20130317

 ついで、問題としての権力に関しては、思考することは特異性を放ち、サイコロを投げることである。賽の一擲が表現することは、思考がいつでも外からやってくるということにほかならない(すでに、間隙のなかに流れこみ、あるいは共通の限界を構成するあの外である)。思考することは、先天的でもなければ、後天的でもない。それは、一つの能力の先天的な行使ではないが、外部世界で構成される学習(learning)でもないのだ。先天的なものと後天的なものに、アルトーは「生殖的なもの」(la genital)、このようなものとしての思考の生殖性を対立させたのである。どんな外部世界よりも遠くにあり、それゆえどんな内部世界よりも近くにある一つの外からやってくる思考を。この外を〈偶然〉と呼ぶべきだろうか。そして、実際、賽の一擲は、力の関係、あるいはもっとも単純な権力関係を表現している。つまり偶然に抽出される特異性(面の上の数)のあいだに確立されるような関係を表現しているのだ。フーコーが理解する力の関係は、単に、人間に関するだけでなく、様々な要素、偶然に取り出されたアルファベット文字、あるいは一つの言語にしたがって、相互の牽引、集中の頻度によって配列されたアルファベット文字などにも関連する。偶然は、第一の試行にとってしか有効でない。おそらく、第二の試行は、マルコフの連鎖における、部分的再結合の継続のように、第一の試行によって部分的に限定された条件のもとで行なわれる。そして、外とはまさにこれにほかならない。外とは、不確かさと依存関係との混合において、偶然の抽出をたえず再結合する線である。だから、思考することはここで新しい相貌をおびる。特異性を抽出すること、抽出を再結合すること。そして、ある特異性の近傍から、別の特異性の近傍へと移動する系列をいつも作り出すこと。あらゆる種類の特異性が存在し、いつもそれは外からやってくる。力の関係のなかに導かれた権力の特異性、突然変異を準備する抵抗の特異性、そして関係のなかに入ることも統合されることもなく、外に宙吊りになったままの「野生の」特異性さえ存在する……(このときだけ「野生」は意味をもつのだ。一つの経験としてではなく、まだ経験のなかに入ってこないものとして)。
ジル・ドゥルーズ宇野邦一・訳『フーコー』)



6時20分起床。身支度だけ整えて烏丸今出川のバス停にまで直行。徒歩だと微妙に時間がかかる。この一本を逃しては遅刻だという焦りから早歩きしたところ左足首に違和感。この違和感は結局終日続くことになる。職場近くまではバスで20数分。最寄りのコンビニで朝食だけ購入して職場に到着。いつもより十分近くはやい。従業員用の出入り口には鍵がかかっていた。がちゃがちゃやっているとあわてたようすの(…)さんが出てきて、はやいっすねーと言った。いつもよりやや早めに訪れた以前も似たようなことがあった。深夜から朝方にかけてひとりきりになる立場ゆえの用心か、それとも知られたくない内職を目撃されることへの防波堤か。8時から12時間にわたる奴隷労働。そこそこの忙しさ。二日連続3時間睡眠でも頭は十分にまわる。ときどき強烈な睡魔に見舞われもするが、うつらうつらすればすぐに回復する。祇園にある(…)さんのお店が使えなくなったので夜は(…)さんの自宅に集合というかたちになったとの報告。
仕事を終えてからバスに乗り(…)さん宅最寄りのバス停へ。自転車に乗った(…)さんが迎えに来てくれたのでケツに乗せてもらってそのままライフで肴を購入。(…)さん宅をおとずれるとすでに半ば出来上がっていた(…)さんと素面の(…)さんの御出迎え。すごい面子。『アウトレイジ』のコピーを借りるなら「全員悪人」。今夜はいちおうじぶんと(…)さんの勝負という名目になっていたのだが、じぶんのほうはたぶん十分ももたずに壊れた。(…)さんはぜんぜん平気なふうだったが、途中からガツンときたらしく、最終的にはトイレにひとりこもって吐き通していた。ゆえに勝負自体はじぶんの勝ちということになった。そのつもりのなかった(…)さんまでぶっ壊れたのにはおおいに笑った。おれのテレビえらいでかないか!?まだ22時半!まだ22時半!と叫んでいたのが面白かった。(…)さんは客人をすべて放ったらかしにしておいてひとりはやばやと階上にある寝室に立ち去っていった。ふと気づけば部屋にはじぶんと(…)さんしかいなかった。(…)さんはだいじょうぶ、死んでないと(…)さんがいうので、ひと安心した。眠そうだしもう寝ればといわれたので、(…)さんはどうするんですかと問うと、おれはもう少ししたら帰るとあって、そうですかといいながらごろりとソファに横たわったところ足下になにかコツンと当たるものがあって、見るとプレステの本体だったのだけれどこんなものだれがいつ用意したんだったか。
はっと目が覚めるといつのまにかテーブルをはさんだ先のソファーで(…)さんが眠っていて、(…)さんの姿はなく、どうも一時間ほど眠ってしまっていたらしいと時計をながめるとすでに5時過ぎで、一時間どころの話じゃない。身支度を整えてから(…)さん宅を出て、くじいたような左足をひょっこりひょっこり引きずりながらアパートまでの道のりを30分ほどかけて歩いた。めがねが曇るし邪魔くさいというアレからマスクを外していたのだが、おかげで帰宅してから鼻水の洪水のち無慈悲な鼻づまりという劣勢に立たされるはめになった。帰路の途中喫茶店の前で誰かを見送っていたらしい(…)さんと出くわして、こんな時間まで店を開けていたのかとびっくりした。この時間にいつも仕事から帰ってくるのといわれたので、いやあちょっと同僚のところで飲んでてと応じるじぶんの口ぶりがすでにあやしい。ろれつがまわっていない。あーこれはあとでひょっとするといじられることになるかもしんないなーなんちゅうタイミングの悪いこっちゃなどと思いながら歩きつづけ、近所のデイリーヤマザキでめずらしくカップ麺など購入した。
帰宅してからカップ麺を食っていると朝の6時過ぎにもかかわらず大家さんが表の戸をガンガンやりだして、これマジで寝ているときだったら殺意を覚えるレベルだぞと思いながら出るとお餅をどうぞという話で、朝方の訪問は本当にやめてほしいとよほど言おうかと思ったが、こらえた。餅を食い、すでに焼きはじめていたパンの耳も食い、このまま起きて一日を過ごそうというつもりだったのだけれど急激な眠気にさらされたものだからいやおうなしに布団にもぐりこんだ。7時をまわっていた。(…)から二通メールが届いていて一通目はメンタルなヘラーが内容、二通目はスカイプを求めるメールだった。あす応じようと思った。