プリペイドカードにチャージする必要があったのでケッタに乗って第三食堂へ。ついでに海老のハンバーガーと牛肉のハンバーガーを打包。声のでかい店員のおっちゃんに顔を完全におぼえられた。
 帰宅して食す。コーヒーを飲みながら、きのうづけの記事の続きを書いて投稿。時間になったところで寮を出る。第五食堂の売店でミネラルウォーターを買ったのち、ケッタに乗って外国語学院へ。14時半から一年生の日語会話(二)。(…)くんがマスクをつけているのでどうしたのかとたずねると、「流感」だという返事。いや、だったら授業なんて来るなよという話であるのだが、病院でそういう診察がくだったわけではない、ただ熱があり、体の節々が痛く、そしてやはり少し「めまい」がするという症状から、おそらくインフルエンザだろうと見当をつけているようす。日本であれば、インフルエンザだった場合、学校も会社も一週間ほど休むものだよという。時期的に二度目のコロナの可能性もあるんではないかと思うのだが。休憩時間中にはいつものように教壇にやってきて、スマホであれこれ動画なり画像なりを見せようとするのだが、いまこのタイミングでインフルエンザをもらうことになれば、週末が完全につぶれてしまうわけで、マジでちょっと勘弁してくれという感じ。授業は第15課。前半の反復基礎練習も冗談たっぷりでやれたし、後半のアクティビティもけっこう盛りあがった。授業後、(…)くんからスピーチコンテストの予選には制限時間があるのかとたずねられたので、なにも知らない、そのあたりを仕切っているのは(…)先生のはずなので彼にきいてほしいとお願いしたところ、一年生はまだ(…)先生の授業がないとのこと。あれ? そうだっけ?
 帰宅。ひととき休憩したのち、第五食堂へ。寮の敷地内で(…)と長身の外国人を見かける。インド人っぽい外見。どこの国の人間であり、なんの科目を担当しているのかはわからんが、たぶん外教だろう。打包して帰宅。食うものを食ってベッドで30分ほど仮眠をとる。二年生の(…)さんから「食レポ」は五分以内におさめなければならないのかという質問が届いたので、三分以上であれば問題なしと返信。
 ウェブ各所を巡回し、2022年4月7日づけの記事を読み返す。2013年4月7日づけの記事も読み返し、「×××たちが塩の柱になるとき」に再掲。一時期よく口にしていた「感染」の比喩が「ウイルス」とセットで書き残されているが、コロナ以後、この比喩もチープなもんになってしまったなと思う。賞味期限が切れたといってもいい。

5時半より「偶景」作文。帰省中のできごとをいくつか書きつけたのだが、その流れで家庭が完全に腐りきっていたころの記憶というか、具体的なエピソードというよりもむしろその当時の印象や感情の残滓のようなものに急激に火がついてしまい、燃えさかり、やり場のない激しい憎悪に駆られて心臓がバクバクなって、頭がおかしくなりかけた。四つん這いになって吠えた。こんな感情のもっとなまなましいのを毎日毎時毎分毎秒ものごころついたときから実家を出るまでの18年間ひたすら募らせ続けてきて、それでどうやってまともな人間になれる。その対象が何であれわかったふりしてしたり顔で語ってみせるような他人が全員ゴミクズに思えてくるというきわめて奇妙なそれでいて比類のないほど強烈な攻撃性が腹の底でどんどんふくらむのを感じ、このまま出勤したらぜったいにまずいことになると思ったので欠勤の連絡を入れようかとさえ思ったが、無理やり体を動かしてコーヒーを入れてKathy McCartyのLiving Lifeを音量最大でヘッドフォンで聴きながら旅先の美しい思い出だけをひとつずつ数えあげていったら少し落ち着いた。人間は結局物語から逃れられないのだと思った。小説とは反物語として物語と対等な権利をもって対置されるべきなにものかではなく、物語の組成を、機能を、仕組みを、あるいは混乱させ、あるいは失調させ、あるいは解体する一種のウイルスのようなものらしい。ウイルスと感染。キーワードは出そろった。

 浴室でシャワーを浴びる。ストレッチをし、コーヒーをいれ、「実弾(仮)」第四稿執筆。21時過ぎから0時過ぎまで。プラス14枚で計408/994枚。かなり注意力散漫な作業になってしまった。シャワーを浴びているあいだに、あたまを切り替えておくべきだった、その時点からあれこれ考えをめぐらせておくべきだった、いつものように気持ちを作っておくべきだったのにそれをおこたった——あるいはそれに失敗した——、そのせいで最初の一時間くらいはほとんど使いものにならなかった。てこずるような場面でもないのに無駄に時間を費やしてしまっている。今日の仕事は失敗の巻や!

 今日づけの記事もここまで書くと0時半。日記を短縮するのがだんだんと上手くなってきたと思う。いい感じ。プロテインを飲み、トースト二枚を食し、歯磨きしながらジャンプ+の更新をチェック。その後、「キャッチコピー」の課題だけざっと添削してベッドに移動。今日もVPNがなかなか安定してくれない。